第4話 仕事しないと。
ライさんに教えてもらったのだが、この世界は細長くて、西の端に人間が、東の端に魔王軍が住んでいるみたいだ。
真ん中の方にいる生物は、ほとんどが雑魚モンスターと討伐隊の人らしい。
討伐隊というのは、この世界唯一の王国、「クーダ統王国」が派遣する、魔王軍を人の住むこの世界の西端にこさせないための軍だそうだ。
魔王討伐をするには、討伐隊に入って特攻軍を作り上げるか、国の許可を受けて勇者一行となるかのどちらからしい。この面倒くさいシステムは、魔王討伐に失敗したときの被害を起こさないための措置だそうだ。
要するに、魔王討伐は討伐以前に国の許可を取ること自体が難易度が高いということらしい。
さて、どうしたものか……
※
「早く仕事を見つけたほうがいいですよ」
ライさんの家に転がり込んで3日目、仕事帰りのライさんにとうとうこんなことを言われた。
この世界の魔物は、だいたいを討伐隊が倒しているので討伐クエストなどは全く無いみたいなのだ。
冒険者でお金を稼げないとなると、普通の仕事につくしかないのだが――……
「俺は冒険者として魔王を倒すためにこの世界に来たの!サラリーマンするためじゃない!!」
「その愚痴何回目ですか……もうさすがに聞き飽きたんですけど。」
俺が転がり込んだせいで作る羽目になった2人分のご飯を作りながらライさんは言う。
「すみません……。けど――……」
「はいはいはいはい。わかりましたから、お風呂入ってきてください!」
ここ3日、ずっとこんな感じだ。ライさんのほうが年上みたいだ。実際は俺のほうが十歳ぐらい歳上なのに。
※
「はぁ〜〜〜、いい湯だったぁ〜」
と言いながらライさんが作ってくれた夜ご飯の席に座る。
「そうすけさん、工場で働くのはどうでしょう?」
「そ、そうですね……」
どちらかって言うとセールスマンとかの方がいい。わがままだけど。
「私の場合は、最初半年ぐらい工場で働いてましたよ!だって異世界から来てるので身分証明ができないのですから。」
そうだった。
日本でもそうだが、身分がわからない人は雇ってもらえない。そして、俺は絶賛転生中。つまり身元が全く証明できない。
そんな事を考えているとライさんが言ってきた。
「私の場合は稼げてからお金に物を言わせて身分証を作ってもらいましたけどね!」
この人一人にして大丈夫だったのかな?笑顔で拳銃向けてきそうな怖さがあるんだけど……
「そ、そうですね……」
とはいいながらも、身元不明で雇ってもらえそうなところは工場しかないよね……
「それじゃあ、何かの機械作成系の工場にしますよ。何がありますか?」
ライさんが求人パンフレットをめくり始める。目がすごくキラキラしてる。いや、そんなに働いてほしかった?
「えーっとですね、機械系なら、『デストポインター』の制作が一番楽じゃないですか?」
「なんですか?その『デストポインター』って?」
「えーっとそうですね、爆破魔法の方向指定をする機械って言ってわかります?」
今爆破魔法って言った……?言ったよね?ま…魔法?
「…………待ってください。この世界、魔法があるんですかぁ!」
「あれ?知りませんでした?」
「いや、言ってもらってなかったらわからないですよ!使ってるところもみたことないですし。」
「異世界=魔法って認識の人の一人だと思っていたんですが……。ですけど、日本で言う魔法と違って、この世界の魔法は何を使っても威力を制御できないんですよ。だから、日常生活ではあんまり魔法を使いません!…………もしかして、種族超混も知りません?」
「なんですかそれは……」
「まじですか…………。たしかにこの世界に来てからそうすけさんはほぼヒキニートでしたからね……。」
「言い訳しますよ!言い訳ですけど、前世でやっと週休二日を貰えたばっかりなんですって!だから休……」
「とりあえず、明日は私も休みなので雇用契約もらいに行きますよ!ごちそうさま!」
と言い、お風呂に入ってしまった。
この世界、魔法が使えるのかぁ……そういえばライさん、「種族長官?」違うなぁ、「氏族交換?」違うなぁ……。あれって何なんだろ?
とりあえず寝るか。おやすみ。
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