Travel 25 キューピット。


 ――今日は夏休みの最終日。明日から二学期が始まる。お互い高等部の二年生。



 しかも同じクラスで同じクラブだから、明日も変わらず会えるけど……


「今この時は、二度と来ないんだからね」と、葉月はづきは言って、古いアルバムの間から舞い降りた手紙を、僕に手渡した。……そう。葉月は僕に託した。何が書いてあるのかを。


 そっと、封筒を開封する。


 紐を解くように、解かれる封印のように……


『やっぱりニイニイには本当のことを伝えておくね。その前に和美かずみは、ニイニイを愛しています。でもニイニイは優しくて、繊細な人だから、だからこそ知っていてほしいの。同い年の兄妹といえば、和美たち双子になるけど、それは違って、和美は養子だったの。つまり兄妹でもニイニイとは血の繋がりかなくて、ソーユー関係になれるけど……』


 蘇る記憶の中で、兄妹でソーユーことは良くないと言ったことはあったけれど、和美が聞かなかった理由はそこにあったようだ。実は、初めて恋を知るもの同士だった。


 それを引き離したのは父さんだけど、何があった?


 益々深まる謎。過去の糸は解けるように闇の中へ? その時だ。続きの文章へ。


『そしてニイニイ、和美には双子の姉がいたらしいの。ついこの間かな、お母さんが教えてくれたから……思えば和美が問い詰めたんだったね、お母さんのこと。八月二十四日が和美の誕生日。それはニイニイも知っているけど、血液型……ニイニイはA型。お母さんはО型で、お父さんはA型。和美だけB型だった。初めて自分の血液型を知った日だったかな……それで双子の姉のこと、実は知っちゃったから。その子の名前もね……』


 その次の文章だ。


「これって……」と、僕には、声にせずにはいられない程の衝撃だった。


「本当に僕の妹だった。じゃあ、和美ちゃんは、僕に伝えたかったんだ」


 和美が伝えたかったことは、双子の姉の葉月に託したのだと思われる。もしかしたのなら、僕と葉月を巡り合わせたのは、キューピットに扮した和美だったのかもしれない。


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ハヅキチックな夏休み。 大創 淳 @jun-0824

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