第2話

「カンタしっかりしろ‼すぐに病院に連れて行ってやるからな‼」


 どうやら3人組の1人はカンタという名前らしい。呼びかけている青年の目からは涙が溢れている。

 しかしこんな状況でも助けてもらったことには変わりない。私はお礼を伝えるために彼らのそばに歩み寄った。


「すまない。助けてもらいありがとう。私が普段通り冷静だったならカンタという者も怪我を負わずに済んだものを…」


 そこまで言って私はふと思い出した。首飾りの中にポーションが入っていたのを思い出した。私はポーションを取り出すと蓋を開け彼に渡す。

 カンタを除く二人はあからさまに驚いていたようで私に話しかけてくる。


「助けられてよかったよ。それよりそれは?何もないところから取り出したようだけど」


「これはポーションだ。早くしないと手遅れになるぞ。説明はあとからする」


 青年のほうが恐る恐るポーションを手に取りカンタに飲ませる。暫くすると時間を巻き戻すかのように足が戻っていった。

 それをみて私は安堵のため息をつく。3人は信じられないようで驚いた表情をしてこちらを見ているが私は「助けてもらったお礼だ」といった。

 少女はというと何やら浮遊する物体を操作していた。暫くすると私の視界に【配信中】の文字が。それ以外にも何かの文章がものすごい速度で流れていく。


「さて、自己紹介がまだでしたね。私はリリー、このパーティーの一員です。あなたを助けられてよかった。そしていまだに泣いているかっこ悪い男がパーティー名、ファイアウォールのリーダー、ユウキです。で、貴方に謎の液体で助けてもらったのがザッツです。私たち3人はダンジョン配信者として活動をしてます」


 私にはわからない単語があったが自己紹介されたので私も自己紹介をする。


「改めて助けてもらい感謝する。私はテンペスト王国第二王子、アルセルト・スカイ・テンペストだ。詳細は省くがなぜここにいるのかはわからない。私は確かにデックボウ兄上に暗殺されたはずだ」


 その瞬間またしても背後にすさまじい殺気を感じ私は魔法を唱えようと口を開く。


火の壁ファイアーウォール


 本当はもっと高火力の魔法を使いたかったのだが広さが足りなかった。その分魔法を唱え終わったと同時に宝剣を取り出し魔力斬を放つ。途中で魔力斬が分裂し無数にも思える数が敵に直撃していった。

 どうやら敵は私を襲ってきたのと同じ種類だったらしい。崩れ去る前に一瞬だが姿を確認できた。

 私は宝剣を腰につけ羽織っていたコートを脱ぐ。胸に王国の紋章であるドラゴンがあしらわれておりそれだけで存在感が際立つ。

 流れている文章もさらに早くなり文字が見えなくなる。


「テンペスト王国?暗殺?聞いたことありませんね。もしかして別の世界から来られたのでしょうか。そうだとすると先ほどの光景にも納得しますが…それに、その服装も我々とは違いますし…」


 リリーがそう言うが私にとっては3人の服装も興味深い。後で色々聞いてみるとするか…


「リリー、とりあえず配信始まったばっかだけど戻ろうぜ?その…アルセ…王子様にも聞きたいことがあるし…コメントも盛り上がってんぜ?それに…ギルドにも報告しなきゃならんし。まだ2階層だぞ?イレギュラー過ぎないか?オークが2体もいるなんて」


「確かにそうね…配信はつけっぱなしにして戻りま…」


「ちょっと待ってくれ…確かユウキだったか…」


 私は異常な危機感を感じた。ユウキが言っていたイレギュラー…おそらく予想外とかそういう意味なのだろう。


「この魔力は…まさかデックボウ兄上?いや、似てはいるが違うな。もっと悪意に満ちている…そんな魔力がこの辺り一帯に…広がって…」


 そんな事を言う私を不思議な顔で見つめている3人。おそらくだが魔力を感知できないのだろう。ユウキが少し顔を引き攣らせながら聞いてきた。


「確かに俺はユウキだが…見た感じヤバそうだがさっきのオークよりヤバいのか?」


「っ!!この魔力はやばい!!こっから下はもはや魔境だ!!『召喚』サリエリー!!」


 私は咄嗟に脱出するため馬を呼び出した。しかし普通の馬ではない。私が10歳の時に婚約者の父親から貰ったシャイニングホースだ。

 大きさを自在に変化させることができとても賢く人懐っこい。


「3人とも早く乗れ!!早くしないと取り返しのつかない事になるぞ!!」


 私がそう叫ぶと3人は慌てたよぅさで乗ろうとする。しかし小柄なリリーはなかなか乗れず私が手を掴んで1番前に座らせた。


「出口まで道案内を頼む!!サリエリー!!行け!!」

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