23 道具屋
”BOO”を辞めようかと考えていたけど、やっぱり続けることにした。
考えが変わった切っ掛けが受付の子に頼りにされたからなんて、我ながら単純だと思う。
ただ私の思考を察して言ったんじゃなくて、ホントウに偶然だったから心に響いたというか。
あの子の都合で言ったからこそ役に立った感じがしたというか。
きっとお世辞や気遣いからの言葉だと、こんなにも嬉しくなかったんだろうなと思う。
気分が上昇したことだし、道具屋に向かうことにする。
採取中に考えていた新しい採取道具やメモ用に使えそうな物を探すためだ。
というわけでマップから『道具屋 モノーン道具店』を探して向かう。
店の前にはいくつかの鉢植えに花が咲いていて、出している看板にも花の飾りが付いていた。
すごくかわいい。
それに花を育てるのが好きな店員さんがいるのかな。ということは”BOO”で花を育てられるかも。
そう期待しながら扉を開けた私を出迎えたのは、やる気の無さそうな男の人の声だった。
「いらっしゃーい。」
特に会話が続くわけでも無く、私はそのまま店内を見て回ることにした。
散乱している訳ではないけれども、雑多な雰囲気のする店内。
私のイメージしていた冒険の道具以外にも沢山あって驚いた。
空の瓶や布、鍋なんかもある。
日用品や雑貨もあって、道具屋というか雑貨店みたいだ。
というか鍋があるなら、もしかして……。
……やった!あった。
私が探している物。
園芸ができそうなものがあったのだ。
店の少し奥に行ったところに、直径10cmくらいの小さな鉢植えが置かれていた。
これでやりたかった園芸ができる。
その周囲を確認すると、園芸や採取に関係するのものが纏められていた。
私のもう1つの探し物、採取用のハサミもある。
これって一体いくらなんだろう?値札とか付いているのかな?
そう思ってハサミを持ち上げるといきなりウィンドウが出てきてビックリした。
疑問に思っていた値段が書かれてる。
でも、いきなり出てくるのは心臓に悪いからやめてほしい。
気を取り直して、えっと……《安価な採取鋏》2000シェル。
今の所持金を確認すると1322シェル。
うーん、足りないなぁ。
ポーションより随分高いけど、消耗品と道具の違いなのかな。
こっちはいくらだろう?
《特小の鉢植え》700シェル。
良かった。こっちは買えるね。
園芸……というか栽培全般なんだけど、育てるのには時間が掛かるだろう。
それにどのくらいで売れるのかも分からない。
だから効率で考えると先に《採取鋏》を買って採取依頼を達成したら、専門の道具には及ばないと説明があった《サバイバルナイフ》より品質が高くなって、報酬も増えるだろう。
でもなぁ……《鉢植え》は今買えるんだよね。
……欲しい。
いや、我慢、我慢。
よし、これを買う事をモチベーションにフィールドに出よう。
……実はBOOを続けると思ったものの、やっぱりちょっと怖くて【モノーン】から出る切っ掛けが欲しかったんだよね。
そのまま店を出ようとして思い出した。
そういえば私、メモ帳も探そうと思っていたんだ。
小さめの雑貨が並んでいる棚を探すと《粗末なパピルス紙の束》と《粗末な羽ペン》を見つけた。どちらも100シェルだ。
《パピルス紙の束》は文庫本程度のサイズの紙が5枚セットになっていた。
《羽ペン》は近くにインクが無いけれど、ゲームだしこれだけで書けるのかな?
「あの……これだけでメモできますか?」
「できるよー。魔力を込めたスクロールとか作りたかったら専用のインクがいるけど。」
買うついでにカウンターに持って行って聞いてみた。
どうやら合っていたみたい。
それにしても専用のインクがあれば紙に魔力を込められるんだ。
〈スキル〉を持ってなくても魔法が使えるようになるなら凄く便利そうだけれど、私は戦闘しないし使わないだろうな。
「じゃあこの2つで。」
「ん、合わせて200シェルね。」
よしメモ帳ゲット。
品質が高い薬草見ながらメモしよう。
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