第3話 人質

縄で手首と足首を縛られ、首元に剣を向けられながら、私は人質にされるまでの経緯を振り返っていた。


私は、あれから10年間、運動をしたり、リテラマリアを使って魔物から魔力を吸収したりして、ひたすらに魔力を上げていった。

そして、ついに世界随一の魔法学園と呼ばれる、ノルドーム魔法学園の入学試験に一位で受かるまでの実力になった。

まあ、一次試験の筆記は前世の知識もあり、ほとんどチートなのだが、二次試験の実技は10年間の努力の賜物であろう。誇っても良いはずだ。

まあそんなこんなで、今日は学園の入学式に馬車で優雅に行くはずだった、のだが………

学校に向かう途中で盗賊に狙われてしまった。そして、今の状況である。

護衛も、迂闊な真似はできず、盗賊の言うままに武器を捨てる始末。

「あの、すみません。剣を離していただけますか?」

「喋るなと言っただろう!次話したら、腕を切るぞ!」

全く話が通じない。実力は隠したかったのだが、仕方がない。

「本当に切れるんですか?」

「馬鹿にしてるのか?一度痛い目を見ないと分かんねえみたいだな!」

盗賊は、ギラリと目を光らせて、私の腕に剣を叩きつける。

バキィッ!

大きな音をたてて折れたのは、私の腕……ではなく、剣だ。ちなみに、私は痛みすら感じておらず、ノーダメージだ。

「なっ?!」

まあ、先に攻撃してきたのはあっちだし、こっちも攻撃して良いだろう。最悪、正当防衛だと言って言い逃れよう。

私は、手首に少し力を入れて自分を縛っていた縄を引きちぎると、すぐさま魔法の鎖で盗賊を拘束する。

「あなたの目的は何ですか?」

「つッ………」

盗賊は、何とかして拘束から逃れようとしている。ちなみに、この鎖は暴れれば暴れるほど拘束が強くなるため、逆効果なのだが。

まあ、それを教える義理も無い。

「答えてください。」

「はあ……わかったわかった、目的は金だよ。馬車に乗ってる奴は大体貴族だからな。金もたくさん持ってると思ったんだよ。でも、もう拘束されてるし、金も奪いようがないよな。はあ……仲間を連れてくれば良かった…」

「私を騙せると思っているんですか?」

私は、盗賊の顔を覗き込み、微笑みながら言った。

「仲間、もう一人いますよね?」

……………………………………………………

「う、ウソだろ………」

俺は、街で武器を売っている、ロイド=フィヨルド。

最近、武器を買うお客さんが少なくなり、売り上げが下がってしまった。そのため、昔からの幼馴染、カイザーと盗賊業を始めることにしたのだが、一発目からこんなのを選んでしまった。

手紙を届けに来たフリをして、馬車の近くまで行ったところまでは良かったんだがなあ……

などと考えていると、

「はあ……仲間を連れてくれば良かった…」

と言うカイザーの声が聞こえた。

あいつ、俺を逃がそうとしやがって……幼馴染を見捨てるわけがねえだろうが!

そう考えると、俺は、無我夢中で走って御者の首にナイフを当て、

「おい!早くそいつを開放しろ!」

と叫んだ。すると、

「私は今この人と話しているんです。黙ってください。」

と言われた。そして、次の瞬間。手に持っていたナイフが黒い炎に包まれ、ボロボロと崩れだし、俺は後ろにふっ飛ばされた。

受け身を上手く取れなかったため、体中がズキズキと痛む。

なぜだ……なぜ、こんなにも強いんだ……

「カイザー………」

そう呟くのと同時に、意識は闇の中に落ちていった。

……………………………………………………

「よし。」

あの後、私は気絶した方も回収して、両方とも馬車に放り込んだ。

そして、自分も馬車に乗り込む。横に盗賊が二人いるので(しかも意識がある方はずっと自分の方を睨んでくるので)、居心地は良くはないが、思想に耽ることぐらいはできる。問題は無いだろう。


こうして、盗賊事件は解決するのだった。

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