第8話 ダンジョン潜入!②

あれから数十分。私たちは無言で歩き続け、特に魔物に出会うこともなく、最下層のボスがいる部屋の扉にたどり着いた。順調すぎて逆に不気味だ。

「ここが、ボスのいる部屋……。」

「扉がとても大きいな。扉が天井まである。皆で押しても開くかどうか………。」

「確かに。よし、ヨハン、リア厶。ドアの前に集まって、同時に体当たりをしよう。」

男子三人がドアの前に集まる。

「よし、じゃあ行くぞ、いっせーのーで!」

ドーン。大きな音が響くが、扉はびくととしない。

この人たちは何をしているのだろう。これくらいの扉、片手で開けて当然じゃないか?

「避けてください。」

「何だ?」

「こんな扉、一人で開けられるでしょう?なぜ体当たりまでしても開けられないんですか?」

「じゃあ、お前が開けてみろ。」

ドアに片手を添える。すると、いとも容易くドアが開いた。

「なっ………!」

「俺達三人でやっても開かなかったのに………!」

などと声が上がる。

私はそれらの声が聞こえないフリをしながら、ボスの部屋に一歩足を踏み入れた。そこにいたのは……

「ド、ドラゴン?!」

「ウソでしょ?!ドラゴンなんて魔法使いには倒せないわ!」

ドラゴンだ。さっき誰かが言っていたように、ドラゴンは魔法使いには倒すのは難しい。なぜなら、ドラゴンのあの輝く鱗は魔力を吸収する効果があるからだ。そのため、魔法による攻撃は一切効かない。つまり、武器も持たずに来た私たちには素手で殴るしか攻略法が無いのだ。

そんなことを考えていると、

ゴオオオッ!という轟音と共に私たちに向けてドラゴンの口から火が吐き出される。

他の4人はすぐさま飛行魔法で退避したが、ぼんやりしていた私は避ける暇も無く、その結界をも焼き尽くす業火が私に直撃する。

「ユーリエー!」

王子が何か叫んでいるな。しかし、心配する必要は無い。私は、魔力を異常に上げたことにより、滅多なことでは怪我をしない。そのため、この程度の炎、1時間浴びていても大丈夫だ。しかし、流石に服は焼けるので、一応前方に結界を張っておく。先程結界をも焼き尽くすと言ったが、正確には「通常の結界は焼き尽くす」だ。私の結界など、傷をつけることもできまい。

ドラゴンの炎が止み、そのまま立っている私を見て他の4人がドン引きする様子を横目に見ながら、私はドラゴンに一歩近づいた。

さっき、私はドラゴンを倒すには殴るしかないと言った。しかし、リテラマリアがあれば話は別だ。全く同じ魔力量で出した魔力を吸収する魔法をぶつけ合うと、相殺されて魔法吸収効果はゼロになる。この理論で言えば、ドラゴンの保有している魔力と全く同じ量の魔力を込めてリテラマリアを放てば、ドラゴンの魔法吸収を無効化することができるだろう。

ということで、思いついたらすぐ実践。王子達よ、悪いが一番かっこいいところは私が持っていくぞ。

「リテラマリア」

私のその言葉と共に、魔法が発動する。リテラマリアによって、ちょうどドラゴンが乗っている地面の辺りが闇に染まっていき、ドラゴンの鱗が徐々に輝きを失っていく。

さて。そろそろ頃合いか。鱗に魔力が感じられなくなったのと同時に、私はドラゴンに向かって軽く魔弾を放った。

ドオオオンッ!

ドラゴンの倒れる音と共に、地上への階段と宝箱が現れる。宝箱……?報酬があるなど聞いたことが無かったが、このダンジョンで一番活躍した私が、有り難く頂くとしよう。

私は、他の4人が来ることを待つことも無く、すぐさま宝箱を開ける。そして、その中にあったのは……

「鏡だな。」

一番に着いた王子が呟く。

そう。中にあったのは手鏡。しかも、とても禍々しいオーラを放っている。

その鏡を手にとってよく見ようとすると……私の顔が映った瞬間、鏡がその魔力を周りに暴走させ……消えた。

「「え……?」」

こうして、多くの謎を残して私たちのダンジョン潜入は幕を閉じるのだった。

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