Travel 16 整える今時分。


 ――整えるには、一人の部屋と隙間に収まらない程の意図的な、そんな時間が必要だと思えた。例えば今、午前二時のフワッと暗闇浮かぶ、裸電球の穏やかな灯り。


 お盆には必要不可欠。


 今生で出会えなかった者たちの、密会ドラマのためにも……


 そんなことを思考している中で、見えるのは葉月はづきのお顔……


 旅する者同士、同じ部屋の中にいる。二階の畳のお部屋。因みに六畳。布団は二組……だったのだけど、僕と葉月の間に、和美かずみがスヤスヤと寝息を立てている状況、


「やっと眠ったね」と、葉月は言う。少しばかり低い声で。


「やっとだね、本当に。まさかこんなことになるとは……」と、僕は、葉月の言いたいことがわかるだけに、この想定外な出来事に、整える時間が必要となる。これから始まる新たな展開に対して。それは「本当なら葉月と二人、僕の母に一目合って、それだけで充分だったのに。僕は母に、葉月を紹介したかっただけだったのに、この展開は……」と、纏まるには程遠い言葉で、本当は葉月だけをヒロインとした夏の思い出を作りたかった。


 ――すると、


「いいじゃない、別にヒロインが二人でも」と、葉月は言う。そして包まれる驚きに。


「ほ、本気なのか? 葉月にとっても、これは大型なデート。こんな形でいいのか?」


「素敵じゃない。和美ちゃんは怜央れお君だけじゃなく、僕の妹でもあるんだよ。名字が星野ほしので……実はね、聡美さとみおばちゃんだけど、僕の親戚でもあるんだよ。正確にはパパの従姉らしいから。その娘だから、和美ちゃんは……それに、驚いたのは僕も同じなんだから」


 と、葉月は明かしたのだ。


 つまり僕の母は、星野聡美という名前で、葉月のお父さんの従姉に当たるそうで、その娘の和美は、必然的に僕の妹でもあり、葉月の従妹という関係となる。……あれ? 何か変だぞ? なら、僕と葉月は従兄妹、もしくは従姉弟の関係になるのでは? 驚愕する僕ら。知らなかったとはいえ、僕らは、僕らは昨夜、身も心も裸で結んだ仲に……


 それに和美の父は誰? 深まる夜と同じように深まる謎。僕らは解き明かすことに?



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