リアとレベル上げ:殺戮の―――

ダイブ・トゥ・GSMワールド

「よし…アバター設定も完了…と」

 名前の設定は…じゃあ、スレアで。


 …まあ、アバターの性別が女性なのは…いいよね。

 性別を女性に選んだ理由は、高校の友人から女装してって言われたから。まあ、確かに僕の体は女性寄りみたいだけど。



 アバターの設定画面から一転して、僕の視界に飛び込んでくるのは中世のような建物。

 ここが、プレイヤー達の拠点になる場所、プライマリ。


 ―GSMワールド、剣と銃と魔法の世界。


 最近、アクティブユーザー数が100万人を突破したとか。


 初期装備はナイフとポーションのみ。

 世界設定的には剣と魔法の世界に異世界からの技術が流入してきたから、銃は基本的に入手するのが難しい。

 入手できたとしても、弾丸もあまり流通していないため使うのが難しいらしい。


 …まあ、僕は初期装備でどこまで行けるか試してみようかな。



 プライマリの中心部にある【掲示板クエストボード】から、【風狼ウィンド・ウルフ】の討伐というクエストを受注する。


 場所は【狼の平原】という所。

 プライマリから北にある山の麓の近くにある場所らしい。




 プライマリのちょうど中心にある【転移所ポータル・ポイント】から【狼の平原】にテレポートする。


【狼の平原】というその名の通り、ここから見えるだけでもたくさんの狼が見える。

 8匹程度の【風狼ウィンド・ウルフ】群れを選んで、群れの方に駆け出していく。


 一匹の首筋にナイフを突き立てて斬り上げる。そしてその勢いのまま2匹目に斬りかかる。


 急な襲撃でも確実に反撃しようとしてくる【風狼ウィンド・ウルフ】の攻撃をいなしながら、次々に【風狼ウィンド・ウルフ】を倒す。


 最後の一体を倒してプライマリへと戻ると、クエストクリアの文字と共に報酬がインベントリの中に追加される。

風狼ウィンド・ウルフ】を倒したことで手に入る【風を纏う毛皮】が今回のクエストクリアの報酬みたい。



「次のクエストはどうしようかな」

 掲示板クエストボードを眺めながらそんなことを呟く。


 …流石にナイフ一本で1対多は分が悪いから避けたいな…。


「なあ、嬢ちゃん」

 僕の肩をポンポンと叩く感覚と男性の声。

 振り返ると、僕の後ろに体躯の大きな男性アバターが3人ほど立っていて、右手を掴まれて、強引に引っ張って連れて行こうとする。

 まだLv:2だからステータスもそんなに高くないし…いっその事自決した方が速いか?

「ちょっと待ちなさいよ」

 今度はそんな声と一緒に左手を掴まれてグイッと後ろに引っ張られる。

「わっ―――」

 急に後ろに引っ張られたからバランスを崩して地面に尻餅をつく。

 い…たくは無いけど…痛覚が無いのに地面に尻餅をついた感覚がするのってなんかすごく変な感じだ。

 あとで痛覚リンクをONにしておこう。


「あっ…ごめん、大丈夫?」

「はい…大丈夫です」

「ならよかった。ちょっと待っててね、あの人たちにきつく言って来るから」

 そう言いながら、彼女がさっき僕を連れて行こうとした人たちの元に歩いていく。



「…さっきはすみません…」

「ううん、気にしなくていいよ。私はシャリアだよ、気軽にリアって呼んでね。あと、できれば敬語もいいかな」

「えっと…僕はスレアで…一応リアルだと男性かな」

「えっ…でもその声…女の子にしか聞こえないんだけど…変声の方にしたの?」

 GSMワールドは、アバターの設定項目にリアルの声帯で声を出すのか、アバターの性別準拠で変声して声を出すのかを選べる。

 …まあ、僕はもともとこういう地声なんだけど。

「いや…地声だけど…」

「うっそー!?そんなことあるんだ…。ちなみにさ、なんでアバターを女性にしたの?」

「特に理由はなくて、たまに友人から女装してみたらって言われるからここでやってるだけ。…っていうか、なにしてるの?」

 リアは僕のアバターを全方向からじっくり眺めている。僕の話を聞いているのかいないのか、どっちなんだろ。

「いやー、GSMワールドここでは世にも珍しい男の娘だからしっかりと目に焼き付けておこうって思って」

「…そう」

「冷たいなぁ」

「じゃあ、逆にどう反応すればいいの?」

「う~ん…『きゃっ…エッチ…♡』みたいな感じ?」

「…嫌だ」

「もー、男の娘スレアは恥ずかしがり屋だなぁ~」

「…そういうことでいいや、もう」



「ねえねえスレア」

「なに?」

「一人称ってどうするの?」

 一人称…どうしようかな。

「私的には僕が嬉しいかな~、そんな感じの女性アバターで僕って一人称なのはギャップで萌えそう。白髪で…まあ、何とは言わないけどさ、もあって、なんていうか、落ち着いた感じの女性で僕って一人称…ギャップって言うの?」

「…じゃあ僕でいいや」

「ちなみにその大きさはへきだったりするの?」

「いや、これはランダム」

「へー?」

 リアが疑問の視線を僕に向ける。

 …一体何を疑ってるんだ?

「…揉んでみてもいい?」

「気持ち悪いから嫌だ」

「…ってことは、自分で揉んでみたの?」

「そういう訳じゃなくて、他人に体を触れられるのが気持ち悪いってだけ」

「へぇ~、そうなんだ。…じゃあ揉まないから…触れるだけでも…!」

 …さっきまでの話聞いてた?

「駄目だって」

「えぇーけちー」

「…はぁ」

「お?」

「いや、何を期待してるのさ」

「いや、ここは呆れながらも触れさせてくれる流れでしょ?」

 …それどういう流れなの?嫌だよ、何が何でも。


――――――――

作者's つぶやき:GSMワールド、リメイクです。まあ、主人公は彼方くんなんですけど、アバターが女性という…。所謂男の娘っていうやつですね。あ、リアさんはちゃんと女性です。

これが公開されている頃には、元のGSMワールドは削除されてると思います。

元の作品が好きだった方、申し訳ございません。できれば、こちらを楽しんでいただけると幸いです。

――――――――

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