新しい力とPvP
愛と証明
見渡す限りの銀世界。【
「ん、キュス。どうしたの?」
「ううん、何でもない。二人と一緒に歩きたいから」
そう言いながら、僕の手を掴むキュス。
「妬いちゃうなぁ、まったくぅ~。じゃあ私も繋いじゃおっと」
…リアまで。
「…二人ともどうしたのさ」
「ん?別に何でもないよ?ちょっと不公平だなぁって思っただけ」
「…スレアは私の物、だから」
「むぅ、仕方ないなぁ~。じゃあそういう事にしておいてあげる」
…僕はキュスの物じゃ…。…あ~…そういうことか…。
「じゃあとりあえず…温泉でも入る?」
「うん」
「そ~しよ~」
■
立ち込める湯気を通して見る、銀世界。ただ温泉に入っているだけだと言うのに、それはなぜか、先ほどよりも綺麗に感じてしまう。
因みに温泉だが、パーティメンバーだけの混浴らしく、今この場には僕含め3人しかいない。
「そういえばスレアちゃん、【
「変形機能の応用。小さく変形させて目立たなくしてるだけ」
「今の所、【
「…スレアが私をDNAに組み込めばいい話。細胞レベルで同一化すれば【
(…遺伝子にキュスを組み込むって…そんな事できるものなの?)
『…スレアは私、私はスレアなの。だから…ううん、もしそうじゃなかったとしても。私は、私は貴女になる。なってみせる』
(…おぉ、怖)
『怖い…かな。大丈夫…私とスレアは、これからも…死んでも、ずっと、ずっと、ずーっと。一緒だから』
キュスのその声に、『愛』以外の感情はなかった。
無かったからだろうか、僕はそれに、狂気にも似た何かを感じる。『愛』は人を狂わせる…そう言うが、キュスが愛で狂うと言うのなら、それはキュスの人間だったころの名残なんだろうか。
それとも…キュスは僕になって、人間に戻るつもりなんだろうか。
キュスにそんな気は無いんだと思うけど、キュスの中の本能か何かが、人間に戻ることを望んでるのかも。
…まあ、考えたって、仕方ないか。
(…そうだね、僕とキュスはずっと一緒だ)
僕とキュスが、これまでも、これからも、一緒であることは間違いないだろう。
その一緒が、比喩か、事実かは別として、だ。
■
「いや~、気持ちよかったね~」
「そうだね。キュスは?」
『うん。いいお湯だった』
皆満足してるみたいだ。
『…それで、スレア』
(ん?何?)
『私と…一緒になってくれる…?』
(…快諾は、出来ないかな)
『…そう』
(止めはしないけど)
『…、…いいの?』
(だから言ったでしょ?快諾はできない。って)
我ながら、回りくどい言い方をする。
ただ、それは事実でもある。どんなメリット・デメリットがあるかも分からないのに、快諾なんてできるわけもない。
…そう、止めはしない。これはゲームだから。リアルに支障が出る仕様は実装されないはずだ。
…そう信じてる。まぁ、リアルで僕が死んだとして、困る人なんていないのだけど。
僕はもうずっと、孤独だから。
『じゃあ…始める、ね』
そういったあと、【
(…終わり?)
『うん』
…全然実感湧かないんだけど。
『多分、【
…おぉ、本当だ。
「…あ、スレアちゃん。使えるようになったんだ。どうやったの?」
「え?えっと…キュスと一体化した?」
「なんで疑問形なのさ?」
「いや…僕もあんまりピンときてないから…」
■
えへ…えへへ。
スレアと一緒…ずっと、一緒…。
あの時の私は…多分ずっと微睡みの中にいた。
いつか見た…
曖昧な意識の中でずっと、苦痛だった。
それが何のための苦痛かは分からない。もしかしたら、退屈だっただけなのかもしれない。
だけど、突然目が醒めて。貴女がいた。
私の共犯者になってくれた、貴女が。
短い期間だと思う。だってまだ、2日も経っていないだろうし。
だけど、私はスレアに恋心を抱いた。
『愛』は人を狂わせる。
なら、私が愛で狂えば、それはきっと私が人間である事の証明だ。
過去に自分自身が人間であった事の証明、なのかもしれないけれど。
■
「それじゃあさ、二人で一つになったスレアちゃんの腕試しに…あっ、アレとか良いんじゃないかな?」
そう言って、リアの指差す先を見る。
(ねえキュス、あれなんだか分かる?)
『【
【
「あれ…【
その僕への信頼はなんなの?嬉しいけどさ。
『スレア、頑張ろ』
(あぁ…うん)
【
ついでに触手みたいに変形させてナイフをホルダーから取り出して手元に寄せる。
「とーつーげーきー!」
そんなリアの掛け声とともに、僕は【
――――――――
作者's つぶやき:う〜ん…こんなに重い愛にするつもりは無かっんだけどなぁ…。
愛はキュスを狂わせてしまう…。スレアくんは人たらしか何かなのでしょうか。
長編(当社比)を書かせていただきました。興味のある方は是非↓
《放課後、図書室、夕焼け時》
https://kakuyomu.jp/works/16818093083346245688
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