【開門・悍ましき虚空の皇】:後編

「【開門ザ・ゲート悍ましき虚空の皇アザトース】」

 ついさっき手に入れた【開門ザ・ゲート】を発動して、残党の【殺戮の権天使スローター・プリンシパティ】の大群の掃討を始める。


『【虚構空間イマジナリー・スペース】』

 キュスがそう唱えると、周辺の空間がブラックホールの様な何かに置き換わっていく。

(…キュス、これ何?)

『虚構、現実、無限、有限、崩壊、創造…すべてが曖昧に、同時に存在する空間。かな?…少なくとも、人の理解できる範疇は超えていると思う』

(あぁ…そう…)

『この空間は私たちが支配してるから、この空間にいる者は好きなように出来るよ』

 それじゃあ、このまま【虚構空間イマジナリー・スペース】を閉じればこの場にいる【殺戮の権天使スローター・プリンシパティ】は全部葬れるかな。


 右手を前に突き出して、手を閉じる。

虚構空間イマジナリー・スペース】が収縮して、それに巻き込まれた【殺戮の権天使スローター・プリンシパティ】の大群が嘘のように消え去る。

「わぁお…、スレアちゃんの【開門ザ・ゲート】つよぉ…」

「そう?」

「一瞬であの量の【殺戮の権天使スローター・プリンシパティ】を殲滅するのって並大抵の【開門ザ・ゲート】じゃ無理だよ」

「そうなんだ」

「うん…、ほんとに、チーターみたいに強いね…」

 チートは使ってないよ?



 それから、僕とリアはミディア達の元へと戻る。

「おかえり、二人とも」

「お疲れ様、シャリア、スレアちゃん」

 サザレさんはミディア達の護衛についていたようで、いくつか近付いていた【殺戮の権天使スローター・プリンシパティ】を倒してたらしい。


「………しかし…」

「ミディアさん、どうかしました?」

「…もし、この襲撃が人為的なものだとしたら…」

「人為的?」

「あぁ。まず、あの量の【殺戮の権天使スローター・プリンシパティ】が群れを成して行動していること自体がおかしい。それに、中央には何か別の個体の反応を感じた。【天使エンジェル】、【大天使アークエンジェル】、【権天使プリンシパティ】、【亡天使スリエル】、そのどれにも当てはまらない個体が居たはずだ」

 多分、【殺戮の熾天使スローター・セラフィム】の事だろう。

「…でも、一体誰が何のために…」

「それが分からないのよね。動機も、目的も全く分からないの」

「…そうだ。スレア…と言ったな」

「え?あ、はい」

「私の従者になるつもりはない?」

「え?」

 従者?


 …ミディア曰く、単純に強い駒が欲しい…のだそう。

「もちろん、スレアの方にもメリットはある」

「そのメリットって?」

「私のアビリティ、【従属保護ディペンデント・プロテクト】でスレアのアビリティ使用後のクールタイムを短縮することができる。それに【開門ザ・ゲート】にも補正がかかる」

 まぁ…強くなるに越したことは無い…かなぁ。

「分かりました、受けます」

「そうか、よかった。…なら、私の手を握ってくれ」

 そう言ってミディアが差し出した手を握る。

「【精霊皇眷属スピリットエンペラー・ディペンデンス】」

 ミディアがそう言うと、僕の右手に紋章が刻まれる。

 エンジェルハイロゥに槍が交わったような紋章が右の手の甲に刻まれて、消える。


「これで私の眷属になったはずだ」

「…あんまり実感は湧かないけど…」

⦅であれば、これで少々実感が湧くんじゃないか?⦆

(…あぁ、うん)

 …頭の中がまた騒がしくなりそうだなぁ…。



「…さて、スレアちゃん」

「ん?どうしたのリア?」

「模擬戦しよーよ」

「え?」

 そんなにいきなり?

「まぁ…良いけど…」

「ついでだしサザレさんもね」

「あぁ…また僕も?」

「それじゃあ、攻撃が一回でも当たったら失格ね」

「あぁ、うん」


「それじゃあ行くよ!【開門ザ・ゲート審判の知恵アテナ】!」

「【開門ザ・ゲート死の戦神オーディン】!」

 2人ともが【開門ザ・ゲート】を発動して、僕に向かってくる。サザレさんの【開門ザ・ゲート】は発動した瞬間に周囲が爆発するらしい。

「…じゃあ、僕も」

(…そう言えば、【開門ザ・ゲート】って二重発動できるのかな)

『やってみよう、スレア』

『(【開門ザ・ゲート悍ましき虚空の皇アザトース】)』


《【開門ザ・ゲート】の二重発動を確認。PLプレイヤーネーム:スレアの状態を疑似神セドゥ・ゴッドへと変化します》


《【深淵の祝福アイギス】が【虚構の核神ニャルラトホテプ】へと変化します》


 そんなアナウンスと同時に、【深淵の祝福アイギス】がエフェクトを弾けさせながら【虚構の核神ニャルラトホテプ】へと変化していく。

『何がどうなってるの?』

(…さぁ…)

 …取り敢えず、キュスがまた強くなったって認識で良いのかな…多分。

 まあ、いいや。

(じゃあ、行くよ、キュス)

『うん』



 リアの【審判の剣アテナーズ・ブレード】を躱して、パイルバンカーをリアに向けて撃ち込む。

 けど、【審判の剣アテナーズ・ブレード】を手放したリアに避けられてしまった。

「【神槍・一叉グングニル】」

開門ザ・ゲート悍ましき虚空の皇アザトース】によるバフがかかった【神槍・一叉グングニル】をパイルバンカーに装填する。

『【神槍・一叉グングニル】』

 キュスが発動した【神槍・一叉グングニル】を地面に打ち込んで土煙を巻き上げ、煙幕の代わりに視界を奪う。

 当然、こっちも視界を奪われる。けど、こっちは二人のどっちかが突っ込んできてくれればいいからね。

「おぉぉりゃぁぁぁ!!!」

 土煙の中から、【審判の剣アテナーズ・ブレード】を拾い上げたリアが突っ込んでくる。

「―――っ!?」

 パイルバンカーを発射する構えをしてから、リアに蹴りを入れる。

 想定外のフェイントで防御できなかったリアに蹴りが当たって、ひとまずリアは倒せた。

 後は…サザレさんだ。



「…それで、【妖精族エルフ】の長は殺すことができたのか?」

「いえ…。あの数の【殺戮の権天使スローター・プリンシパティ】を一瞬にして消した者がいるとの報告が…」

「それは【開門ザ・ゲート】の力か?」

「分かりません…。…しかし、それは我々にとって脅威となり得る存在です。早急に排除するべきかと」

「…その者は何者だ?」

「分かりません。銀色の髪をし、青と白の瞳を持った少女だと…」

「では、その者を殺せ。如何なる手段を以てしてもだ」

「はっ」


――――――――

作者's つぶやき:最後のやつはなんていうか若干不穏ですね。まぁ、スレアくんを排除できるものならやってみろって感じなんですが。

開門ザ・ゲート悍ましき虚空の皇アザトース】にも、【虚構の核神ニャルラトホテプ】にも、まだまだ秘められた力はありますから。というか秘められた力の方が多いです。おかげで設定を考えるのが大変です。

まあ、ついでに言うと【開門ザ・ゲート悍ましき虚空の皇アザトース】には【捕食強化エンハンス・プレデション】っていう訳の分からんクソチートがあるんですよね…。簡単に言うと【虚構空間イマジナリー・スペース】に取り込んだ敵の数・強さに応じて【開門ザ・ゲート悍ましき虚空の皇アザトース】と【虚構の核神ニャルラトホテプ】が強化されます。

――――――――

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