第2話初対面
浅井は、神田大八の将棋の全ての棋譜を暗記した。
そして、AIを駆使して自分との対局の可能性となる将棋の棋譜を読んだ。
恐らく、神田は振り飛車だろう。
否、必ず振り飛車の戦法を取るだろう。読み切った。
だが、居飛車の場合があるがその棋譜から、神田の指し手を知っている。
だから、どんな手を使おうが勝ちを確信した。
一つ問題が。
それ以外の戦法を取られると、対策がまだ取れない。
神田将棋は、今までの棋士と次元が違う。
振り飛車か居飛車なら、もう頭の中に勝ちの方程式が解けているのだが。
秋の昼間、神社に向かった。
神様は信じないが、気分転換にと散歩に出かけた。
子供達が神社の境内で遊んでいた。
境内を斜めに歩き、歩いていた。
「浅井陽太君」
声を掛けられたので振り向いた。
そこにツエを突いた老人が立っていた。
「神田15世大名人!」
「君を待っていたよ」
「何故、あなたは私がこの神社に来る事を知っているのですか?」
神田は長い伸びたヒゲを触りながら、
「君の将棋を私は知っている。将棋に行き詰まりを感じたら外出したいものだ、ま、ベンチャに座りなさい」
「はい」
浅井と神田は並んでベンチに座った。
「浅井君。君の将棋は素晴らしい。負け無しか。記憶力の大天才と呼ばれているのも分かる。その為の努力をしていることも知っている。だが、記憶力と言うものは年々衰えてくる。当てにならん。もっと、人間を読みたまえ。君の手は将棋指しのでは無い!」
神田は遠くを見つめている。
浅井は言われて手のひらを見た。
「これは、今の将棋指しの手です」
「恐らく、先手は私になるだろう。私は、腰掛け銀だ。もう、勝負は始まっている。私はこれから、買い物をする。自分のモノではない。浅井君、私を読みたまえ」
「ここで、失礼します」
神田大八は、陶器屋に行き湯呑みを買っていた。
それを、浅井は見たいた。
「湯呑みを買ってどうするんだ?」
帰宅した浅井は神田の過去の将棋で腰掛け銀の戦法を取った将棋を検索したが、採用将棋は無かった。
浅井は必ず、神田を倒さなければいけない。
ふと、瞑想した。
神田の実像から、将棋を読んでみた。
見えた!
神田大八の腰掛け銀戦法の対策が読めたのだ。
「さぁ〜、ジジイ掛かってこい!お前の220連勝を219連勝でストップさせてやる!」
とうとう、季節は秋。
旅館で対局となった。
多くのメディアがこの一戦を待ち望んでいた。
マスコミが旅館に殺到した。
いよいよ、今世紀最高の天才同士の一戦。
和服に正装した、浅井と神田が現れた。
2人は一言も喋らない。
着座した。
係員は振り駒をした。
「歩が3枚なので、神田先生の先手です」
浅井は驚いた。そして、神田の顔を見た。
神田は素敵な笑みを浮かべていた。
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