第24話

桐谷と天海がクレープを頬張っている時、

相千奈は一人、暗い地下道を歩いていた。


千奈は背中まで伸ばした長い黒髪を後ろで束ね、ポニーテールにしている。

いつもは結んでいないからか新鮮に思える。


ふぅ、と千奈は心を落ち着ける。

(大丈夫、きっと大丈夫。)


と、自分に言い聞かせるように心の中でそう唱えた。

すると後ろから


「あら、逃げずに来たのね。」


と、嘲るような少女の声が聞こえる。

振り向きつつ千奈は


現真似うつつまい…」


と、千奈は忌々しそうに睨む。

ふわふわとした茶髪の長い髪をたなびかせながら、ふん、と真似は鼻で笑う。


「無駄な話をする気はないわ。さあ、始めましょう。」


その言葉と同時に真似は千奈を取り囲むように分身する。


(影法師ドッペルゲンガー。この異能は本当に厄介ですね…)


異能都市第十位 現真似の異能は影法師。

自分や他人を作り出す(影の様なものなので一定のダメージを与えると消えてなくなる)異能だ。


(…まずは本体を見つけなきゃ。)


千奈は自分のシールドを大きい剣の形に構築し、影法師たちを薙ぎ払う。

ブォン!と風を斬る音と共に影法師は消えていく。


(本体は…居ない!?)


そこまで考えた時、千奈の後頭部に強い衝撃が走った。


(後ろ…だった…)


倒れつつ後ろに剣を振るう。


(当たった!)


だが、そこに居たのは影法師だった。

笑いながら煙のように消えていく影法師に少し腹を立てつつ千奈は


「逃げて不意打ちしてばかりですね!第十位はその程度の戦い方しかできないんですか!?」


しかし真似は何も言わない。

何も言わずに影法師を増やしていく。


(どうしよう、このままじゃ防戦一方…どうすれば…)


千奈が考えていると突然影法師達がこちらに向かって走ってくる。


(一斉攻撃…まずい。)


影法師達が一気に攻撃を畳み掛けてくる。


(あ、これ…盾間に合わない…)


バカスカと千奈は大量の影法師達に殴られる。


「あがぁっ!」


真似は千奈に盾をはらせる気は無いようだ。

ふふふと笑いながら真似は


「ああ、楽しい、楽しい楽しい!こうやって圧倒してる時が1番楽しいわ!」


その時今まで誰もいなかったはずの真似の後ろから足音が聞こえてきた。


(誰よこんな時に、まあ、見られちゃ仕方ないわね。始末しないと。)


後ろを振り向くとそこには、

異能都市第一位 橘神楽がいた。


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