【開門・悍ましき虚空の皇】:前編

 外に出てきたミディアが睨む先の空には、数えきれないほどの【殺戮の権天使スローター・プリンシパティ】が群れを成していた。

「うわぁ…」

「ちょっと鳥肌ものかも…」

(キュス、どれが【門の守護者ゲートキーパー】か分かる?)

『…うん。見つけた。…1体だけど、かなり強い』

(分かった…それじゃあ用心しないとね)


「まずは…お手並み拝見、かな。いくよスレアちゃん!」

「うん」

「「ヘーパイストス」」

 僕とリアの炎魔法を、同時に【殺戮の権天使スローター・プリンシパティ】が群れに放つ。


 凄まじい爆発音と爆風がして、爆炎が上がる。

 爆炎が晴れても、数が減った気は全くしない。

「あはは…数が多すぎるね…」

「そうだね…」

「こりゃ、どうするべきかな…」

「サザレさんは【開門ザ・ゲート】あります?」

「…まぁ、ないことは無いんだけどさ。ここで使うと周囲の被害が甚大なんだよね」

 …じゃあ、使えるのはリアの【開門ザ・ゲート】…【審判の知恵アテナ】しかないか…。


「…まぁ、埒が明かないから短期決戦で終わらせようかな。【開門ザ・ゲート審判の知恵アテナ】!」

 リアが【開門ザ・ゲート】を発動して空を駆けて【殺戮の権天使スローター・プリンシパティ】の群れに突撃していく。

(…キュス)

『うん』

「【称号機能ディグリー・ファンクション】、【終末の先駆者ラグナロク・プロトポロス】」


 エフェクトが弾ける。【深淵の祝福アイギス】の一部が切り離されて、【殺戮の権天使スローター・プリンシパティ】の群れに向かって飛翔していく。

「【神槍・一叉グングニル】」

 手元に出現した【神槍・一叉グングニル】をパイルバンカーに装填して、群れに向けて放つ。

神槍・一叉グングニル】は別に範囲攻撃じゃないけど…まああの数なら何体かは倒せるでしょ。


「遠距離攻撃とかできないんですか?」

「あはは…ちょっと相性が悪かったかな。僕は飛び道具を持ってないからね…」

「近接一筋なんですね」

「うん、エイム力がそんなになくてさ」

 …ってことは、パイルバンカーも使えない…か。


(キュス、どう?減ってる?)

『倒しても倒しても数が減らない…』

(…【門の守護者ゲートキーパー】倒さないと収まらないのかなぁ…)

『そうかも』

(…僕もそっち行くよ。キュスは【深淵の祝福アイギス】の操作だけに集中してくれていいよ)

『分かった』

 鎧側の【深淵の祝福アイギス】に翼を生やして飛翔する。

「いよいよ、僕の出番はなくなりそうだね…」

「そんな事ないですよ、多分」



 群れに近付いていく。

 リアや【深淵の祝福アイギス】のビットが【殺戮の権天使スローター・プリンシパティ】の大群と戦っているのが見えてくる。

「【滅亡の焔レーヴァテイン】」

 焔の槍が大群の中に命中して、爆ぜた。…まぁ、若干数は少なくなった…ような、気がする。


『…時間切れみたい』

称号機能ディグリー・ファンクション】の時間切れで【深淵の祝福アイギス】のビットがが戻って来て、鎧側の【深淵の祝福アイギス】と融合する。

 再使用まではあと150秒…。

(キュス、【門の守護者ゲートキーパー】がどこにいるかって分かる?)

『うん。そこまで行くから交代してくれる?』

(分かった)


 久しぶりに、キュスに体の主導権を渡す。

 体が勝手に動いて、【門の守護者ゲートキーパー】の方に向かっていく。


殺戮の権天使スローター・プリンシパティ】の群れを突破して、大群の中心に向かう。


 大群の中心、不自然に【殺戮の権天使スローター・プリンシパティ】が近寄らずに作られた空間の中央に、【殺戮の権天使スローター・プリンシパティ】でも、【殺戮の亡天使スローター・スリエル】でもない、別の【殺戮スローター】シリーズが居た。

(…キュス、あれは?)

『…【殺戮の熾天使スローター・セラフィム】…』

 天使エンジェル大天使アークエンジェル権天使プリンシパティときて熾天使セラフィムね…。

(あれが【門の守護者ゲートキーパー】?)

『うん…間違いない―――』

「―――っ!」

殺戮の熾天使スローター・セラフィム】が目の前から消えて、横から攻撃を受ける。それを受け流し、反撃をしようとしたその瞬間、もう一撃斬撃が飛んでくる。

 それをキュスの盾で受け流し、弾く。


 盾で防いでいる間に、左手にパイルバンカーを形成する。

『【神槍・一叉グングニル】』

 パイルバンカーに【神槍・一叉グングニル】を装填して、盾で弾く動きに合わせてパイルバンカーから撃ち出す。


 それをひらりと躱した【殺戮の熾天使スローター・セラフィム】からエフェクトが弾けて、動きがより俊敏になる。【開門ザ・ゲート】が発動したようだ。

(…キュス、動き追える?)

『…難しいかも…』

 じゃあ【深淵の鎖グレイプニル】で捕らえるのは難しい…か。

「【勝利の剣フレイヤ】」

 アビリティ、【勝利の剣フレイヤ】を発動する。

 すると、手元に炎を纏った剣が一本出現する。

 左手にキュスが変形させた剣を持って、【開門ザ・ゲート】を発動させた【殺戮の熾天使スローター・セラフィム】からの攻撃を防いでいく。


殺戮の熾天使スローター・セラフィム】が振り下ろした剣の刀身を、【深淵の祝福アイギス】で覆って、そのまま剣を折る。

 バキン!と音を立てて、刀身の真ん中あたりから剣が折れる。

 使い物にならないと判断したのか、【殺戮の熾天使スローター・セラフィム】は剣を後方に投げ捨てる。

「【深淵の鎖グレイプニル】」

 でも、その一瞬でも捉える事はできた。虚空から伸びた鎖が、【殺戮の熾天使スローター・セラフィム】の手足を拘束する。

「【神槍・一叉グングニル】」


神槍・一叉グングニル】が【殺戮の熾天使スローター・セラフィム】の胴体を貫通する。

 動きが止まって、脱力して地面の方に【殺戮の熾天使スローター・セラフィム】が落下していく。

 …これで確か、【開門ザ・ゲート】が一定時間使用不可になる代わりに復活するはず…。


 案の定、すぐに動き始めた【殺戮の熾天使スローター・セラフィム】。ただ、【開門ザ・ゲート】が使用不可になっているので動きは遅い。…これくらいの速さなら、目視でも捉えることは容易だ。

「【深淵の鎖グレイプニル】、【神槍・一叉グングニル】」

 もう一度【深淵の鎖グレイプニル】で拘束した後に、【神槍・一叉グングニル】で【殺戮の熾天使スローター・セラフィム】を貫いた。


《【開門ザ・ゲート悍ましき虚空の皇アザトース】を獲得しました》


――――――――

作者's つぶやき:う~ん…悍ましき虚空の皇アザトースかぁ…悍ましき虚空の皇アザトースなのかぁ…。

いやぁ、まぁ…はい。悍ましき虚空の皇アザトース…なんていうかこう、強そう…ですよね。

『そこはニャルラトホテプだろ!』そう言いたい方もいると思うですけど…、残念でしたね、ニャルラトホテプは悍ましき虚空の皇アザトースの息子なのでスレアくんの【開門ザ・ゲート】は悍ましき虚空の皇アザトースです。

…さて、【深淵の祝福アイギス】と悍ましき虚空の皇アザトース…深淵と虚空、一体どんなトンデモが起こる事やら。人間やめてそうだね(他人事)。

ところで、このエピソードのタイトルで察した人います?

『あっ、スレアくんが獲得する【開門ザ・ゲート】ってアザトースだな』ってなんとなく察した人。

白痴の魔王とかないと分かりにくかったですかね。

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