第6話 初めての授業…
王子が来た次の日、私は朝5時に起床し、窓から外に飛び降りた。魔力上げのトレーニングの一環であるランニングを始めるのだ。
あの後、私の寮部屋に3人の女子が入ってきたのだが、荷物を置いてすぐにいなくなってしまったので、夕食の時間まで本などを読んでいた。そして、夕食の時間(6時)になると、一人で食堂に行って夕食をとった。その時にも軽蔑の混じった多くの視線を感じたが、本当の地獄はその後であった。夕食後、入浴を終え、遂に就寝時刻となったのだが、私が寮部屋に入ると、同じクラスであり、寮部屋を共にすることになる女子達が言い争いをしていた。そして、その内容が…「誰が私と同じ2段ベッドで寝るか」である。結局、じゃんけんで決めたっぽいのだが、負けた人の顔を見ると涙目をしていた。そんなに嫌なのか。可哀想に。(まあ原因は私なのだが。)そして、その後気まずい空間の中で寝たのだった。
この生活を4年間続けるのか……。そう考えると、人との関わりが大嫌いな私でも、悲しくなってきてしまう。まあ、最悪の場合のために、夜逃げの準備でもしておこう。
などと考えていると、もう校舎の外を一周していた。確か、今私は秒速10メートルほどで走っていたから……
一周30キロほどだろうか。意外と短いな。(一周30キロは長いです。この人の基準がおかしいだけです。)それなら、一日4周するか。
そして、私はまた走り出したのだった。
ー数十分後ー
ランニングを終えた私は、窓に飛び乗り、部屋の中に降り立った。私の前には、唖然とした3人の顔が見える。どうしたのだろうか。
「どうしました?」
一応心配している様子を見せた方が良いだろう。
「ど、どうしたって……起きたら窓が割れてるのよ?!アンタがやったの?!」
窓……?ああ、虫の侵入を防ぐための、少し触るだけで割れるような脆い透明な板か。(こちらもこの人の基準がおかしいだけです。)それが割れたぐらいで、何をそんなに騒いでいるのだろう?
「ああ、虫が入ってきましたか。ごめんなさい。後で、虫が入ってこないよう網を設置しておきます。」
社会で上手くやっていくためには、自分が悪いと思っていなくてもとにかく謝ることが大切だ。これで、私の好感度もアップす
「何言ってんの?そもそも、何で窓から出入りするのよ。ドアから出入りしなさいよ。ドアの存在価値が無くなるでしょうが!」
ーーしなかった。というか、この人、面白い
「何笑ってんのよ!」
なんて思ってないです。すいません。
こうして、私は早朝からクラスメイトに説教されるのだった……(窓は後日取り替えてもらいました。)
そして、朝食を終えると、授業する教室に向かう。ちなみに、初めての授業は…魔法実技。しかも、午前を全て使って。しかも、校庭集合ということは決闘でもするのだろうか。
そうこう考えていると、先生が登場して、授業が始まった。
「さて。みなさん、はじめまして。私は、ルーノア・アードリアです。
今回は、皆さんは初めての授業で、しかもAクラスということで、皆さんの実力を知るために特別な授業を用意しました!
今日の流れとしては、まず属性によって二つのグループに分け、一対一で試合をしていただきます。ちなみに、この戦う相手はくじで決めます。試合をしたら、勝った人は他の勝った人と一緒にダンジョンへ、負けた人は負けた人同士で総当たりの試合をしていただきます。
では、まずは風、土属性の人とその他の属性の人で分かれてください。」
やはりそう来たか。多分、属性で分けたのは土、風属性は他の属性と少し攻撃方法が異なるためだろう。ちなみに、ダンジョンとは、人為的に魔物を地下に集めた、まあ要は魔物が出てくる地下迷宮で、魔法学校ではよくお目にかかるものだ。(前世です。)しかし、中に入ったことは無いので、是非勝ってダンジョンに潜ってみたいところだ。
こうして私がやる気を出していると、くじが始まろうとしていた。私もくじを引くと……そこにあったのは、「ルナ・フランシス」という文字。確かこの人は……ああ、そうそう、入試で三位だった金髪の人だ。金髪ということは……光属性か、光、闇以外の全属性を持っているか、か。まあ、どちらにしろ、かなりの脅威なのであろう。私が前世の記憶を持っていなかったら。
そして、遂に決闘が始まる。最初は、私とルナ・フランシスの決闘だ。ルールとしては、
1、物理攻撃は禁止、使える魔法は各属性の魔弾、結界のみ。
2、対戦相手を降参、気絶、または5秒間動けなくした場合のみ、勝利とみなす。
3、希望者は杖を使っても良い。
である。ちなみに、杖を使うと杖の先についている魔石の魔力が加算されて魔法がより強力になるらしい。まあ、邪魔なだけなので私は使わないが。
戦う舞台である校庭の一角に立つと、「ルナ!負けるな!」などという声が観客席(こちらも校庭の一角)から聞こえてきた。すると、今回の対戦相手、ルナ・フランシスが話しかけてきた。
「今朝はお世話になったわね。あなたは完全に油断しているようだけれど、私は、あなたよりも強いわ。」
急にどうした。というか、この人、今朝説教してきた人だ。
「その根拠は?」
「私は光属性よ。見たところ、あなたの魔力は私と大差ない。それに、私は杖を持っているけれど、あなたは持っていない。闇属性は光属性に弱いから、あなたが私に負けるのは確実よ。」
ああ、なるほど。しかし、私はファンタジー小説の最強キャラお決まりの魔力制御をしているんだよな。卑怯な手だが、仕方がない。相手を油断させるのは大事だからな。
そして、互いに向かい合う。が
「それでは、試合、開始ーッ!」
ホイッスルの音が鳴り響く。
さて。今回の試合は、使える魔法は魔弾と結界のみである。ちなみに、魔弾とは、各属性によって効果が異なるビームのことである。このビームに殺傷能力はなく、当たっても吹き飛ばされるだけである。しかし、吹き飛ばされて頭を打ちつけたなどになっても大変だ。ここは、相手の魔力が大幅に減って倒れるまで撃ち合うしかないだろう。
私は、次々と来る魔弾を結界で防いでいった。ああ、でも守ってばかりじゃ駄目か。一応、自分も魔弾を撃ち、防がれなかった魔弾はあの人に当たる前に消滅させよう。
……………………………………………………
魔法を撃つとき、大体の人は手をかざすなどして、その先に魔力を集める。その方が、魔力をどこに集めたらいいのかが分かりやすくて、魔法も容易になるからだ。手をかざさずに魔法を使えるようになるには、長年の努力が必要……
な、はずだった。しかし、今私の目の前にいるユーリエ・ブラッドリィは、一つも手を動かしていない。それにも関わらず、私の魔弾を撃つスピードについていけている。
しかも、時々魔弾も飛んでくるのだが、結界を重ねて張って強化しても、ほとんど防げない。しかし、どれも何故か私に当たる前に消滅する。多分、彼女は私の魔力切れを狙っているのだろう。それなら……と、私は今残っている魔力をほとんど全て杖の先に集めた。
……………………………………………………
何やら大技の予感がする。多分、残っている魔力を全て集めて大きな魔弾を放つのだろう。
すると、彼女の杖の先から、大量の光が溢れ出してきた。そして、眩い光とともに大きな魔弾が飛んできた。
一応、この魔弾は私の闇属性の結界でも防げるのだが、どうせなら最後は面白い防ぎ方をしたい。ということで、私は、迫りくる魔弾を弱めに殴った。
そして、特大魔弾は一瞬で消え去ったのだった。
「え……?あれが、防がれた……?なんで?私との魔力差は小さかったはずなのに……」
ちなみに、私が魔弾を殴ったところは魔弾が眩しすぎて誰にも見られなかったらしい。私の一番かっこいいシーンだったのに……
そして、私の対戦相手、ルナ・フランシスは魔力切れで気絶したのだった。
「勝者、ユーリエ・ブラッドリィ!」
観客席からブーイングは…飛んでこない。みんな、無表情である。怖いな。
こうして、私はダンジョンに潜る権利を得たのだった……
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