第12話 VS伝説の暗殺者!(前編)
その昼。私は、今日の学食のメニューを見ながら、立ち尽くしていた。
私は、みかんが嫌いではない。
急に言われて動揺するだろうが、もう一度言う。私はみかんが嫌いではない。
この学校に来て一週間、ずっとみかんが学食のメニューに出るのを待っていた。そして、遂に…「みかん」という文字がメニュー表に並んだのである!
私は、学食のカウンターにすべりこみ、すぐさまそこにいた盛り付け係の人に
「みかんをある数全部ください」
と言った。
まあ、普通の人はこんなことを言っても相手にされず、一個しかもらえないのがオチだろう。しかし、私の場合は違う。自分の周りに魔法で黒い霧を出しながら無表情で言うだけで、相手は言うことを聞くのだ。今日も、
「は、はい…。分かりました…。」
と何故か怯えた顔をしながらみかんを皿に盛り始める。
ふう。では、一段落ついたところでこの学校の給食の制度について説明しよう。ここでは、クラスによって給食のメニューが違う。C、B、A…とクラス内での生徒の平均学力が上がっていくごとに、給食のメニューのランクが上がっていくのだ。ちなみに、今日のAクラスのメニューは…高級松茸を使ったきのこグラタンと、希少な小麦を使ったフランスパンと高級みかんか。うーん…きのこ嫌いなんだよな…。ちなみに、一番下のDクラスのメニューは冷凍グラタンと食パンと冷凍みかんか。冷凍グラタン食べたい…。
などと考えていると、もうみかんを全て皿に盛り終わったようだ。私は、全学年のAクラスの分のみかん(30個)がピラミッド状に載った皿を受け取ると、他のグラタンなども持って定位置の席に着いた。
はあ・・・。みかんは30個か・・・。別に種類が違ってもみかんであることには変わりないのだから、他のクラスの分のみかんも欲しかったな。逆に味比べできて楽しいと思ったのに。
あれ?そういえば、ルナはどこに行った?授業の時は横にいたはずなのに・・・。みかんが楽しみすぎて、テストが終わってからこの食堂に来るまでの記憶が無い。アイリスに連れ去られたとか・・・?いやまさか。朝にあれだけ恥ずかしい思いをしたのだ。また同じことを繰り返すほどの馬鹿でも無いだろ。どうせ、初対面の人に怒鳴るほどのコミュ力があるのだから、他のクラスの友達とでも給食を食べているのだろう。この後は授業も無いし、寮に戻って新しく図書室から借りた小説でも読もうかな・・・。
このときの私はまだ知らなかった。アイリスのプライドの高さ、そしてそれを傷つけた者に対する執念深さに・・・。
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あれから数時間後。私は小説を読み終わり(四周目)、夕食を食べるために食堂に向かおうとしていた。
しかし、ルナは遅いな。いつも図書館などに行っても、夕食前には必ず戻ってくるのに。ちょっと心配になってきたぞ・・・?。あれだけ守り切ると豪語したのだから、もしこれでルナがアイリスに監禁なんてされていたら私の信用に関わる。一応、食堂に行く前にルナを探しておくか。
うーん・・・もし、ルナが監禁されていたとしたら、目的はなんだ?もしかしてもう殺されている可能性は・・・いや、ないないない。多分、おそらく、大丈夫だと思わなくもなくもない。人生ポジティブに!よし、監禁されているという方向性で考えよう。で、目的は・・・私をおびき寄せることか。それに、伝説の暗殺者がいるとか言ってたな・・・。なら、戦うことになるのか?研究者として言うべきではないかもしれないけれど、考えるのも面倒くさくなってきた。とりあえず、直感で探そう。私の勘では、森にいそうな感じがするのだが……。よし、行ってみよう。
ー数分後ー
いた。普通にいた。
え、私の勘すごくね?普通に、飛行魔法でビューンって飛んでたら、普通にいたんだけど。え、本当にあれルナだよな?で、あれがアイリス。うん、いる。で、あと今アイリスと喋ってる良くわからない人が一人。うーん…とりあえず、遠くから見てるのも何だし、近くに降りてみるか。
私が三人の前に降り立つと、アイリスが
「いくら何でも遅すぎないかしら?もう捕まえてから四時間ぐらい経ったわよ…ってユーリエ?!待ってたわよ、ユーリエ…ルナは気絶させてあるわ。私のことを散々馬鹿にして…。よくやってくれたわね。確かに、私はあなたよりも弱い。でも、伝説の暗殺者ならどうかしら?」
と言い、一歩後ろに引き、代わりに謎の男が私の前に立ちはだかった。
私に話しかける前に何か私について喋ってた気がする…。まあ良いか。
へー…こいつが伝説の暗殺者か…。ナイフを持っているのに、鞘を身に着けている様子がない。もしかして、ナイフを鞘に収められないのか?まあいいや。それはここからの戦いで分かるだろ。
すると、何の予備動作も無く、男が私に斬り掛かってきた。
横に飛んで避けると、私の横にあった木が横から真っ二つに切れて、私に向かって倒れてきた…。
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