第15話 ・・・私の、ファン?

「あの、僕とチームを組んでいただけませんか?!僕、あなたの大ファンなんです!」


それを言ったのは、出会って間も無い白髪男子、アイル・グレーシング。

えーと・・・、これは、何、私が強いからってことか?でも、残念ながらそんなに目立ちたくないんだよなあ・・・。こればかりは仕方がない。お断りするしかないか。ファンの件は無視しよう。


「えーと・・・その、折角誘っていただいたところ申し訳ないのですが、私もあまり目立ちたくないわけでして・・・その、お断りさせていただいても・・・」

「待って!待ってください!僕、本当にあなたの大ファンなんです!

 最初に出会ったのは、筆記試験の時でした・・・」


なんか話長くなりそうだな・・・。本読みたい・・・。


「あの時、僕は寝坊して遅刻してしまい、家から急いで出て学校に向かって走っていきました。そして、門が閉まりはじめ、急いで門まで行ったんです。そしたら・・・急に後ろへ吹っ飛ばされたんです。そして、尻もちを着いて門のすきまから見ると、学校に向かって猛スピードで走っていく黒い残像が見えて・・・。それが、ユーリエさん、あなたです。」


ああ、確かに筆記試験の時遅刻して、焦って誰か吹き飛ばしたなあ・・・って、ん?今の話のどこに私のファンになるポイントあった?今のところ恨むポイントしかしかないが?


「それで?」

「それで、ファンになりました。」

「・・・は?えーと、それは、その時は恨んだけれどその後何か助けてもらって好きになったとかではなく・・・?」

「はい。何も助けてもらってません。逆に、吹っ飛ばされて筆記試験は受けられず、テストの結果は散々でした。まあ、今こうしてAチームに来られたのだからどうでもいいんですけどね。」


だからFチームだったのか…。何か悪いことしたな…。


「ちなみに、ファンというのはどういう活動を・・・?」

「えーと、主にユーリエさんの日常の様子を写真に撮ったり、日頃の行動をメモしたり・・・ですかね。」


やってること立派なストーカーじゃねえか。


「だから、お願いです、どうか、どうか一緒に大会に出ていただけませんか…?!もちろん、他のメンバーはユーリエさんに決めていただいて構いません!僕にとってはユーリエさんと同じチームに入れることが一番の喜びですから!」


うーん…じゃあ、いいのか…?いや、でもな…。

私が迷っていると、


「ていうか、なんでアンタはユーリエを推すようになったわけ?」


とルナが入ってきた。ありがとう、ルナ!というか、推すって…何だ?


「全部に決まってんだろ。お前みたいな凡人が近づくな。穢れる。」


急に口悪くなったな…。目つきも悪くなった気が…。


「ず、随分言うじゃない…。ふーん…。じゃあ、分かったわ。そこまで言うなら、ユーリエの良いところを交互に言っていって、私よりも言えたら許可しても良いわよ?」

「フッ。いいだろう。」

「じゃあ、私から…美人!」

「魔法の才能が凄い!」

「む、やるわね…じゃあ、膨大な知識量!」

「そうきたか…。じゃあ、自分の能力をむやみにひけらかそうとしない謙遜の姿勢!」

「じゃあ、弱い者にも目を向ける優しさ!!」


いつまで続くんだよこの茶番は…。それに、最初から美人が出てくるなんて…目、大丈夫か? 

白々しい目で2人を見ていると、


「こいつらは何をやっているんだ?」


とリアムが言った。ちなみに、彼も私と全く同じ冷たい目で二人をじっと見つめている。

何故私の席の周りにはこんなにも人が集まるのだろうか・・・。


「さあ・・・。何か、気づいたら始まってました。というか、いつからいたんですか?影が薄くて全く気付きませんでした。」

「影が薄い・・・?!はあ、全く。王族に向かってそんな口を聞いてくるのはお前か魔族ぐらいだな。」

「私と魔族を一緒にしないでください。」

「フッ、そうか。それよりも、もう話は終わったようだが。」


私がハッと二人を見ると、もうあの茶番は終わり、今度は先ほどの私と同じ目線で私とリアムの会話の様子を見つめていた。それはこのクラスも同じことで、皆一斉に静まり返り、私達のことを見つめている。

なんだ?私、そんな目立つようなことでもしたか?


「ユーリエと王子って、そういう関係だったのね・・・」


何かを悟ったような顔をしているルナ。ちなみに、そのルナの言葉に対して王子はかすかに顔を赤らめている。よくわからないが、とりあえず無視しておこう。


「と、ところで!お前たちは一体何をしていたんだ?」

「あ、えーと、その・・・実は、この馬鹿雪男・・・間違った、えーとアイルが、ユーリエと魔法大会のチームを組みたいと言っていて・・・。王子はどう思いますか?」

「あ、ちょ、お前・・・」


アイルがルナを怒りの目で見ている・・・というか、アイルとルナって仲良いな。初対面とは思えない・・・うーん、二人ともコミュ力お化けなだけか?


「うーん・・・。そうだな。俺は別に良いと思うが?」

「そんな・・・!考えてもみてくださいよ、こんな試験当日に遅刻をするような馬鹿・・・人が魔法大会なんて・・・!絶対周りに迷惑をかけるに決まっています!それに、こいつ、ユーリエのファンとか名乗ってるんですよ?!私もファンなのに、許せないですよね?!」


あ、アイルに当たり強かったのそれが原因だったんだ。


「いや・・・。それなら、ユーリエとアイルのチームにお前も入ってアイルを管理すれば済む話じゃないか?」

「いや・・・って・・・え?私も入る・・・ユーリエと魔法の特訓・・・あ、意外と良いかもですね!あ、はい、そうします!じゃ、そういうことで!」

「そういうことでって・・・おい、え、じゃあ俺男子ぼっちじゃん!それはやめてくれよ!」


昨日のみかん美味しかったなあ・・・


「うるせえ黙っとけ雪男が。最初に、『もちろん、他のメンバーはユーリエさんに決めていただいて構いません!僕にとってはユーリエさんと同じチームに入れることが一番の喜びですから!』とか言ってたくせになんだよその発言は!」

「あ?俺はユーリエさんなら空気を読んで二人で大会に出てくれると思ったからこそそう言ったんだよ!お前みたいな心の濁ったやつには分かんないかもしれないけどな!」


今日のお昼ごはん何かなあ・・・


「え、あ、じゃあ俺もチームに入っても良いか?」

「えっ、王子が?!もちろん大歓迎です!!これでお前も良いよな?」

「まあ、それならそれで・・・」

「じゃあ、ユーリエ、これで決定ってことでいい?!」

「・・・はい?もしかして私の知らない間に話進んでました?」

「・・・はあ。このチーム色々不安だな・・・。」


こうして、私の知らぬ間に魔法大会のチーム問題は解決するのであった。

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