頭の上には青いリボン
桐崎りん
頭の上には青いリボン
「こんにちは」
ピンク色の大きなリボンが目立つ。
青い瞳、金髪でツヤツヤの長髪にも目がいく。
頭の上にはピンク色の大きなリボン。
白いフリフリのワンピースに身を包んでいる。
誰がどう見ても可愛くて美しいおじょうさま。
「こんにちは」
僕はそう返した。
くりくりの目が僕をみているのだけど、僕を通り過ぎて僕の後ろを透かし見ているようだった。
「なに?」
「すいません」
おじょうさまはクルッと身体の向きを変えて僕から去った。
・
翌日、前日と全く同じ条件でおじょうさまと会った。
朝、8時10分。
僕が住んでいるマンションの前ですれ違った。
違うのは頭の上の青いリボン。
「こんにちは」
今日も丁寧にあいさつされた。
「こんにちは」
おじょうさまは今日も僕の先を少しの間見つめて去っていった。
・
僕はマンションの住人とすれ違って「おはようございます」と軽くあいさつを交わした。
「あ、そういえば」
僕は切り出した。
住人とはあいさつしか交わしたことがない。
「なんですか?」
相手は気だるそうにそう返した。
「この辺りにお金持ちが住んでるんですかね?外国人の」
僕がそう言った途端相手の顔は真っ青になった。
「見たのか?青いリボンの少女を」
「はい、そうですけど…」
「話したのか?」
「あいさつ程度ですが」
「何回?」
「い、1回ですね」
僕は相手の顔色の悪さにびっくりしながらも答える。
「そうか」
「1回ならまだ大丈夫だろう」
相手は少しずつ冷静さを取り戻していった。
「俺、あの少女に追われてるんです」
「はぁ」
「死ななかったから。約束通りにしなかったから」
「はぁ」
相手はぼうぜんと突っ立って「いくらなんでも早すぎないか…」と呟いた。
「じゃ、じゃあ失礼します」
僕から話しかけておいてなんだが、相手を残して僕は階段を駆け上がった。
自分の部屋に駆け込む。
ガチャ
鍵をかける。
何かとんでもないものに巻き込まれた気持ちになった。
僕はただ赤色のリボンのおじょうさまから逃げるためにここに来ただけなのになぁ。
・
翌日、昨日話した住人は存在が消えていた。
大家さんに聞いても「そんな人は住んでいない」の一点張りだった。
今日は緑色のリボンのおじょうさまと会話した。
「こんにちは」
「こんにちは」
・
赤色のリボンのおじょうさまに僕はまだ見つかってないない。
・
隣町に引っ越した。
青いリボンのおじょうさまを見かけた。
・
「おい、お前早くないか?」
「僕、このゲームはじめたばっかりで」
「チョロすぎ」
「だからはじめたばっかりなんだって」
・
僕は赤色のリボンのおじょうさまに見つかった。
・
次は青色だ。
頭の上には青いリボン 桐崎りん @kirins
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