乱射

「はぁ...大人しく渡せばいいのに。」ユウイチの溜め息が大きくなってくる。

「嫌がってる事をやらすのはさすがに気が引けるな」

「そこだけは人間らしいわね、中途半端。」 

「まぁ、中途半端でもいいんじゃない?人間ですもの」

「いい加減にしろ、次喋ったら撃つ」おお、怖い。さすが隊長。

「全員で一人を責めるやり方は流石におかしi」

殺意の込められた弾が耳の近くで鳴り響く。

玄関近くだ。危ない。耳に穴が開くところだった。隊長は恐ろし...いや待て...これは隊長カイリの弾じゃない...副隊長リートの弾だ...!

荒々しい息遣い。怒り以上の表情。銃を持っている右手はとてつもなく震えている。私は彼の怒りを買ってしまったのか。彼の体ではアドレナリンがひどく分泌されているだろうな。気を付けなければ本気で命を奪われる。


隠れ家は見つかるわファルノは狙われてるわ...もう大変...私の所為だけど

ここ最近手に入れた護身用のグロックを二発。続いてリートが、重なる様にデザートイーグルを三発撃ちやがった。あぶねぇ、弾が耳をかすった。あと少しズレていれば耳に穴が開いてしまう。穴空きピアスか?はは、つまんな。

低レベルのボディーアーマーなら直ぐ様貫通する銃だ。かなり(値段)高そう。


ガレージのシャッターがヤバイことになってる。穴が開きそう。誰だよ、ベクターを撃ってる奴は。三人はいるな。それ以上かもだが...

シャッターが完全に閉まってしまう前に滑り込みでガレージに入ることに成功した。よし、さっさとファルノを連れ出そう。もう一台バイクを用意してんだ。バイクなんか、そこら中で手に入るから問題はなし。...まぁ、値段は問題ありだけどな。盗めばいいんだよ。良くないけど。


...やべぇ、手が震える。まともにキーボードを打てない。ひとつ、ふたつ...みっつ...穴が開いていく。助からなかったらどうする...死んだらどうする...!死ぬのは私の故郷だけにしてくれ!

____よっしゃああ!開いた!ファルノを抱え、裏側の窓から飛び降りようと決意した。下に部隊の下っ端がいるな。どう行けばいいのだ......

背中に冷や汗が伝う。それは緊張と死に対する不安という理由の汗だろう。

いいや、強行突破だ。下っ端には申し訳ないが、踏んでしまおう。相手は盾を持っている。それを踏んでいけばなんとかなる。強引すぎるが、私ならできる気がする。父親に「俺より上の怪盗になれるぞ」と言ってくれたのだから。


ええい!行っちまえ!!!


思いっきり飛び降りた私にビビったのか、全員退いた。まだまだなのか、それとも何かを仕掛けるつもりなのか。分からないが、今は分かる必要はない!着地するとき、骨折しなくてよかった。猫のように飛び降りる事が出来た。クソッ、キャリーが撃ってきた。流石にキツいよな、この距離は。おっと、回避成功。ついでに手榴弾を木の影で仕掛ける。後ろに少しの林があってよかった。たいした怪我はしないものの、煙の量が多い。目眩ましと言うものだろう。

林の奥にまた、小屋がある。そこにもう一台、バイクを入れてあった。(ちょっと恥ずかしい痛バイクだけど)それを使おう。ライフはそれしか残っていない。ガソリンは入ってる。よし、出発。


勢いよく高速に入り、誰もいない道路の真ん中を走る。あれま、相手は雨宮ユウスケでしたか。青と黒のバイク。無言でベクターを撃ち抜く。護身用のグロックを全て撃った。あとは目眩まし用手榴弾のみ。どうにかなれ、とコンクリートに投げつけた。彼はものともしない。ゴミを見るような目をしてた。腹立つ。やめろ。お気に入りだったコルトパイソンを仕方な~く撃った。(乱射)

タイヤに命中したっぽい。あーあ、雨宮は酷く焦っている。あのバイクも彼のお気に入りなのだろうか。「覚えてろよ...」とでも言っていたのだろう。


そんなことを考えながらスピードをあげる。ちょうど良かった。この先にもう一軒のガレージがある。新しくソファーを新調しよう。そんな独り言を喋ったあと、ファルノの充電切れの音がした。...充電、しなきゃな。いいよな、ファルノは死ななくて。私も、もうちょい頑張ろう、死なないように。。

「頑張れ」と囁くように、月が優しく照らす。

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