第12話

あれから3日何も無かったなぁと桐谷は適当に考える。

本当に何も無いのか?いや、宿題はあるのだがやる気はないようだ。

桐谷は3日を振り返ってみる。


1日目

また敵が来るのかと思い身構えていたが何も無い。


2日目

食料が尽きたので買い出しに出かける。


3日目

本当に襲いかかってこないなぁとか思いつつ牛丼屋で腹を満たす。


そう、敵が来ないのだ。

その方が安全であることに変わりは無いが。

桐谷は考える


「今のとこ俺たちは負けてない。このまま戦い続けたらいずれアクアの言っていた‪”‬アイツ‪”‬が誰かわかるはずだ。だからこそ手下をこちらに送らないのだろう。」


そこまで考えたところで不意にインターホンがなる。


「入るわよー」


聞きなれた少女の声

そう、天海恵みだ。


「どうした急に、なんか用か?」


とは言ったものの桐谷は何となく分かっている。


「‪”‬アイツ‪”‬の事なんだけど。」


だろうな、と桐谷は思う。


「誰も来ないのよね。だからこっちから仕掛けない?提案があるんだけど。」


ほう、と桐谷は相槌を打つ。


「異能都市第9位 絶対的探究心アルティメットサーチ。聞いた事くらいあるでしょ?」

「そりゃ第9位だ、聞いた事くらいはあるけど…」


桐谷はそこで言葉を区切る。

その様子に気づいた天海は


「分かってるわよ、だからあくまで提案よ。」


そう、異能都市第9位 絶対的探究心 は能力名だ、なぜそう呼ばれているのか、簡単な話だ。

誰も彼の名前を知らない。

顔も居場所も何も分からない。

分かることと言えば、彼の異能は絶対的探究心。

その異能は相手の弱点から居場所 顔 名前 身長 性格 クセ 異能 経歴 過去の記憶 色んなことが分かる異能だ。

しかも単純な戦闘力だけで第9位の座に居るらしい。

さすがは100万人の中の第9位と言ったところだ。


そんな彼を味方につけるなんて袋いっぱいにある塩の中から1粒の砂糖を見つけるよりも難しい。


桐谷は苦笑しつつ言う


「そりゃ、味方にいたらすげえありがたいけどさ、探すつっても100万人はいるんだぜ?この都市。」


「やっぱそうよねぇ、もう異能審判に任せちゃわない?」


桐谷は考える。天海の言うことは正しい。

異能審判は学生と言えど異能も体も心も鍛えてる事件のプロだ。任せておけば安心と言ったところだろう。

桐谷が口を開く


「けど、アクアに頼まれたんだ、倒してくれって。確かにアクアがやった事は間違ってる、だけど…だけど、平気で人にあんなことさせて最後に溶かすような、そんな異能の使い方間違ってる。アクアみたいな、困ってる人を助けれなくて何が異能力者だ。」


「けど、プロの力がないとここからは無理よ。絶対的探究心の力がなくても、せめて異能審判の力は借りないと。全部任せるんじゃなくて一緒にってことよ。」


桐谷は黙って頷く、泣いた子供のように。

しばらく、沈黙が続く。

桐谷はようやく口を開く


「異能審判を説得、そして絶対的探究心を見つけて味方につける、まずはそこからだ。」


ええ、と力強く天海は頷く。



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