第5話
「3の3乗っていうのは、3を3回掛けるってこと。上に小さい数字で3って書いてるでしょ?大きい数字を小さい数字の数だけ掛けるの。つまり、これの答えは27」
私は紙に『3の3乗=3×3×3』と書く。
「分かる?」
「わかる」
私はじゃあ、と言って、『4の5乗=』と紙に問題を書く。
「これはなーんだ」
私は一足先に1024と答えを出して、
「…256?」
りあんはそう言って首を傾げる。
「あと一個四掛けなくちゃ」
私がそういうと同時に、
「1024!」
「オッケー、正解っ」
私たちはハイタッチを交わす。
「じゃあ、ルートの説明に入るよ」
私はペンを握って、紙に『ルートとは』と書いた。その隣に、『√25』とも書く。
「ルートっていうのは、何かを二乗した数を表すの。つまり、√25は?」
先程書いた文字を示しながらそう言った。
「5」
「すんばらすぃーです」
私はそう言ってりあんの頭を撫でた。
「すんばらすぃー!」
りあんもそう言って自分を褒め称えた。
その夜。
ママもパパも仕事なので、私だけのご飯タイム。その時突然、りあんがこんなことを言い出したのである。
「りあん、子役やりたい」
少し恥ずかしがった様子で、そう言った。
「子役?どうやってなるの?」
私は一応どこまでしっかりとその仕事について知っているのか聞いてみることにした。
「佐倉っていう事務所で子役応募してるみたいで、対象が四〜十二歳の女の子だったから。りあん、ずっとやりたいと思ってたの」
「そうなんだね。どこで受けれるの?」
りあんの顔が突然パッと明るくなる。いいんじゃないかな、と私が思っていることを見透かされたに違いない。
「佐倉撮影スタジオだって!撮影スタジオって名前だけどおっきいホールもついてるみたいで」
りあんは興奮しているからなのか、早口で捲し立てる。
「それで、それで、一次審査の日が、八月二六までで、二次審査は九月十日っ」
「あと一次審査一週間やん」
私は少し焦る。何か準備をしなければいけないものもあるだろうし。
「お願いっ、れいん、手伝って!!」
りあんが必死に頼み込んでくる。
「そのつもり。ママに連絡しておくね。必要なこととかは自分で調べたりして、用意しておくこと。応募とかは私がやるけど。精一杯頑張るんだよ」
「うん、ありがとうれいんーっ」
嬉しさのあまり声のトーンがとんでもなく上がっている。もはや叫び声だ。
「ご飯食べ終わったら準備しよっか」
私はにっこり笑って、ご飯を再び口に運びだす。りあんはすっかりご機嫌で、鼻歌混じりに、大嫌いなレタスを口に運んでいる。
「まずい」
笑顔でそう言っていた。
ご飯を食べ終わった頃。
「ようし、まずママに連絡しまっせ」
そう言って、私はLINEでママにメッセージを送った。
『りあんが子役のオーディション受けたいって。私がちゃんとそのことは見るから、やらせてもいい?』
きっとすぐに既読はつかない。仕事中はスマホを見れないそうだから。
私の部屋に二人で移動する。パソコンを使うためだ。りあんは自分の薄茶色で長い髪をくるくるとねじりながらついてきた。
子役になるんだったら、それなりのルックスも必要だろうと思い、私はりあんを横目で見てみる。整った顔立ちに、大きなクリッとした目。長い栗色の髪に、程よい血色の肌。太陽のような笑顔。
可愛い。姉ながら感心してしまう。
「よし、まず一次審査のことから調べてこ」
「イエッサーッ!」
私はパソコンを開いて、『佐倉オーディション』と検索を入れてみる。
「これこれ」
りあんが画面を指で指した。
「これね」
私はそのサイトをダブルクリックする。すると、可愛い男の子がこっちをみてにっこりと笑っている画像が表示される。さすがは子役。表情作りが半端なく上手い。
「これ…かな、子役オーディションについてってある」
「それー」
「…あ、一次審査はここで応募するんだ」
『四歳から十二歳のお子様を対象とし、佐倉芸能事務所では子役募集をしています。一次審査と二次審査があり、一次審査はここのページからの応募を受け付けております。二次審査では、佐倉撮影スタジオにお越しいただき、面接による審査を致します』
それから、私は書いてある文章を片っ端から読み尽くした。
ママが連絡をくれて、それを見て私たちは大喜びをした。
『子役?いいんじゃないの?お金かかるんだったら言ってね』
そんなことが書かれていた。
「よっしゃ、りあん。子役に向けて頑張るぞっ」
「やったあああ!」
りあんは、嬉しさに飛び跳ねていた。
そして、りあんはその夜、嬉しさのあまり寝られなかったそうな。
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読んでくれてありがとうございます
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(^∇^)
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