第5話 王子襲来

点数発表のところが長くなってしまいました!ごめんなさい……読み飛ばしていただいて構いません。



「それでは、点数を発表します。まず、10位はヨハン・デグレチャフ、筆記が250満点中243点、実技が250満点中250満点、筆記、実技合わせて500点満点中493点です。」

私が心の中でAさんと呼んでいる人だ。あの人、ヨハンというのか。今度からきちんと名前で呼んであげよう。

「次に、第9位はアーサー・スミス、筆記がーー」

眠くなってきた…とりあえず3位になるまで聞かなくていいか。

ー数分後ー

「第3位」

お、来た来た。

「ルナ・フランシス。こちらも満点にボーナス点が追加されます。よって、実技は250満点中263点、筆記は250満点中256点、合計519点となります。」

ん?なんかボーナス点が登場しているのだが?満点は何位だったんだ?

「第2位は、まだここには来ていませんが、リアム・バルセロナさんです。」

「え?!リアム様って……もしかして第三王子の?!」

「はい。」

「キャー!」

なんだなんだ。急に女子たちが騒ぎ始めたぞ。

「あのイケメンのリアム様と同じクラスだなんて……入試勉強頑張って良かったー!」

いやいや、見た目も大事だが、やっぱり一番大事なのは性格だろう。外見が良かったとしても、性格が悪かったら意味が無い。というか、私、久しぶりにまともなことを言った気がする。

「ちなみに、点数は、筆記が250満点中274点、実技が250満点中289点、合計で563点です。」

「キャー!やっぱり、リアム様って頭も良かったのねー!」

よし。そのまま騒ぎ続けろ。そうしたら、私の得点発表は誰にも聞こえない。そのためなら、私はどんな騒音にも耐えられる。

「そして、第一位はーーこちらの、ユーリエ・ブラッドリィ、筆記も実技もボーナス点を全てとり、今回のテストで取れる最高点、300点となります。よって、合計点は600点。この学園でも初めての点数です。」

さっきまであんなにも騒がしかった教室内が、急に静まり返る。

「では、先ほど言った通り、一位のユーリエさんの解答用紙を配ります。」

全員、無表情で配られた私の答案を見つめている。怖い。

「では、これで得点発表を終わります。細かい授業内容などは明日話すので、今日はもう各自割り当てられた寮の部屋に行っていただいて構いません。机の上にある教科書も持っていってください。」

そして、みんな無言で立ち上がり、荷物をまとめている。

いつまで無言なんだよ……

自分の強さはここにいる誰よりも強いことは知っているが(流石に冗談です。)、流石にここまでくると身の危険を感じる。よし。早めに教室を出て、今日は寮にこもっていよう。貴族の多い学校だし、一人部屋だろう。

そして、私はフルスピードで荷物をまとめ、片手にバッグ、片手に教科書の山を持って寮に向かった。

……………………………………………………

あいつがいなくなった瞬間、私たちは話し始めた。

「ウソでしょ……」

「さすがにズルでしょ。ブラッドリィ家って、あの戦うしか能がない、戦闘貴族でしょう?そんな家柄の人が、一位?そんなわけないじゃん。」

「そうだろう。それに、あいつは闇属性だ。ズル以外考えられない。多分、問題の内容を事前に知っていたんだろう。」

「どうする?ズルしてこの学校に入ってきたんだよ?私たちは頑張ってきたのに。理不尽すぎない?」

「確かに。じゃあ、どうする?」

すると、

ガラガラガラッ!

と大きな音を立てて、扉が開いた。そして、そこから入ってきたのはーー金色の髪に、蒼い目をしたーー

「もう先生の話は終わってしまったか?」

リアム様だ。

「は、はいっ!で、で、でも、得点発表だけでしたので、聞かなくて大丈夫だったと思います!」

「そうか……ん?この紙は?私の答案用紙ーーではないようだが」

「そ、それは、一位の人の答案です!でも、見なくていいですよ。どうせズルなんですから。」

リアム様は、しばらくの間答案用紙を見つめると、顔を上げて言った。

「その証拠はあるのか?」

「え?」

「この学校は、実力主義だ。しかし、テストでは「平等」を常に大事にしている。それは、この学校のことを知り尽くしている父上が言うんだ、間違いないだろう。そのため、テストの問題を知っていたなどの…まあ、お前たちの言う「ズル」には厳重に注意しているだろう。」

リアム様は答案を持ち上げて言った。

「それに、この答えはとても素晴らしい。これを考えつく人は研究者でも中々いないだろう。ましてや、14歳でこれを考えつくのは…余程の努力が必要だろう。俺でも理解するのに時間がかかったほどだからな。俺は、逆にここまで地道に努力を積み重ねてきた人の成果を見て、自分よりも頭がいい人がいることを認めたくなくて、理不尽だと叫んでいるお前たちの心の方が醜いと思うぞ。」

「でも!あいつは闇属性なんですよ?!」

「何?それは本当か?それなら、実際に会ってみないと分からないな……よし。すぐに会わせろ。」

リアム様は、何故か目を輝かせながら言った。

「はい。確か私と同じ部屋だったと思うので、ご案内しますね。」

私は、心の中でほくそ笑んだ。これで、あいつも無事では済まないはずだ。

……………………………………………………

私は、寮の部屋で呆然としていた。私の目に写っているのは、2階建てベッドが二つ。そして、机と椅子が複数個。

え?一人部屋じゃないのか?いや、でも、もしかしたら、使用人用のベッドかもしれない。まだ望みは捨てては駄目だ。まあ、とりあえず、現実逃避で渡された教科書でも読もう。

私は、2階建てベッドの2階の方に登って、教科書を開いた。

そして、この教科書簡単だななどと考えていると、急に廊下が騒がしくなった。

なんだなんだ?私の平穏を邪魔する者は許さないぞ?

すると、ドアがノックされ、

「いるか?」

という声が聞こえてきた。聞き慣れない声だ。というか、「いるか」ってなんだ?あの、海にいる哺乳類か?でも、この状況で「いるか」と言うなんて…よっぽど馬鹿なのか?

「おい。いるのか?」

あ、はい、馬鹿なのは私でした。いるかって中に人がいるのか確認してる事だったのか。分かりづらいな。まあ、いいや。とりあえず、扉を開けなくては。

「はい。います。少々お待ち下さい。」

私は、ベッドから飛び降りると、ドアを開けた。

「開けるのが遅い。何をしていたんだ?」

初対面なのに、この言い方はひどいだろう。私は、

「すみません。というか、誰ですか?用がないなら帰ってください。」

と言って、ドアを閉めた。この人とは違って、私は無礼なことはしない主義だからな。きちんと敬語で答えたし、礼儀は100点満点だ。

「あんた!リアム様に失礼でしょ!ドアを開けなさい!」

うわ、同じクラスの人もいたのか。嫌な予感しかしない。というか、名前を聞いても誰か分からなかった。顔に見覚えもないし、本当に誰なのだろう。

そこまで言うのなら、と私は扉をもう一度開けた。

「で?用ってなんですか?」

「とりあえずここでする話ではない。中に入れさせてもらう。」

あ、やばい、教科書散らかしたままだ。まあ、いいか。私の部屋よりは綺麗だし。

私は、扉を大きく開けて、リオン(?)みたいな人を家に入れた。

「……お前、勉強してたのか?」

「初対面の人にお前って礼儀無さ過ぎじゃないですか?別に、勉強はしてません。ただ、教科書を読んでいただけです。」

「無礼なのはお前もだろ。しかし……そうか。一度お前たちは部屋の外にいてくれ。」

ん?クラスメイト集団を追い出した?意外とこの人もいい人なのか?

「……さて。あいつらがお前は入試でズルをしたと言っているのだが、それは本当か?」

「答えません。」

「なぜだ?」

「たとえ私がズルをしていたとしても、私はいいえと答えるでしょう?つまり、今この場でズルはしていないと答えても、私の信用性は上がらない。私は意味の無いことはしない主義なんです。」

まあ、あそこで素直にいいえと答えたほうがこの長い説明をする必要が無くて、楽なんだけどな。

「そうか。フッ。」

だ、大丈夫か?なんか小説の悪役みたいな笑い方してるぞ?

「…面白いな。気に入った。……じゃあ、用は終わったので、これで私は帰る。ちなみに、私の名前は、リアム・バルセロナだ。」

そう言って、彼は扉を後ろ手に閉めて帰っていった。

え?もう?というか、リアムってさっき女子たちが騒いでいた第三王子か?まあ、別に無礼なこともしていないし大丈夫だろう。しかし、何故そんな人が私のところに?結局、用って何だったんだ?

こうして、私に戸惑いを残して、王子は嵐のように現れ、嵐のように去っていったのだった。

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