Travel 14 麗しき再会に。
――面影。それは消えることのないメモリーズ。まさに今、その時が訪れた。
まだ先にあると思っていたこの時、まさかこんな形で訪れるとは……
ジッと僕を見る店主の表情にも変化が。時が止まったのか? 巻き戻されたのか? そのような感覚に見舞われた。異変というには瞬間的なこと。でも、
「
「葉月、どうも僕にも、深い関係があったようだ」との台詞を言うには、あまりにも唐突なことで、湧き上がる動揺を抑えるには、よく言えた台詞だと自身でも思った。
「れ、怜央なの?」と、店主は声にした。
僕はまだ名乗っていなかったが、葉月が僕の名前を言ったことで、僕の思っていたことが確信に至った。店主は僕の名前を声にした。僕もまた面影が重なっていた。幼き日に見た母の面影……そして昨夜、全裸で葉月と抱き合ったことで、心は素直になれていた。
涙を見せて、人は大人になれる。
何処かで聞いた歌詞が、脳内に広がった。
「……母さん」と、僕は声にした。
葉月は驚いた様子だった。でも、その時の僕には、まっすぐ店主しか、母さんしか見えてなかった。それでも葉月は笑みを見せた。「良かったね、怜央君」と、言葉を添えて。
涙なしでは語れなかった、この母と子の再会。
今はもう名字は違っても、血の繋がりはある。そして葉月は、このことが起きることを察知していたみたいだった。昨夜の彼女の行動を思うと、不思議だけど、まるで僕を導くような感じで……僕の心を裸にした。本当に素敵な彼女。僕には世界一の彼女だ……
幸せの絶頂。
このことを言うのだと思う。そして知ることになった。母さんの旧姓。僕の名字は
そこへ、さっきのボブで褐色の女の子が現れた。「あっれ、君たちはさっきの……」
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