第7話 ダンジョン潜入!①

その後の試合も続々と終わっていき、遂にダンジョンに行くメンバーが決まった。

名前が分かる人としては、リアム・バルセロナ、ヨハン・デグレチャフ。

後は、女子が赤色のショートカットの人、男子はこげ茶色の髪をした人だ。

「では、試合で勝った皆さんには、これからダンジョンに入ってもらいます。一番深いところまで行き、ボスを倒すと階段が出てきて、そこから出られる仕組みになっています。ちなみに、出てくる魔物は皆さんが倒した魔物の数、進むスピードに比例して出てくる量が増えたり、強くなるようプログラムしてあるので、皆さん、気をつけて進んでください。何か質問はありますか?」

赤いショートカットの人が手を挙げた。

「はい、アイリスさん。」

なるほど、赤いショートカットはアイリスか。よし、覚えた。

「あの、もし身の危険を感じたら出ることはできるんですか?」

「いいえ。しかし、外から先生が皆さんの様子を見ているので、もし危険なことがあれば、先生が直ちに向かいます。それに、ダンジョンは、皆さんの魔法のレベルに合わせて選んでいるので、無事に帰ってこれるでしょう。」

「ちなみに、今回のダンジョンのランクは・・・?」

「Cランクです。」

「ええ?!Cランクって、プロの魔法使いが入るところですよ?!学生レベルじゃありません!」

長いな・・・。早くダンジョンに行きたい・・・。

「大丈夫ですよ。あなた達は、Aクラスです。それに、いざというときはリアムさんやユーリエさんがいますから。」

「・・・」

「それでは、後は質問はありますか?それでは、この階段を降りて、ダンジョンに入ってください。」

一番前にリアム王子、次にヨハン・デグレチャフ、それに続いて皆どんどん入っていく。ちなみに、私は一番後ろである。

全員中に入ると、ドアがガシャンと閉まり、まるでそこには何もなかったかのように、ドアが壁に溶け込んでいった。

辺りは真っ暗だ。まあ、私は闇属性だからなのか暗闇でも昼間のように見えるのだが。

すると、突然赤い炎が現れた。ヨハンの魔法だ。

「おお、明るくなったな。ありがとう、ヨハン。じゃあ、とりあえず歩くか。」

「そうだな。」

こうして、私達5人は歩き始めるのだった。そして、数分間歩いた頃だろうか。沈黙に耐えられなくなったのか、茶色の髪の少年が話しかけた。

「というか、ヨハンって、火属性だったのか。知らなかった。」

「ああ。でも俺は、火だけじゃなくて風魔法も使えるんだ。」

「へえ、いいな。」

「リアム、お前は火、氷、風、土全部使えるだろ!お前のほうが羨ましいわ!」

「え?!リアム様、4属性なんですか?!すごーい!」

・・・・・・やばい。全然話に入っていけない。周りのコミュ力が高いのか、自分がコミュ障なのか。うん、前者だな。私がコミュ障なわけがない。

などと考えていると、

ウォーン!

という魔物の声が聞こえてきた。そして、20匹ほどの魔物が走ってくる。こちらの4人は……怯えることもなく、一瞬でダンジョンに入る前に決めた配置になった。ちなみに、私は配置決めの時に仲間外れにされたので、配置が決まっていない。うーん……誰も何も言ってこないだろうし、邪魔しないよう隅で戦っている様子を見ていよう。

「アイスウォール!」

「ファイアボール!」

ちなみに、このように魔法の技の名前をいちいち言うのは、チームワークを取るためだ。まあ、私は魔法の技名を言うと呪文みたいでかっこいいので一人のときでも言っているのだが。

私の出番も無さそうなので、とりあえずお菓子を食べる。学校の売店で買ったものだが、これが意外と美味しい。結構売れ残りが多いので、もっとたくさんの人にこの美味しさを知ってもらいたい。

そんな事を考えていると、もう魔物が片付いていた。お、意外と早いな。すると、

「おい、お前。」

と、ヨハンが言った。

お前……誰のことだろう。私とヨハンは、お前と呼ばれるほどの間柄では無いしな……などと考えていると、

「おい!聞いているのか?お前!ブラッドリィだ!」

ブラッドリィ……?ああ、私のことだ。これまで、あまり名字で呼ばれることが無かったため、反応に時間がかかってしまった。

「はい。何でしょうか?」

「おい、お前も戦えよ。もしかして、本当は弱いのか?」 

全く、この学校にはこの人のような言うような無礼な人しかいないのだろうか?この私を見習ってほしい。

まあ、でも弱いと言われるのは心外だな。次からは、最深部に行くまで私も戦うとしよう。

「分かりました。次からは私も戦います。」

「次からはって…お前、また次もサボるつもりだろ。お前、入試1位だったんじゃ」

「おい、ヨハン。やめろ。今俺たちがどこにいるか分かっているのか?周りを見てみろ。」

辺りを見回すと、先程の魔物よりも強そうな、鎌を持ったお化けのような魔物ががうじゃうじゃいる。可愛い。王子、教えてくれてありがとう。そして、

「キャー!」

恐怖のあまり呪文詠唱もせずに火の球を放ったアイリスがその魔物に襲われ、足に怪我をする。

あんなに可愛いお化けに、何を怖がっているのだろう。しかし、攻撃してくるというのも事実。ここは、私が魔法で倒すか。

「闇の炎よ、出でよ!」

何か中二病みたいな呪文になってしまったが、仕方がない。何の魔法を使うかは伝わったはずだ。

そして、たくさんいた魔物が黒い炎で燃え上がり、消滅していく。可哀想だが……仕方がない。正当防衛だ。

ちなみに、他の4人は……開いた口が閉じていない。大丈夫か?

「では、行きましょうか。」

こうして、私たちはダンジョンを再び歩き始めるのだった。

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