第3話 ライさん、意外と先輩でした。
結局あのあと水道を貸してもらい、お腹を洗って、この世界の服一式をもらった。
この世界の服すごい。ライさんによると、寒いときは勝手に発熱して、暑いときは吸熱するんだそう。今はほんのり冷たい。
「ライさんはどの世界出身ですか?」
そう聞いているのはライさん(ライさん一人の家だった)の家の居間でゆっくりさせてもらっている昼下がり。
「そうですね~、記憶にある中では最初は多分あなたと同じ日本だと思いますよ」
「あ、日本なんですか!」
「そうですよ。まぁ、なんだかんだあって人生やめてきたんですけどね〜」
そう言って、ライさんはいつ淹れてきたのかわからないコーヒーのようなものをすする。その人生をやめた原因は掘り下げてほしくないという気配をまとっている。まぁ、どんな人も自分が自殺したらその理由なんて言いたくないよね。
「というか、名前を聞いてませんでしたね。あなたのお名前は?」
「あ、
「私の日本にいた頃の名前は『
「る、ルールー???」
「はい。ルールーです。あ、安心してくださいね?この世界の人達の名前はもう少しまともですよ!」
よくわからないけど、この名前になったのは、日本に住んでいたときでも今でもないらしい。
「関西の人ですか?」
「いや、生まれが神奈川で育ちが東京ですね〜」
「育ち」というときに一瞬表情に陰が横切った。よくわからない人だ。言葉ははねるように軽いのに、たまに表情に陰ができる。色々と苦労してきたんだろうな。
俺としてはとりあえずフレンドリーな人でよかったって感じかな。
「そうですか……俺、奈良出身なんですよ」
「あの大きくて古い大仏がある?」
「そう、その大仏で有名な奈良です」
「大阪の横のあの奈良県ですか。行ったことないですけど。」
「そっちのほうがわかりやすいで……行ったことないんですか!?」
といいながら横を見ると、ライさんが口元を押さえながら笑っていた。からかわれた……?これがイケメン効果?
からかわれてもそんなに嫌な思いをしない。ライさんの人格も影響してると思うけど。
「フフッ引っかかりませんでしたかっ…」
「…………いつまで日本にいたんですか?」
ライさんが首を傾けながら数え始めた。
「えーっと、ここに2年でしょ、アケニに半年、その前にちょこちょこいたから…………ざっと3年前でしょうか。」
「…………っ、いろいろな世界にいてたってことですか?」
「はい、ざっと20個ぐらい。」
異世界転生にかけてはライさんのほうが年月でも転生回数でも先輩だった。
というか20個もいろいろな世界を行き来するってことは……
「あの少女女神と友達かなにかなのかなぁ。意外とロリコンだったりして」
「……何か言いました?」
「いや、なんでもないです。」
こうして穏やかな時間は過ぎていくのでした。
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