第7話

「はいチーズ」

 パチャ、と、カメラの音が鳴る。りあんは、品の良さそうな顔でこちらをじっと見ていた。

「撮れたよー」

 私が言うと、りあんがこっちに走ってくる。

「みーせーて」

「ほれ」

 りあんは自分の写真を見て「おー」と言った。そして、何度か頷く。中々可愛く撮れていると私も思う。

「これを貼るのか、もっと可愛いほうがいい?」

 りあんがそう聞くので、少し可笑しくて笑ってしまった。

「大丈夫じゃない?十分可愛い」

「だよねー!」

 りあんがそう言った。なので、私はこの画像をパソコンに移すことにする。


「できました…っと」

 これで一次審査の応募はできるだろう。りあんにも一応見てもらうと、超ナルシストな回答が返ってきたので、これで応募する。

「りあんがクリックする」

 りあんがそう言って、マウスをよこせと手招きをしてきた。

「どぞ」

 私は大人しく渡してあげる。りあんは、「ここ?」と聞いて、私は「そこ」と言う。

「えいや」

 りあんがマウスを精一杯の力で押したようだった。

 パチッ。

 パキ。

 そんな音が鳴ったのも今だ。

「あーーっ、待って私のマウス!」

「壊れた!!」

 りあんが叫んで、私も叫んだ。

「おい、りーあーんーっ、何してんのよ!」

 本気で怒っているわけではもちろんなく、笑いを含んだ声で私はそう言った。何が可笑しいのか、りあんも隣で笑っている。

「ごめんなさい!」

「いいよ!」

 私はマウスをりあんから奪って、少し見てみる。右クリックが出来なくなっている。どれだけ強い力で押したのだろうか、と思う。

「うわっ、見事に」

「ごめんね!」

「はいはい、明日マウス買うのついて来てよ」

「行くー」

 買い物についてくるのはいつものことで、別に罰みたいな意味はない。私は一息ついて、

「子役なれたらいいね」

 と、りあんに言っておいた。りあんは目をキラキラさせて、頷きまくっている。

「ねえ、マウスとパソコンってどうやって繋がってるの?」

「知んない」

 私は言った。

「買いに行った時に説明書でも読んでみれば?」

 とも。

「わかったー」

 りあんはそう言って、私の膝に登ってきた。

「いたた、重いっつーの」

「大丈夫!」

 りあんがそう言った。言うとしたら私のセリフだよ、と心の中でツッコむ。

「大丈夫じゃないってば、もー降りて」

「いやだ!!」

 仕方なく、膝に乗ったりあんの頭にチョップを食らわせておくだけにする。

「今から勉強したいんですけどー」

 そう言って、私はめげずにりあんを降ろそうとする。りあんは離れてはくれず、

「りあんもするーれいんのやつ」

 と、言った。

「無理無理、高校数学はまだ早いよ」

「なーんーで!」

「りあんは算数やんなきゃでしょ、小学校のやつ」

「一緒にやって!」

「なんでよ、今から高校数学するってば。説明自分で読めるでしょ?」

「でもれいんと一緒にやった方がいい!」

「とほほ」

 私の高校数学の夢は消えて、りあんの勉強に付き合うことになった。りあんを抱いて、彼女の部屋に行く。

「今日は分数同士の計算をやります」

 りあんがそう言って、教科書を開く。私のお古だ。

「どうやるんですか!」

「自分で読めば?」

 私はそう返事をする。読んで習得することをして欲しいと、私はずっと思っていた。

「ほらここ…説明あるよ」

 りあんはじっと文字を見つめてから、

「るほど」

 と言った。

「ほら、自分でできるんじゃん」

 私はりあんを褒める。りあんは「説明聞いた方が楽しいけど」と、呟いた。

「確認問題1、やってみれば?」

 こりゃ簡単だわ、と私は心で思いながら、解かせてみる。

「えー…、答えは13分の9です」

「正解。これ簡単すぎたでしょ。確認問題7行こうか」

 少し難しめの問題を選んでみる。通分しなければいけないため、りあんに暗算は少し厳しいかもしれない。

「下の数字を揃える?」

「うん」

 少し黙った後、りあんが

「10分の3かな」

 と、言った。

「お、すごいじゃん。正解正解」

「いぇい!これで高校数学もできる?」

 りあんがそんなことを聞くので、

「出来ない」

 私はそう言ってやった。

「まだまだかー」

「まだまだだよ」

 そう言って、二人で笑った。


     ーーーーー


読んでくれてありがとうございます

大変遅くなって申し訳ありませんでした

٩( 'ω' )و

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近世界より 岩里 辿 @iwasatoten

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