03 アバター製作②

「次にこの世界を生きるために、お好きな〈スキル〉を3つ選んでください。ただ、この世界は悪神によってモンスターが蔓延っています。何も対抗する術を持たずに行くには危険でしょう。」


 

 先ほどまで触っていたウィンドウは簡易表示になり、新たなウィンドウが現れる。

 次は〈スキル〉らしい。戦闘はしたくないのだがゼロも良くないみたいだ。


 ウィンドウには『〈共通スキル〉』と書かれていて、その下に選べる〈スキル〉が並んでいた。共通じゃない〈スキル〉もあるのだろうか。


 

 そんなことを考えながら目を通す。


 

 〈心得:長剣〉〈心得:短剣〉〈心得:大剣〉……この辺りは心得だから武器の扱いみたい。

 次にあるのは〈知識:炎〉〈知識:水〉〈知識:風〉……こっちは何だろう?似てるものに〈知識:基礎魔法〉とあるから魔法系かな。

 その次は〈耐性:毒〉〈耐性:麻痺〉〈耐性:睡眠〉……これはそのまま耐性系だね。


 他にもたくさんあるけど『1人でまったり生産プレイ』のイメージがふわっとしてて、何を選べばいいか全然分からない。



 ふと各〈スキル〉の右下に小さく▼マークがあることに気が付いた。

 押してみると〈スキル〉の説明が出てきて安心する。


 

『〈知識:炎〉-炎属性の魔法を使うための基本的な知識▲』


 なるほど、〈知識〉系は魔法系で合っているみたい。

 でも魔法はどんな感じか分からないから、今回は選ばないでおこう。3つしか〈スキル〉を選べないし。


 

 全部見ると時間がかかるので気になったものだけ見てみる。


 

『〈技術:丹念〉-採取・生産した物の品質が僅かに上昇する▲』

『〈技術:魔力制御〉-魔力を繊細に扱える▲』

『〈技術:目利き〉-未所持品の詳細が分かる▲』


 説明があるようで無い。

 いまいちよく分からない。それともゲームに慣れていたらこの短い説明でも分かるのだろうか。


 

 そういえば戦闘系も取らないと。

 何か良さそうなものは無いのかな。

 あれ〈心得:生活〉?〈心得〉系は戦闘関係だと思ていたけど、なんだろう。


 

『〈心得:生活〉-採取道具で攻撃が可能になる▲』


 採取道具で攻撃!?

 え、網とかスコップとかそういうの?すごく気になる。


 

 安定した選択なら選ばないのは分かる。

 でも好奇心が疼く。いったいどういう事だろう。


 ……うーん。

 ……よし、決めた!折角だし挑戦してみよう!


 

 どうせ1人で遊ぶのだし、変な〈スキル〉でも誰にも迷惑を掛けない。

 ちょっと使ってみて無理そうならデータを消してキャラを作り直せばいいか。



『〈心得:生活〉』『〈技術:丹念〉』『〈技術:目利き〉』の3つを選択。




 

「それでは最後に仮初の姿の名前を教えてください。」


 

 先ほどまで触っていたウィンドウが小さくなり、代わりに名前を入力するウィンドウが出てくる。

 アバター名か、そういえば考えていなかった。


 

 私の作ったアバターを見る。

 亜麻色のふわふわとしたロングヘアーが特徴の、青色のたれ目で幼い雰囲気がする可愛い娘だ。


 

 何となく西洋風な名前のほうが似合いそうだなと思う。


 アニー、セラ、ソフィア……悪くはないんだけどピンとこない。

 この娘のイメージから考えてみる。


 

 やっぱり1番強い印象は髪色かな。

 亜麻から考えて、リネン、アサ、あとは読み替えて亜麻アアサからアーサ……。

 この中ならリネンかな。でもリネンって服の素材としてゲームで出てきそう。

 

 あんまり名前と名称は被らないほうがいいな。

 ややこしいし、被ったらちょっとだけ気分がね。


 

 そういえば亜麻色ってモカ色と似ているかも。

 モカなら被らなさそうだし、このアバターの雰囲気にもあってるから良いかも。



 名前はモカで入力。


 ……特に何も言われないから、他のプレイヤーさんと名前被りもしてなさそう。

 まぁβテスト初日だから被るほどのプレイヤーもいないか。


 

「以上で仮初の姿が大まかに完成しました。この器で創ってよろしいでしょうか。」


 

 そう言われてもう一度アバターを見る。

 変更したいところはない。私は女神に頷く。


 

 女神は困ったように笑いながら、質問してくる。


「かしこまりました。ところで来訪者よ、先ほどから一言も話していませんが、誰かとのコミュニケーションは最低限のほうが良いのでしょうか?それともある程度は取りたいでしょうか?あるいは偶然話さなかっただけで、普段はもっといろんな人と話すのでしょうか?」


 唐突にコミュニケーションが苦手であることを突いてきて動揺する。


 しかしよく聞いてみるとこれはアクティブモードをどうするかの質問みたいだ。

 なら私の回答は決まっている。



最低限ノンアクティブで」

「なるほど、それでは他の来訪者とはお互いに認識しにくくしましょう。しかし安心して下さい。すべてが閉ざされるわけではなく、そしてまた後から変える事もできますから。」



 穏やかに微笑みながら女神は続ける。


「それでは、この世界を頼みましたよ。来訪者モカ。」


 最後に凄く重たいセリフを聞きながら、私の視界は暗転していった。

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