Travel 23 旅の終わりに。


 ――サヨナラ。その言葉はなかった。



 旅の終わりは、また旅の始まり。また人生も旅で語られる。


 僕と葉月はづきの二人の旅は、また星野ほしの和美かずみの人生の一部だった。



 サヨナラが再び会うための遠い日の約束なら、僕たちには必要としなかった。


 あの夕映えにキラキラ輝いた和美の言葉には、また会える確信に至ったから。


 人生は、また物語……


 僕は綴った。和美は最初から今まで、この物語のヒロインだった。


 コクリと頷く葉月。時々は、彼女の脳内に、和美がお邪魔していたそうだったから。ならば初めの頃の葉月はもしかしたなら……チラッと見る葉月の顔を、


「さあ、始めようか怜央れお君」と彼女は言った。その真相は謎のまま。


 葉月はこれまでに何点か、作品を投稿しているという。ここでもまた、彼女は先輩だった。なので、御指導を受けながら、僕は執筆を進める。物語は既に描かれていた。


 とある小説サイトの『書くと読む』……今まさに、人生で初めての投稿をした。


 僕の名前は都築つづき怜央。レオというペンネームで登録している。


 そして今、募る想い出から生まれた物語が、我が手で執筆される。見守る葉月。まるで温かく見守る我が子のように、和美との想い出を綴っていった。僕と葉月の妹だ。


 僕は受け止めた。


 お父さんとお母さんは一緒に暮らさないままだけど、僕は少し強くなれたから。


 また帰ってきたから、大阪の地に。


 荷物もまだ段ボールから出してないままだけど、少しずつ少しずつだけど、前に進むと約束したから。あの日、夕立の後に輝いた虹。涙の後の笑顔に、和美と約束したから。


 葉月と二人、確かに約束した。


 UFOキャッチャーで得た青いトリさんは、確かに笑顔の和美が持って行ったから。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る