Travel 24 古いアルバム。


 ――もう蝉時雨も聞こえなくなり、夏の終わりを実感していた。



 それでも、まだ夏の終わりが感じられない程の暑さは続いている。


 残暑と呼ぶにはまだ遠く……それ程までに、この夏の思い出は、深く心に残った。


 少しでも前に進もうと、僕は身の回りの整理を、まだ細々とだけど開始していた。


 僕は今、公営住宅に住んでいる父さんと二人暮らし。もう四年になるけど、引っ越したばかりの頃と、あまり変わっていない状況で、荷物はまだ、段ボールの中が殆どだ。


 父さんとの会話も無いに等しかった。


 ここに来てから、ずっと……だから、長いボッチの時間。


 すると、静かすぎる時の中、インターフォンが鳴った。とても珍しいことだった。


 軽い足取りをもって、僕は玄関のドアを開けた。ある意味、勇気の一歩だ。もしかしたなら何らかの勧誘か、そんなリスクも多々ある中で、僕はドアを開け切った。


 そこには!


「来ちゃった」と、開け切ったドアの向こうには、葉月はづきがいた。


「よく覚えてたね、この場所」と、僕は驚きに包まれた。彼女は一度ここに来たことがある。二年前だった。丸い眼鏡と、お下げの髪。それに今日は、向日葵のような感じのワンピース。明るい感じの色が好みのようだ。そして彼女の中に、僕は和美かずみの面影を見た。


 葉月は、この旅で日焼けをしたようだ。


 そのお陰で重なる面影。眼鏡を外したなら、益々似てくる葉月と和美。


 きっと、初めて会った時から……


 そこで明らかになる、和美の秘密。和美だけが知っていたその内容を、ここで知ることになる。その時だった。段ボール箱の中から出てきた古いアルバム……


 その間から現れた一通の手紙……


 差出人は? 都築つづき和美と記されていた。都築……和美とは同い年の兄妹だったから、当時はそう名乗っていた。その手紙は古いアルバムの間から、ヒラリと舞い降りてきた。



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