異世界で暗殺された王子様、転移してパニックになっているところを有名配信者に助けられダンジョン配信者として生きていく

時雨古鷹

第1話

「デックボウ、アルセルト、儂はもう国王の位を退きあとのことはお主ら2人に任せたい。デックボウは国王に、アルセルトはそれを支えてやってくれまいか。まぁ退位するにしても一月後だが」


 私の名前はアルセルト。テンペスト王国の第二王子だ。兄にデックボウ兄上をもつ。私たち兄弟は幼い頃から比較されてきた。デックボウ兄上は昔から頭は切れるのだが粗暴で残念王子と言われてきたのに対し、私は頭もよく武にも優れており神童と言われてきた。

 今日は私の16の誕生日だ。国王である父は私のお祝いパーティーの前に2人そろって呼び出され位を譲るという話を聞かされた。続きの話は明日、詳しく話すと言い父上は部屋を後にし兄弟2人が残された。


「兄上様、私たちはこの国を治めていくことができるのでしょうか?」


「俺様が国王になるんだぜ?あんな年老いたクソジジイよりいいにきまってるじゃねえか」


 デックボウ兄上の言葉を聞いた私は内心飽きれていたが表面上は取り繕って同意しながら部屋を後にした。


「兄上様も困ったものだ。頭はいいんだがどうしたものか。私が全力で支えるしかないようだな」


 一時間後、お祝いパーティーが始まった。まず最初に父が挨拶を行う。

 王家の人間のお祝いパーティーということでパレードに近い状態だ。正門には王族の姿を一目見ようと大勢の人が押しかけいる。最前列にこの国の貴族が並びその後ろに一般市民が並んでいる。そして作られたステージ上で挨拶を行うのだ。

 そうしている間にも父の挨拶が終わり私の出番になった。一般的には台本があるのだが私はその場で考えて話す。

 全体を見渡しながら話を考えた私は口を開いた。


「テンペスト王国の諸君、今日は私の為にわざわざ集まってくれてありがとう。今日は私の16の誕生日だ。思い返せばもう16年も生きてきたのかと感慨深くなってしまうのは年老いた証拠か。私は幼き頃から街にでて国民と触れ合ってきた。賑わっている食堂、私に気軽に話しかけてくれる人たち、また危険を冒して貴重なモンスターの素材を獲ってきて来てくれる冒険者たち。色々な人たちを見てきたからこそ私はこの人たちを、国民を困らせないようにしたい。しかしながら私に王位継承権はない、しかしないからこそできることをやっていきたいと思っている。今日は心行くまで楽しんでいってくれ」


 私の挨拶が終わると乾杯が行われる。私はグラスを持ち飲み物が注がれるのを待つ間誰かの視線を感じた。誰かと思いあたりを見渡すとデックボウ兄上の薄気味悪い笑みだった。その笑みに私は少し悪寒がし、首飾りからコートを取り出して着た。

 首飾りには収納の付与がしてあり、私の場合は鎧や宝剣等が収納してある。

 飲み物がいきわたり父が乾杯の挨拶をした。私はステージにやってくる貴族に対応しながら一口飲む。その瞬間、私の中から魔力が抜けていく感覚に襲われ崩れ落ちた。


「アルセルト王子殿下‼しっかりしてください‼誰か‼」


 私に挨拶に来ていた貴族たちが心配そうに駆け寄ってくる。父はというと貴族の対応に追われて気づいていないようだ。私はせめて魔力が無くなる前に回復魔法を使おうとするが発動しない。

 ふとデックボウ兄上の姿が目に映った。不気味な笑みを私に見せるとどこかに消えていった。


「すまないが誰か回復魔法をかけてくれないか。魔力が抜けていて魔法が使えないようになっている。それと、確実に私に毒を盛ったのはデックボウ兄上だ。あ、兄上はどこかに消えていった」


「お体に触ります。なるべく喋らずに安静にしていてください。国王陛下がまだ気づいておられないようなので伝えて参ります。魔法についてはもうしばらくお待ちください。今衛兵が呼びに行きました」


 貴族の1人がそういい父のほうへ小走りで向かっていく。私はというと意識が朦朧としていた。

 暫くして衛兵と父が走ってきた。


「アルセルト‼大丈夫なのか?」


 父が目に涙を溜めながら言いよってくる。私は話すこともままならなくなっていたが回復魔法をかけてもらい一時的に話せるようになった。


「父上…この状態が大丈夫に見えますか…。魔力が抜けて、全身に力が入らないようになっていってます」


「衛兵‼大至急群衆に紛れ込んだデックボウを探し出すのじゃ。民にも事情を話して協力してもらえ‼」


 父の命令で衛兵が走り去っていく。私はその時死を悟った。目が見えなくなりあらゆる感覚が無くなっていく。


「父上…私は…もう……ダメです…。どうか…私の分まで元気で…生きて…ください。亡き母上と、ともに…見守っております」


「アルセルトぉぉぉ‼」


 父の叫び声が響き渡る。私は殆ど感覚が無くなった腕をあげた。


「それでは…父上、お元気で…今まで育ててくださり……ありがとう…ございました。さようなら……」


 一気に力が抜け私は16年という短い人生に幕をおろした…はずだった。


「どこだ?私は死んだはずだが…」


 なぜか体が軽い。魔力も回復しており不思議に感じる。服を見ると死んだままの服装であった。


「危ない‼にげて‼」


 誰かの声が聞こえる。声の主を見ると黒髪の男女が3人いた。3人とも武器を持っておりその後ろには浮遊する謎の物体がある。

 私が声を出そうとした瞬間背後から強い殺気を感じた。それと同時に黒髪の1人が私を助けるために地面をけった。

 私は軽くパニックに陥ったがそれが命取りになった。背後から風切り音が迫る。後ろを振り返ると棍棒をでかい豚が私に向かって振り下ろしていた。

 冷静ならとっさに剣を構えて避けたかもしれないが今は混乱している状態だ。さっきぶりに悪寒がする。

 不意に後ろにつき飛ばされたかと思うと向かってきた人が棍棒に殴られた。足が曲がってはいけない方向に曲がって私の目の前に落ちる。



「カンタ‼後は私たちに任せて」


 少女がそういって敵に突撃しながら剣を一振り。とても綺麗とは言えない剣筋だったが敵は上下に分断されて崩れ落ちた。

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