リアとレベル上げ:殺戮の天使

「スレアって今日はなんか予定ある?」

「え?いや、特にないけど」

「じゃあさ、レベル上げ付き合ってくれない?」

「え?うん…わかった。けど…僕よりリアの方がレベル高いから役に立つかは分からないよ?」

「そこはほら、ゲーム外スキルっていう奴でカバーしてさ」

 まあ、運動はそれなりに出来る自信があるし、GSMワールドのアバターもそれなりに追従はできるから良いけど…。

「でも、ちょっとやりにくいかも」

「そんなことあるんだ…基本的にアバターの方が反応速度とか高いと思うんだけどなぁ。もしかして現実リアルで結構運動してるタイプ?」

「まあ、まだステータスが低いからかもね」

「それもそっか。じゃあスレアちゃんももっと強くなるためにレベル上げに行こう!」

 そう言って僕の腕を掴んで引っ張る。

「ちょ…分かったから、追いつくから離して」


 ■


転移所ポータル・ポイント】からテレポートしてきたのは、【残骸の砂漠ウェアケッジ・ディザート】という場所。

 名前の通り砂漠で、斜めになっていたり、倒れている鉄塔や電柱、建物であっただろう瓦礫や、建物の跡などがそこら中に存在している。


 っていうか、ここって推奨レベルが60とかだった気がするんだけど…。

「リア」

「うん?」

「リアの今のレベルってどのくらいなの?」

「えーっとねー、65かな」

「…僕のレベルまだ2なんだけど…」

「大丈夫だよ」

 本当かなぁ。

「…そういえばさ、レベル上げって具体的に何を倒すの?」

「えっとね、【殺戮の天使スローター・エンジェル】っていうやつ」

「凄い強そうな名前だね…」

「まあ、百聞は一見に如かずっていうことでさ」


「…あ、ちょっと待ってね」

「え?うん」

 そういえば痛覚リンクをOFFにしてたままだった。設定から痛覚リンクをONにして…よし。

「ねえリア、僕の腕抓ってほしいんだけど、いい?」

 そう言いながら、リアの方に腕を伸ばす。

「え?スレアちゃんってマゾなの?」

「違うよ、痛覚のリンクをONにしたから試したいだけ」

「えっ…大丈夫なの?」

「…まあ、多分?」

「そ、そう…。じゃあ、抓るよ?」

「うん」

 そう返答すると、差し出した腕を抓られる。

「痛っ…」

「すごい…ちゃんとリンクできてるんだ…」

 っていうか、プライマリでやっておくべきだったな。砂漠の真ん中でするような事じゃない。


 ■


「ほら、あれが【殺戮の天使スローター・エンジェル】だよ」

 そう言ってリアの指差す先には、2足歩行の機械が立っていた。

 人型、というには天使の方が近いかもしれない。背中には機械でできた翼のような物が取り付けられていて翼の付け根の少し後ろにエンジェルハイロゥが浮いている。

「…機械?」

「そうそう、【殺戮の天使スローター・エンジェル】は機械だよ。これの強化個体にね、【殺戮の大天使スローター・アークエンジェル】とか【殺戮の権天使スローター・プリンシパティ】とかもいるし…あとは特殊個体で【殺戮の亡天使スローター・スリエル】なんてのもいたかな?」

「そんなのもいるんだ…」

「たぶんスレアちゃんもいずれ倒すと思うよ。【残骸の砂漠ウェアケッジ・ディザート】に行けば【殺戮スローター】シリーズは結構多いからね」

 …やっぱりまだLv:2の僕が来るところじゃないよね、ここ。

「よし、じゃあ行こうか!」

 …もうここまで来たんだから今更引き返すのも…ね。仕方ないか…、まあ倒せればレベルはかなり上がるんじゃないかな…多分。


殺戮の天使スローター・エンジェル】の攻撃を躱しながら接近していく。

 まだまだステータスが低いから攻撃を躱せるとしても掠めたりスレスレで避けたりしてて…正直いつ直撃を食らうか気が気じゃない。

「―――はぁっ!」

殺戮の天使スローター・エンジェル】に接近して、ナイフを突き立てる。

 …まあ、当然刺さるわけもなく、甲高い金属音を響かせてナイフが弾かれる。

 …脆そうな関節部を狙ってもこれって―――。

「―――危なっ…いっ!」

殺戮の天使スローター・エンジェル】の機関砲の薙ぎ払うような掃射を物理的な間一髪で避ける。

「スレアちゃん突っ込みすぎ…」


「よし、スレアちゃん、決めちゃって!」

「おりゃぁっ!」

 リアが傷つけた箇所にもう一度ナイフを突き立てる。抵抗こそあったものの、ナイフが深く突き刺さる。

殺戮の天使スローター・エンジェル】が脱力したようにその場に跪いて倒れて消滅していく。

「じゃあ、ステータス確認してみて」

「あ、うん」


【ステータス】

Name:Threaスレア

状態:正常

Lv:12 - Level UP

HP体力】200

OFE攻撃】10

DFE防御】10

AGI敏捷】10

INS瞬発】10


SPステータスポイント】55


 アビリティ

刀身剛性化ソード・ステフニング】 - New ability

刀身属性付与ソード・アトリビュートグランテッド】 - New ability


 魔法

【炎魔法Lv:1】フレイム - New magic

【水魔法Lv:1】ウォータークリエイト - New magic


 その他

【痛覚リンク】有効


「おぉ…本当だ。さっきまでレベル2だったのにもう12になってる…」

「でしょ?強い敵を倒すほど、手に入る経験値が多いんだよね。まあ当然、倒すのも大変になるんだけど…。じゃあ、取り敢えずここら辺の【殺戮スローター】シリーズ倒そうよ!」

「…えぇ…」

 …まあ、いいやもう。レベルは早く上げるに越したことは無いし、【殺戮スローター】シリーズの経験値は結構入るから適任だし…。

「分かった」

「ほんと!?じゃあ速く速く!」

「あぁ…うん…」

 リアに手引っ張られた方が速いから手引っ張って連れてってもらおっと。


――――――――

作者's つぶやき:スレアくんとリアさん、なかなかに良いコンビなのではないでしょうか。初期装備と低ステータスで高レベル推奨の敵に突っ込んでいくって、結構無謀な気もしますね。

それはそうと、スレアくんの弾丸弾きはいつ頃見られるんでしょうか。

因みに、初期装備のナイフの攻撃力は【OFE攻撃】依存なので低ステータスだと結構すぐ使えなくなります。

――――――――

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