Travel 18 学び舎の記憶。


 ――記憶は誰のものでもなく、自分のもの。だったら、この現象は何だったのか?



 葉月はづきの中に見える記憶は……


 ボブで活発な感じの少女……


「ニイニイったら、どうしたの? そんな難しい顔をして?」


 ズイッと、葉月を遮るように、和美かずみは入り込んできた。……そうなのだ。僕が幼き日に会った少女は、まさに和美の方だったのだ。でも、そうなると、辻褄が合わなくなる。


 和美は、幾つ……なのだ? 少なくとも見た目は中学生で、


「十三だよ。……きっと、永遠の十三歳」と、唐突に和美は答えた。ちょっぴり悲しげな表情を見せた。それとは反比例な、窓から見える快晴の空は、誘う記憶の向こうへと。


 僕の手を引っ張る和美。


「行こっ、キャッチボールしよ」


「あ、それを言うなら、きっと体育館でバスケットボールじゃない? 今、お外は猛暑の真っ只中だし」と葉月が言うと、和美はクスリと笑って「あ、そうだった」と言った。


 特に今年の猛暑は、きっとこれまでと種類が異なっている。


 そして今日は、お盆。思えば今日、学校の門が開いていることが不思議だった。それに流れる風は、何処か懐かしい感じもした。猛暑の筈なのに、何処が涼しさを残していた。


 体育館は、あの頃のまま……


 弾むボールは繋がりを求めて、今パスで繋がってゆく……


 和美は満面な笑み。でも、瞳は潤んでいるようにも見えて、それが涙のようにも見えたから「ほら」と、ボールを投げる。和美へと。「ワワッ」と、声を漏らしながら、


「ちょ、ニイニイ、次はハヅッチヘパスじゃなかった?」と、ボールを受けた。やっぱり運動は得意そうだ。なので「さ、ゴールへ向かって決めるよ、シュート」と、僕は言う。


「アハッ、サンキュー、ニイニイ」


 ズバッと網の音。ボールが網に擦れる音。見事なスリーポイントシュートだった。



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