02 アバター製作

「よく、来てくれました。来訪者よ。」



 神殿のような神聖な空間。

 ガラスの無い窓の外には宇宙のような景色が広がっている。

 

 目の前にいる女性は女神なのだろう。

 悪神に対抗するために来訪者プレイヤーを招いた神々の1柱。


 

「しかし、ここに来たのは来訪者の魂だけ。まずは貴方の器になる仮初の姿を創らねばなりません。」


 

 そう言って女神は目の前に巨大なクリスタルを出す。

 その中には人間がいる。

 魂だけという発言やクリスタルの中にいる人に驚いたが、クリスタルの周囲にゲームウィンドウが出てきたので、どうやらこれは仮初の姿アバター製作という事だった。

 

 ゲームに慣れている人なら女神の言葉だけでピンとくるのかもしれないが、私は慌ててしまってちょっと恥ずかしい。

 ここにいるのがNPCだけで良かった。



 改めてクリスタルの人を確認すると身長は私と同じだが、顔や体型は全然違った。

 まぁ身長は初期設定で登録したからで、顔や体型は入力するところが無かったし当然か。


 

 VRに慣れていない人は現実と近い身長にすることが良いらしい。

 あまり違いすぎるとまともに動けないそうだ。

 そのため法律でVRデバイスには身長を入力し、現実と比較し逸脱した身長や体型のアバターを作ろうとした場合、警告文を出さないといけない決まりがある。

 反対に慣れている人なら人型でないアバターでも問題ないらしいから人間の脳って不思議だ。


 

 私はもちろん現実と近い感じにする予定。

 自分の運動センスの無さを信じている。



 まず身長。

 ちょっと高めにする。まだ成長期だし、このくらい伸びる予定だから平気。


『――警告――

 体型が現実と激しく差異がある場合、行動に支障が出る場合があります。よろしいでしょうか。

   □閉じる  □以降、この警告を表示しない』



 ……閉じるをタップ。

 プラス15cmはやりすぎ?じゃあ10cmで。


 

 ……うん、10cmなら問題なさそう。

 高身長は憧れるけど、動きにくい方が嫌だし。プラス10cmでも160cmになるし、うん。悲しい。



 気を取り直して次、体型。

 そのまま。

 胸を身長大きくした分こっちも大きくしようかと少し思った。

 でも比率なんて分からないし、失敗しそうな予感がしたからやめた。

 デフォルトの胸も結構あったから、身長伸ばしてもそんなに小さく感じないし問題なさそう。



 次、顔。

 デフォルトはちょっとつり目の女の子だ。

 可愛いけど気がキツそうな印象。


 お母さんも前に同じ言葉でも表情で印象が変わるから、笑顔のほうが良いよって言ってたっけ。

 あと、紗恵はたれ目だから無表情でも笑ってるように見えやすいからオトクだね!とも言ってた。

 

 というわけで目じりを下げる。……確かに印象が柔らかくなった。

 他はそのままでいいかな。

 他のプレイヤーからはノンアクティブで黒シルエットに見えるから、私の好みだけ考えればいいし。



 次、髪の毛。

 せっかくだし現実では出来ない色にしてみたり、でもあんまり突拍子もない色はイヤ。

 

 茶色、普通。白、ちょっと違う。

 金、これもちょっと違う。

 白と金の間くらい。さらにキラキラ輝く髪のトーンを少し落として、しっとり落ち着いた感じにしてみる。

 なかなか好きかも。

 少し柔らかさがある感じ、亜麻色っていうんだっけ。

 髪色に合わせて髪型も柔らかそうなイメージでふわふわのロングにしてみる。


 かわいい、けど、なんだか違和感。



 ああ、そっか。髪は西洋ぽいのに、瞳の色が真っ黒だからチグハグなんだ。

 試しに青へ変えてみると良い感じ。



 さあ、次。種族?えーと、注意文が出てきた。

 何々?……『種族によってアバターが制限される場合があります。』……。


 え?アバターせっかく作ったのに……。


 まぁ、『種族によっては』ってことは制限される方が少ないだろうし、とりあえず進めてみる。



 

『ヒューマン:処々に住む種族。

      他の種族に比べ特出しているステータスはなく、それ故何にでもなれる可能性を秘めている。

 エルフ:森に住む種族。

     魔法の扱いに長けているが、俊敏さには欠ける。

 ドワーフ:鉱山に住む種族。

      強い肉体を有するが、魔法は苦手。

 ハーフリング:崖に住む種族。

        素早く器用だが、脆弱な身体を持つ。

 ニンフ:泉に住む種族。

     享楽的にその日々を生きる。しかしそれで生き延びる幸運を持つ。』



 どれにしようかな。生産系とは決めてるけど、具体的な職業はサイトには書いてなかったからなぁ。


 

 できるなら園芸がしたいな。

 なら体力要りそうだからドワーフ?でもなんだか繊細なイメージもあるから、器用なハーフリング?森に住むってことはエルフも関係ありそうかも?



 うーんゲームの情報がないから、何が必要か分からない。


 それなら得意不得意が書いていない種族の方がいい?

 うん、園芸もできるか分からないし、そっちの方がいいかもしれないね。


 得意不得意が書いてないのはヒューマンとニンフかな。



 ヒューマンはそのまま平均的って書いてあるけど、ニンフはどういう意味だろ。

 享楽的で幸運?

 幸運はゲームに落とし込んだら、何かの確率が他の種族より高くなってるとかイメージできる。

 でも享楽的って性格なのにどうして種族説明に書いてるんだろう。


 

 気になるし、ニンフにしてみようかな。


 せっかくのゲームだから珍しい方選んでみよう。

 それにどの種族選んでも、ちゃんとゲームができるように開発されているものでしょう。



 ニンフを選択すると若干雰囲気が幼くなった気もするような、しないような。


 身構えていた種族でのアバター制限も全然大したことはなかったし、ニンフで決定しよう。

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