第2話 ゼロ距離

(喧騒とする教室)


 あれ?絶望した顔で私を見ている。

 何かあったのかな。


「どうしたの?困っているね?」


「教科書忘れたのかー。ははぁ〜ん、なるほどなるほど」


「良いよ、見せてあげる」


 よし、近づくチャンス到来!

 これを活かす意味でこうしよう!


(ゴトンと机同士がくっつく音)


 机同士をくっつけるなんて、小学校以来だな。


「ドキドキしないでよ?」


 とは言ったけど、私の方がドキッとしたりして。


(予鈴が鳴る)


(小声で)「見える?」


「見えづらかったら言ってね」


 なんか震えてない?気のせいかな。

 当てられた、ぎこちなく慌ててる。

 分かんないのか教えなきゃ。


(慌ててガタガタと椅子から立つ音)


 慌てるのを見て笑いたくなってきた。

 ロボットみたいなガチガチの動きが可笑しくて可笑しくて。


(彼女、笑いを堪える)「ふふっ…ふっ…こ、ここだよ」


 堪えて私!

 でも、でもでもー…。


「ふぅ…ふぅ…はぁ…うん」


 頑張れあとちょっとで笑いが止まりそう。

 軽く息を吸って、吐いて…落ち着いたー。

 危ない危ない、先生に怒られちゃう。


(椅子に座る音)


「…ねぇねぇ」


(微かに聞こえる息を吸う音)


「よくできました」


(ガタンと机に足をぶつけて大きな音が響く)


 褒めたら嬉しいと思ったのに、逆にビビられた。

 それでまた笑いが込み上げてきたから、落ち着くまで大変だった。

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