Travel 17 とある母校へ。


 ――並んで歩くトンネル。三人並んで。ある共通点を発見したから。記憶の糸は想い出を呼び覚ます。糸は巻き取られる。和美かずみの行こうとしている場所。そこは母校だから。


 誰の母校なのか?


 僕らは皆、学問を本業とする者。まだ卒業までは間がある。


 それでも向かう先は、旧校舎が現在では珍しく木造。赤い屋根が特徴の二階建てで、


「ここ小学校だけど……」


 と、僕は声にした。葉月はづきは八歳までは、ここ動橋に住んでいた。ちょうどトンネルを出てすぐの所だ。それに、そこから凡そ三百メートルの所に、その小学校があった。今でも健在に残っている、あの日あの頃の幼き頃。呼び覚まされたのは、実は僕の方で……


「さあ、ニイニイ行こっ」


 と、僕の手を引っ張る和美。「行こう行こう」と、葉月も一緒なって燥いでいた。


 そして潜る正門。


 蘇る記憶? 幼き日のこと、僕は確かにここにいた。


 小学校の六年間、僕はここで学び、卒業アルバムだって家にはある。……長い間、忘れていたのだ。だとすれば、僕はここで葉月と会っているのかもしれなかった。八歳……ということは、少なくとも小学二年生の夏までは、ここにいたということになるから、


「あーっ」


 と叫ぶ、葉月の声。それに今いる場所は、その木造の旧校舎。二階の教室だった。


「ここって、やっぱり僕のいた教室……」


「そうだよ、怜央れお君。僕と同じクラスだった。二年一組だった」


 確かに会っているかもしれないどころか、ガッツリと会っている。しかも、同じクラスの隣にいた席の子だった。星野という名字。そうだった、ボブで活発な女の子……


 あれ?


 それって和美の方だけど……


 見比べる和美と葉月。何故? 面影が重なってきた。共通点の塊が襲ってきたのだ。



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