04 BLUE OCEAN ONLINE
明転すると私が立っていたのは古びているものの汚くはない、しっかりと管理された教会だった。
周囲を把握する前に目の前にいた人の好さそうな老神父が声をかけてくる。
「ようこそおいでくださいました、来訪者様。私はこの【モノーンの街】にある教会を任されております、神父のレンブランサです。来訪者様のお名前は?」
「モカです。」
「モカ様ですね。来訪者様のこの世界の知識は個人差があると伺っております。まずはこの世界について何か質問はありますか。」
いきなり質問を聞かれても困る。
そう思っていたら視界の中央より少し下に半透明のウィンドウが出てくる。
会話アシストのウィンドウで質問や返答が書いているようだ。
一番下のは”特に聞きたいことは無い”で会話終了用の選択肢だから、上から順でストーリーに沿うようになっているのだろうか。
とりあえず従ってみよう。
「”この世界の現状は?”」
「すでにご存じでしょうがかつて悪神がモンスターを生み出した時、神々は我々に〈スキル〉を賜りモンスターに対抗する術を得ました。しかし近年、神の祝福であるはずの〈スキル〉をモンスターが使うようになりました。神々はこれを悪神が力を取り戻した予兆であると考え、異世界に住むあなた方へ助力を求めることにしたのです。」
先ほどの物々しいあらすじを具体的に要約したみたいな内容だ。
これはこれで情報が少なく感じるが、オンラインゲームだから敢えて危機感を感じているだけで実害がそう無い導入なのはプレイヤーが好きな行動を取りやすいようにしているのかな。
私も戦いをしに来たのではないので、あまりにも窮地な現状で無くてよかった。
プレイヤーに生死を委ねている状況で生産をしてると居心地が悪そう。
「”なぜ我々を招くのか?”」
「本来は我ら定住者が解決しなければならない問題、それは重々承知しております。心苦しいのですが来訪者様をお招きするのにも相応の理由があるのです。まず来訪者様方の現身は神々の力によって作られ、本体というべきはその魂です。そのためモンスターとの戦闘で果ててもそれは終わりではなく、再び肉体を得てこの地で活動できるのです。もっともいくら神の奇跡と言えど代償が無いわけではなく、肉体は僅かですが衰えます。そして全ての所持品を転移にするにはさらに大きな代償が必要なのです。そのため代償を減らすために、一番替えが効くであろう所持金と一部の所持品をその場に残して【復活の儀】を行います。ご了承ください。」
定住者というのはNPCの名称だ。
旅人のNPCがいても定住者というから少しややこしいと思う。
【復活の儀】というのはリスポーンの事だろう。
そしてデスペナルティはレベルの低下と所持しているお金とアイテムを失うみたい。失うお金は一部なのか全部なのか分からないけど、お金預けられるようになったら全額持ち歩かない方がいいみたいだね。
「ああ、そうそう。魂と器の親和性が低い現在は【復活の儀】の代償はありません。肉体と魂の親和性が上昇すると肉体の死に魂が影響されてしまいます。その影響を無くすための代償なのです。そうですね、大体『レベル10』までは代償はないと考えてください。」
今までゲーム用語を話さなかったのにいきなりレベルと言ってきたので驚いた。
でも〈スキル〉の話もしていたし、レベルという概念はこの世界では当たり前にあるという設定なのかな。
それにしてもレベル10まではペナルティはないというのには安心した。
好奇心で戦闘系スキルを〈心得:生活〉にしたから戦闘できるか不安だったんだよね。
これならちょっと無茶な戦い方も試せそう。
「そしてモンスターというのは精神に根を張る悪意の種から生まれるといいます。……それは人間も場合によってはモンスターに成り得るという事。当然殺してしまえばその物は死んでしまいます。しかし、来訪者様は強い神の加護を受けています。来訪者様が倒されたモンスターの魂は神々のもとに送られ、来訪者様より時間はかかりますが神々によって再びこの地へ戻れるのです。」
なるほど、山賊とか盗賊とか人間系のモンスターの説明かな。
あとはNPCが積極的に動かない理由付けも兼ねてそう。
MMOだしプレイヤーが主体になるための理由が無いと軍を動かさず、わざわざ個々人で好きに行動するプレイヤー達に任せるのは変な感じがする。
それに世界観に合わせたプレイヤーを優遇する理由もあった方がいいよね。
考えていた以上に設定が凝ってるゲームだ。
ついついゲームだからのお約束部分も考えちゃう私としては、それらしい理由付けはこの世界が本当にある感じがして好きだな。
「”何をすれば良いのか”」
「最終的には悪神の討伐あるいは封印、ですが神々ですらどこに悪神がいるのかも掴めておりません。そのため悪神の眷属を倒し情報を集める必要があります。しかし神の御業で創られた現身と言えどまだ弱く、不慣れでしょう。まずは尖兵であるモンスターを倒し、その器に慣れると同時に力をつけて頂きたいのです。その身は神々により創られたもの。我ら定住者とは違い『レベル』も〈スキル〉も、武芸もそれ以外も貴方の努力次第で頂きへと昇りつめられる、無限の可能性を秘めているのです。」
あんまり戦闘はしたくないんだけど、これは好きに行動していいよってことなのかな。
あとそれ以外っていうのは生産系のことだろうか。
公式サイトの書き方的には多分そうなんだけど、いまいち自信がない。
そこまで深く考えなくてもいいかな。
多分伝説の剣士になることも、伝説の剣を作ることも可能だってことを言いたいんだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます