Travel 11 旅立ちの朝に。


 ――夢のような一夜。でも、余韻を残すには有り余る程に印象的だった。



 同じベッドの上。二つあるにも拘らず、一つの、シングルベッドで身を寄せ合って眠っていた。僕も葉月はづきも裸のまま、全裸のままで、お互いの凹凸を素肌で感じる程にまで。


 薄っすらと目覚める葉月……


 ゆらっと揺らめく胸。そして交わす「おはよう」との挨拶。そして葉月は、


「また洗いっこだね」と、はにかんだ笑顔。対する僕は「少しお掃除も必要だね」と部屋の様子が物語っていた。でも「いい顔してるよ、怜央れお君」と、葉月は清々しく言った。


 僕の心のモヤモヤが……


 この燦々とした太陽のように晴れ渡っている。もう惑いも迷いもないのだ。


 僅かな距離。ホテルは福井駅と隣接しているに等しかったから、電車に乗るのも本当にすぐだった。白と青のボデーの普通電車。凡そ一時間に一回のペースだから、逃したら出発は一時間先ということになる。何せ、もう僕と葉月の向かう駅が決まっているから。


 それもチェックアウト間際に決まった。


 僕は会う。自身の母親に。住んでいる場所は動橋駅の近くまで絞れたから。そして葉月も、その動橋駅付近の古本屋さんを訪ねたいと言っていたから。……同じ駅となった。



 普通電車しか止まらない場所。


 今では無人駅らしい。そして駅を出るにも、どのようにしたら良いのか? 葉月も僕と一緒に行ったり来たり。渡り廊下を思わせる特徴的な上りホームと下りホームを繋ぐ白い跨線橋。ホームにはアーケードのような屋根がある。それも白い色で、印象に残った。


 すると、とある女子高生が声を掛けた。まずは葉月に。


「これね、こうして入れたらOK。じゃあ、彼氏と仲良くね」という具合に、改札の出方を実演しながら。クラブの帰りか何かだろう。ボブの活発な感じの女の子。日焼けしているのか褐色気味。駆け抜けて行った。しかも、葉月を僕の恋人と認識して……



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る