14 トランクワル平原

 次は『ウィスパーの森』への質問だ。

 すぐに行く気はないけれど、何度も話すのイヤだし全部聞いてしまおう。

 

 

「”『ウィスパーの森』のモンスターの詳細は?”」

「代表的なのは毒状態にしてくる『リトルビー』と麻痺状態にしてくる『ブラウンドット』だな。『リトルビー』は小さなミツバチで、一匹攻撃すると周囲の『リトルビー』とも戦闘になるから注意しろよ。『リトルビーの巣』を攻撃したらもっと大変なことになる。詳しくは知らんが《リトルハニー》ならうまくいけば敵対せずとも手に入るらしい。『ブラウンドット』は茶色のキノコだ。擬態がうまくて採取しようとしたら間違えて、ということが多いらしい。《茶色のトッドストゥール》という素材が手に入るが毒キノコだから扱いに気をつけろよ。ちなみに毒や麻痺は薬屋にある薬で治せるぞ。」


 さっきと違ってモンスター素材も扱いが微妙そう。

 南門しかないのはNPCもほとんど『ウィスパーの森』に行かないっていうのもあるのだろう。




 「”他の街への行き方について”」

「行き方は普通に徒歩だ。街道があるから迷わないぜ。街道を進んで左に見えるのが王都【ジブル】。そのまま街道を直進して曲がり道を右に行けば農村の【テトラリン】、その曲がり道を左に行って大街道を超えれば職人の街【ペンタルバー】に出るぜ。……とはいえ流石に【ペンタルバー】までは遠いか。どちらにしろ1度【ジブル】に行った方が良いな。王都だけあって色々揃ってる。」


 チュートリアルも【ジブル】に行くものがあったし、名前も【第2の街 ジブル】って書かれてたから、先に王都へ行くことが前提なのかな。



 とりあえず書かれてる質問も全部聞いたし、考えるのは後にしよう。


 【テトラリン】についても今回は聞くのはやめておく。

 1度に聞いても覚える自信がない。

 

 

 

「”聞きたいことはない”」

「おぉそうか。……そうだ!忘れてた!今は色々あって【ジブル】までしか行けないんだった。たしか、流通だの移動制限だのなんだのって。」




 

 そんな大切な事忘れないでよ。と思ったけどよく考えたらコレ、βテスト用の制限だね。

 明らかに会話が足されてる感じする。

 

 

 それにしても広大な世界を謳っていたと思うけど、街を封鎖するだけでいいのだろうか。

 街以外から奥の方に行けそうな気がするんだけど。

 まぁ冒険する気はないから、そう気にしないでもいいか。

 

 会話も終わったので今度こそフィールドに出よう。

 

 


 


 ~【トランクワル平原】~

 

 

 背の低い草花が緑のカーペットのように広がり、所々に木が生えている。

 門からまっすぐに続く、草の生えていない道が見えなくなる程遠くまで続いていた。これが街道だね。

 よく目を凝らすと街道の左先に薄っすらと城壁のようなものが見える。きっと【ジブル】だ。

 

 

 まるでヨーロッパの大草原みたい。こんな風景、写真でしか見たことない。


 

 このゲームが広大な世界を謳うのも納得する。

 広いなっていうのが私の一番最初に出てきた感想だ。


 

 そうだ。フィールドに出たんだから武器を持っておかないと。

 どんな風に武器が出てくるんだろうか。

 ドキドキしながら左手の2本指でチェックを書くと、胸の高さに《初心者用サバイバルナイフ》が出てきた。


 ちょっとキラキラしたエフェクトがついて浮いてる。ファンタジーだ。

 手に持つとエフェクトが無くなって、《初心者用サバイバルナイフ》の重さを感じた。


 もうこれだけで魔法使いになった気分。ちょっと感動。



 

 ふと自分が門の真ん中にずっと立っていることに気づく。


 最初の街のフィールドだけあって、他のプレイヤーさんも相当多い。

 ノンアクティブだから通り抜けられるけど、そうじゃなきゃ相当迷惑な場所に立ってた。

 慌てて横に避けようとするとさっきの門番と目が合った。

 

 そうだった!

 ノンアクティブでもNPCからは普通に見えるんだった!

 

 なんか目だけでニヤニヤしてる。

 NPCだと分かっていても気分悪いなぁ。もう。



 とにかくここから離れよう。

 そう思って私は左側に行くことにした。

 大した理由はないけれども、一番近いプレイヤーさんは右側だったので何となく。




 

 門から左側に木の壁に沿って歩く。


 

 やっぱり皆何となく次の【ジブル】を意識しているのか、それともただ門から近いからなのかな。

 【モノーン】の東側にもちらほらプレイヤーさんはいるけれども、【モノーン】の南側の方が集中していた。


 

 遠目からでも混み具合が分かるのは結構便利かも。

 いくら黒シルエットでも明らかに差があると、つい人が少ない方を選んでしまう。

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