list1:貴方の心
目を覚ますのが遅かった。ああクソ、酒のせいで名前が思い出せん。えぇと、
「ファルノ、あいつ─エリート型って何で在るんだ?」
「それを問われましてもね、分かりませんよぉ、政府の考える事はっ。
でも、言えることはただひとつ、ボクの代用品ってこと。彼含めて彼四人、エリート型がいる。エリート型の中で彼の存在はトクベツ世界に認知が広まっているが、 彼の認知度よりボクの方が力が強い訳。...あと仲、良かったし?よく事件の真相に問い詰めたりしたさ、尋問とか。
元を言えば、ボクら二人が居てこそ、こーんな廃れた緑のプリント基盤な時代の流れに抗えたんだよ。しかし、アイツは...その力を、格を、何も知らない警察官にボロぞうきんの様に扱われた。格を見せつけていれれば、アイツはあんなことをしなくて良かった...これもプログラムされたAI生なんだろうね。」冗談を交えた筈のファルノの目は切なく細かった。本当はファルノ...アイツが好きだったんじゃないのか?と聞きたかったが、あの目をされては問うものも問えない。
「あー、もういい暗い話はナシだ。頭痛が悪化する。」
「あ、頭痛かったんだ。ごめん」
「気にしないで。」
大きい雨粒が屋根に当たると同時に、朝食を終えた。
「あ゛ー...今日は動けねぇな...」
「...ボクがなんか作りましょうか、おやつとか」
「はは、もう十時のおやつにする気か?」
「うん、チョコケーキが食べたいなと思って。」
「小麦粉、あったはずだぞ」
「............あったぁ!!」
「私も手伝うよ」
「レイは寝てなさいよ」そういえば、最近私に愛称がついた。「レイ」。レイティスは長かったからな、愛称がつくのは当然だと思う。だから私もつけた。「ファル」って。
「嫌だよ、手伝う」
「頭痛くなっても知らないからね」
小麦粉とか、薄力粉、バター、砂糖、卵、板チョコ、生クリーム。デコレーション用にアラザンとかいろいろ用意した。こんな機械なご時世だから、チョコ類はあんまり美味しくないと思う。でも小麦粉とかはよくできてると思う。いつも毎年一人二人、働き手が失ってく。AIの所為だ。
だから味が悪くなっていく。前だってそうだ。オムライスがまずかった。全く卵の風味がしない。
「レイ!面倒くさがらないで、ちゃんと量って!一グラムでもミスれば見た目が悪くなる!」
「見た目はどうでもい
「映え!ブログにアップすんの!」へぇ。ブログなんてやってたんだ。初耳。後で見ようかなぁ?と思うのと同時に、ファルに対して、「どうでもいい」は禁句になった。
「レイ、混ぜはしっかりできるんだね」
「見下さないでください」AIのクセに生意気。
「薄力粉!やりたい!」
「どうぞ」子供の癇癪かなんか?
「型流ししたい」
「どぞ」
「オーブン入れるよ、チョコ突っ込んだ?」
「うーい」ファルはやる気が無さそうだ。飽き性でしょこの人
「火傷気を付けてな」
「うんー!」
「よし、これで後は冷ますから...少し休憩」
「んへ、良くできたと思う!...ねぇレイ、ボクと居るの楽しい?」
「回答はイエスだ。ぼっちで旅するよりふたりでデコボコやってた方が楽しいさ。...また暗い話か?」
「...やっぱボク、アイツのこと好きだったかもしれない。れんあ...友情的に」別にいいじゃん、と投げかける。
「なぁ、隠さなくてもいいでしょ。お互い相棒でしょ?」
「じゃあ...うん...そうだよ、レイの言う通り。
彼が好きだった。立ち向かう背中がカッコ良かった...ボクをいじってくる姿も面白くて好きだった...のに...」
「のに?」
「ボクは...本心を...伝えられなかった...だから、別の部に行った。それっきり、会えてなかった。伝えられてたら、まだまだずっと居れた...。もしかしたらだよ、ペア以上の関係になれてたかもしれない。でも、あのボクは勇気がなかった...」
「...別の世界って、いいよな。」
「?」
「犯した過ちをしなければ、と考えれば。こんな泥棒もしなくて良かったはず。あんな奴らと、鬼ごっこなんて無かった話だ...。」
「レイって、本当は、」
「ああ、この話は止めだ。この後のことは酔った私に聞いてくれ」そういって会話を中途半端に終わらした。
「歯切れが悪いなぁ...」
「レイ!お前クリーム塗るの下手くそ過ぎるだろ!?」
「そういうファルだって、イチゴの配置よく考えてないじゃん!」
「うっわ、あれだけ映え意識してたのにクリーム出すの下手くそ~」
「あーはいはい、ブログ出すのやめまーす」
「止めろとは一言も言ってない、被害妄想すぎ」
なんか変な口論とか争いとかしてたけど完成。
「...おいし。」
「だろ?よく考えれば今、ここで二人いる方が楽しいだろ?アイツよりも、こっちの方が愛はあるぞ。」
「...それでボクの心奪えるとでも思ってんの?...奪われたけどさぁ...本当にレイってそういうのだけは一丁前だよね。そこだけ卑怯な怪盗じゃないか。信じられない。」
そうして、彼の心を奪うことができた。しかし、付き合うと迄は考えない。機械に恋ができないからな。ふんわりぽかぽかムードになってきたところで、腹一杯になり寝てしまい、本当のことを伝えられずにいた。
...いや、暫く伝える必要は無さそうだ。
electronic warfare 2ru @2ru
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