Travel 22 和美の視点は。


 ――いつもなら一人称は『和美かずみ』で自分の名前だけど、ここでは『私』



 私は会いにきた。お母さんと、そしてニイニイに。


 そして今日、帰ってゆく。本当は二、三日いたかったけど……でも、それが決まりだったから。私に与えられた時間は、お盆だけ。グスッ……泣けてきちゃった。


 ニイニイ……怜央れおお兄ちゃんとは、実は同い年の妹。でも血の繋がりはなくて、私は預けられた子だった。本当のパパとママの顔を知ることもなかったから……


 このことは、ニイニイは知らないと思う。それ以前に、ニイニイの記憶は喪失していた様子だったの。ハヅッチの脳内を見ることで、そのことを知ったから……


 それも、私が原因。


 私がニイニイを好きになったから。それは兄妹として幼馴染としてお友達として……それだけの筈だったのに、超えちゃったから。私にはニイニイが恋の人になっていた。


 脳内を見た時の、あの日のハヅッチと同じように。


 小学六年生の夏……小学校を卒業した日のことだ。


 突然お父さんがニイニイを連れてお家を出たの。お母さんとお父さんが大喧嘩したその後で。大雨の、さっきのような雷の中、追いかけた私は、その瞬間の記憶が飛んだ。


 何が起こったの? この世のものと思えないような痛み? まるで全身が燃えるような感覚? その時はもう……私は、死んでいた。


 垣間見た、号泣するニイニイ。お父さんも、お母さんも。呆気にとられたのか、驚愕したのか、どちらも区別ができないようなこと。雷が、私の命を奪っていた……


 そうだね、十三歳ではなく十二歳だった。永遠の十二歳。


 私のことを思い出したことで悲しまないで欲しかったの。それでも伝えようと思ったから。ニイニイがハヅッチと共に、次のステップへ行けるように。私は一言……


『生まれ変われるなら、今度はニイニイとハヅッチの子供になりたいな』と。雨も上がって、キラキラ輝く夕映えの中、私はそっと言った。この姿が消える直前だった。



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