Travel 20 推しの大聖寺。
――午後の二時。
動橋駅から。来たのは白と青の普通電車。三両編成が発進する、僕らを乗せて。
大きな仏像。それが特徴な加賀温泉駅を通過し、大聖寺駅に着いたのも刹那的。語り合う場も、何を語ったのか残らない程に刹那。……歩く、時は前へ前へと進みゆく。
大聖寺駅も、何処となく動橋駅を思わせる程にローカル……
待合室が設けられていた。キヨスクに飾られているコミック雑誌など。僕は一冊を購入した。
小学校の時、よく来た場所……?
そうなのだ。和美とよく来た場所。父さんと母さんと一緒に。お姉ちゃんたちは年が離れていたから、あまり思い出はなかったのだけど。――なかった? いや違った。
八月十五日、皆が一緒にいた。
皆が黒い服。喪服という服装。前を歩く和美……
屈託ない笑顔は、あの時と同じだった。和美はあの日、旅立った……
そして帰ってきた。僕の記憶が、あのことを受け入れられるようになったから。
「気付いちゃったんだね、ニイニイ」
と、和美は言った。
僕は、涙を零していた。ここは、ちょうど石川県の中心部。そこで叫ぶのは愛。
「大事な幼馴染だもんな。お帰り。挨拶が遅くなったけど、僕のこと、そう呼んでくれるのも、やっぱり和美。小学校の入学式から同じだったね。そして同じクラス……」
「見た目は十三歳だけど、本当だったら十六歳……だね。ハヅッチとニイニイと同い年だけど、もう同い年になれない。それからハヅッチ、ニイニイを導いてきてくれて」
――本当にありがとう。
「それから、ちょっとごめんね。ハヅッチの記憶、ちょっとだけ弄っちゃったから。あれはね、本当は和美の記憶なんだ。でも、ニイニイには見抜かれてたみたいだけど」
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