第4話 入学式、そして……

盗賊二人との楽しい楽しい二時間の馬車旅が終わり、学園に着くと私は盗賊二人をすぐさま学校の警備の人に引き渡した。引き渡すとき、なぜか盗賊だけではなく警備員の人たちも私に怯えている様子だったが、気のせいだろう。などと考えていると、すでに学校の校舎の前まで来ていた。

校舎の前は生徒、そしてその親の姿が多く見られるが、私には親の付き添いがない。

母は私が転生したときにはもう亡くなっていて、父は仕事があるからという言い訳で来なかった。しかし、私の姉のときは仕事がたくさんあっても行っていたので、きっと行く気が無かったのだろう。ちなみに、私の姉は氷属性で、ノルドーム魔法学園を14才のときに飛び級で首席卒業し、現在は王宮魔導師になったらしい。世界トップ5の魔法使いがなれるという、五強魔導師になる日も遠くないとか。ぜひ今度戦ってみたい。

私は人混みの中をすり抜け、今日入学式を行うという体育館に地図を見ることもなく進んでいった。

実は、私はこの学園に学会で前世に一度来たことがある。その時に校舎の地図を頭に叩き込んだので、今こうして迷わず進んでいるわけだ。

そして、体育館に着き、用意された椅子に座る。普通ならばパイプ椅子なのだろうが、この学園の椅子は一味違う。なんと、光魔法で作られた、光輝く椅子なのだ!

その椅子が生徒の人数分(100個)あるので、相当な魔力量が必要だろう。ぜひこれらを作った人と戦ってみたい。

などと考えながら椅子に座ると、私はすぐに立ち上がった。椅子に当たった部分の皮膚に鋭い痛みを感じたのだ。服の上から当たっている部分も痛い。全く、見た目を重視するのは良いが、闇属性の人のことも考えてほしいものだ。

不審な動きをして変に勘違いされても困る。私は、魔力を椅子の表面に集中させて、椅子の表面に闇属性の魔力で厚いコーティングをした。これで、痛みを感じることはない。やっと椅子に落ち着くと、私は改めて体育館を見渡した。前世に初めて見たときは、この広さに驚いたものだ。多分、屋内でも魔法を使うためにはこれだけの広さが必要だったのだろう。

などと考えているうちに、人もだいぶ集まり、校長の話が始まろうとしていた。 

「えー、みなさん。この度は、ノルドーム魔法学園へようこそ。学園と言っても、4年間しかありませんが、その4年間で生徒達は多くのことを学ぶはずです。これからーー」

はあ。校長の話って長いんだよな。聞かなくていっか。そういえば、なぜ入試結果は合否と、点数の合格者の中での順位しか伝えられなかったのだろう。普通ならば、順位ではなく点数なのに。もしかして、点数は学校で直接伝えられるのか?いや、でも、学校で伝えるメリットはーーーそういえば、あった。多分、他の人もいる前で発表されるのだろう。最悪だな。

などと考えていると、

「これで、入学式を終わります。生徒の方々は、各教室に移動してください。保護者の方々は、もうお帰りになってかまいません。」

と言う声が聞こえてきた。

あれ?普通は、国歌とか歌わないのか?まあ、いいや。とりあえず、教室に移動しよう。

そして、教室に行くと、そこには席順が名前で記された紙が貼ってあった。ちなみに、私は、一番前の一番左側だ。しかし、席の表には10人ほどの名前しか記されていない。しかし、100人もいて同じクラスにそれだけの人数しかいないとは……一体どういうことだ?

すると、次々と生徒が入ってきた。そして、5、6人ほど集まった頃だろうか。一人が、

「みんな、入試の順位、どうだった?」

と聞いた。いや、最初に聞くのは順位よりも名前だろ。この人、デリカシーが無いな。誰も答えないだろうと考えていると、次々と

「三位」

「六位」

などと答えている。いや、答えるのかよ。私は、一位なんて言って変に目立ちたくもないし、答えなくていいか。

「俺、九位!今の話を聞いていて思ったんだけど、このクラスって、上位10人が選ばれてるんじゃない?」

と最初に順位を尋ねた人が言った。すると、

「はい。そのとおりです。」

と、先生(?)らしき人が入ってきた。

「まだ一人揃っていませんが、もう話を始めますね。この学校は……実力至上主義という考えを基にしてカリキュラムなどを立てています。」

いや、知ってますけど。今までの流れで大体分かるだろ。そこ溜めるところじゃないって。

すると、

「ええええっ?!」

と言うみんなの声が聞こえた。いや、待て待て待て。みんな、漫画みたいなリアクションしてるぞ。最近の若者は、みんなこんなにもノリが良いのか。それなら、次からは自分もオーバーリアクションをとることにしよう。よし、がんばろう。などと考えていると、

「しかし、この学園の口コミを聞いて回っても、そのような情報は出てきませんでしたが……」

と、さっき最初に順位を尋ねた人が聞いた。これ、毎回言うの面倒くさいな。Aさんとでも呼ぶか。って、Aさん、周りに聞き込みをしていたのか。そこまでして、彼は何が知りたかったのだろう。

「そりゃあ出てこないでしょう。本校のこの制度は、完全に極秘になっていますから。」

「これだけの生徒がいながら、一体どうやって……」

「それは、卒業するときに分かるでしょう。」

Aさんは質問に答えてもらえず、不服そうな顔をしている。

「では、まずは……入試の点数を一人一人発表していきましょうか。」

やっぱりそうか。点数を全員の前で公表することで、生徒の闘争心などを高め、モチベーションも上げることができるからな。

「ちなみに、一位の方の答案用紙は全員分コピーしたので全員に渡します。」

は?性格悪すぎないか?いくら生徒たちのモチベーションが上がるからと言って、そこまで公表する必要はないだろう。テストの答案用紙なんて公表したら、学校で目立っていじめられて、魔法の研究をしている場合じゃなくなる流れが見えるぞ。折角魔法に没頭できると思ったのに………。

こうして、私の地獄の時間が始まるのだった………

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