13 フィールド情報②

 南にある門へ向かう。

 

 このゲームはモンスターの脅威に曝されているという設定の世界なので、田舎町みたいな【モノーン】でも周囲を木の壁で囲まれている。

 もしかしたらモンスターの出るフィールドと出ない街を区切るのに丁度良いからという、製作的な理由かもしれない。


 あとよく考えたらここ以外の街を知らないから、後で壁で囲まれていない街もあるかもしれない。

 そうなるとこの話を誰かとしなくて良かった。

 いい加減なこと言って違ったら大分恥ずかしい。



 

 門に着き、フィールドに出ようとすると門番に声を掛けられた。

 

 さっきの薬屋でもそうだけどNPCの方から結構話しかけられるんだよね。

 最初の街だからチュートリアルの一環なのかな。

 

 でも、もっとゆっくり私のペースでやりたいなぁ。

 いつ声を掛けられるか気を張っちゃうんだよね。

 現実でも1人でいる時は結構ボーっとしてるから急に話しかけられるとビックリすることが多い。


 

 

「よう、来訪者。あんたも依頼クエストかい?」

「はい。」


 門番の上に”『門番』ディファン”と書かれたネームが出ている。

 プレイヤー以外にもあるんだね。

 ちなみにプレイヤーの場合はこれとアクティブモードによって色が変わるプレイヤーマーカーが出るらしい。

 とはいえ私はノンアクティブだからお互いにネームもマーカーも見えないんだけれど。


 そういえば受付や薬屋の人もネームが出ていたはず。

 全然気づかなかったけど、黒字で書かれているから室内で目につかなかったのかな。

 ……薬屋のヒトの名前を聞き忘れけど、あのヒトが依頼人の『薬屋』メディで良いんだよね?



「そうか。どんな依頼を受けたんだ?」

「薬草の採取依頼です。《ヒールリーフ》と 《マジックミント》と 《ヘルスハーブ》、あと種類は問わないものです。」

「採取依頼か。討伐依頼は受けていないのか?」

「……ええ、まぁ。」


 何このヒト。

 別に討伐依頼受けなくても私の勝手じゃない?

 


「いやスマン。大体の来訪者は討伐依頼も受けてるもんだから、つい、な。あぁそうだ。初めて街から出るならフィールドについて教えてやろう。」

 

 不満そうな顔になっていたのか、門番は謝ってきた。

 

 門番の言葉が終わると同時に会話アシストのウィンドウが出てきた。

 どうやらこの失礼な門番はフィールドの説明用NPCだったみたい。

 このヒトとの会話を早々に切り上げたい気持ちだけど、さすがに説明は聞いておかないと後で大変になりそう。



 

「”この先のフィールドとは”」

「この先に広がるのは『トランクワル平原』だ。見方によっては『トランクワル平原』の中央に【モノーン】があるとも言えるな。【モノーン】から南東に行けば王都である【ジブル】が、南南西に行けば農村の【テトラリン】に行ける。どちらも街道があるから迷うことはないだろう。ちなみに【ジブル】から先は別のエリアだ。そこはオレもよく知らん。南以外に進むと『ウィスパーの森』がある。その先は岩場で到底進めないな。【モノーン】の門が南側にしかないのもそれが理由だな。」


 農村!いかにも農業ができそうなところだ!

 もしかしたら農業みたいな感じで草花を育てられるかもしれない。

 いや薬草を育てられるなら、現実で言うハーブを育ててるようなものかも。


 

 興味があるがとりあえず会話アシストの質問を済ませておこう。

 

 

「”出現するモンスターの特徴は?”」

「『トランクワル平原』も『ウィスパーの森』もモンスターは穏やか……ってモンスターに言うのはおかしいんだが。こっちから攻撃しないと襲ってこないモンスターばかりだ。モンスターも弱いヤツが多い、落ちついて状況を把握すればモンスターに倒される事はないだろう。しいて言うなら『ウィスパーの森』には毒や麻痺などの状態異常にしてくるヤツが厄介なぐらいだ。」


 なるほど薬屋に置いていたのは『ウィスパーの森』に行くとき必要なものか。

 それもモンスターにこちらから攻撃しないと安全みたいだから、お守り感覚で持っていたら良いって感じみたい。


 

 

「”『トランクワル平原』のモンスターの詳細は?”」

「まぁ大した脅威じゃない。この近くでもよく見るヤツだけでいいか。まずは『グリーンスライム』その名の通り緑のスライムで体当たりをしてくるだけ。《スライムの粘液》や《グリーンジェル》には安定した需要があるから、小遣い稼ぎに良いぞ。次『グラスラビット』はその辺に出てくるウサギだ。臆病で逃げ足が速いから、遠距離攻撃ができないと逃げられるかもな。《グラスラビットの肉》は広場の串焼きがウマいんだよ。人気でよく品切れするから、いつも買い取り受け付けしてるぜ。最後に『ナニカノマユ』だ……こういう名前なんだよ。どの芋虫が繭になったのか、繭が孵ったら何になるのか誰も知らないんだ。動かないし反撃もしないモンスターかどうかも微妙なんだが、一応エライ人がモンスターって言っている。ごく稀に《白い繭糸けんし》っていうのが採れて、品質が高いと超高額で取引されるらしい。オレも見たことはないんだがな。」


 

 なんだかモンスターの情報って言うより、モンスター素材の情報って感じ。

 

 確かにこの説明通りなら『マッチングパーティー』の詳細聞いたとき変な顔されるよ。

 その気になれば一切戦闘にならずに王都まで行けそう。


 

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