list1:世界を左右する予知書

猫は呑気で気まぐれだが淑やかで優雅。だかこの闇夜に走る者はどうだろうか。猫のニットキャップを浅く被り、黒のタートルネックで白黒のノースリーブパーカー。ボトムスは軽めの黒デニム。全身白と黒で統一されたファッションの泥棒。それは猫とは違い、気性が荒く、淑やかどころではないが、気まぐれというのが、彼女にあっているのではなかろうか。月明かりが激しい夜、教会のステンドグラスは大切な物を盗まれることも知らずに輝いている。


こういう神聖的な場所は怪盗が来るべきだか、あいにく怪盗という職業ではない。似た者同士ではあるけれど、やり方が違う。怪盗は予告状を送りつける「◯時◯分、△△△を盗みに来ます」。私はアポなしで「こんにちは~盗んでくね~さよなら~」。...悪くはないと思う。ここには「世界を左右する予知書」というものがある。まぁ個人的には予知は信じない。まぁしかし世界中が狙うって言うんだよ。この本。そうなると私も欲しくなる。実を言うと人がほしい物は、本当に偶然、余計に欲しくなってしまう。読む分にはいい。信じるか信じないかは貴方次第だし、信じたところで外れるし。


今、めちゃくちゃ長い廊下をファルノと一緒に歩いている。

...思ったより長い。長いぞ。歩数計が欲しい。ダイエットになるぞこれ。

こーーーーーーーーんな長い廊下を牧師は毎日歩いているのか、感心感心。

いいや、違う違う。それどころではない。今までドアを正面から蹴り飛ばして入ったけど、監視カメラは一個すら見当たらない。セキュリティもクソもない。しかし、真っ暗。ということは何処かに仕掛けてある可能性はデカい。時すでに遅しだな。もう見つかってるか?この廊下に入ったときから気づいてた。もう仕方ない。

「ファルノ、監視カメラはあるか、」

ファルノはすぐに紫外線フィルターを起動させた。解析は約3秒。早すぎだ。そこら辺のAIよりも優れてるよ、こいつ。

「...あるね。ハッキングする?」

「しといて。あと走るよ。」

「もうバレてる?」

「十分に。」

「はぁ、こんな廊下大嫌いよ」

「さっきは好きって言ってたでしょ」ハッとした顔をしている

「そこ、退いた方がいい。あとハンカチ用意」

スッと退いたと同時に床から煙が出てきた。

「有毒か!?」

「無害だけど、吸ったらまずい!乗れ!」

「は!?お前乗れんの!?」

「バカだなぁ、僕はAIだよ?人間よりはできるからね」

こいつのことめちゃくちゃ殴りたい。とにかく腹立つ。

両方のてのひらから車輪が二輪、両方の足裏からまた二輪。

「さっさと乗れ!」

何だか...抵抗あるな

「ほらよ!体重制限あんのか?」

「ないない!きちんと捕まってて!」

「はいはい!」

スピードは火花を散らすほどまでにあがってきた。



何分か走り続けてようやく門の前まで来た。

「____...」

何者かのうめき声が聞こえる。死者ではない。はっきり聞こえる。

ドアは相変わらず鍵がかかっていない。


開くと、がら空きだった左手に汗がにじみ出る。

____子供だ。しかも四人一緒に縛られている。

その付近には...時限爆弾...!?なんてこった、ここの孤児だろうか。

ファルノは解析を試みる。私は刃物を取り出す。一瞬だけ孤児達は怯えていたものの、助けに来たという事だと思ったのか、安堵の表情に戻った。

「どうだ、解析は」

爆弾は残り6分を指している。

「出来たには出来た。爆弾はここだけみたいだね。」

「ファルノ、お前はこいつらを持っていけ、私は爆弾を切る。」

ファルノは何本か腕が生え、四人分を4本の腕で持って廊下へ消えてった。

さぁ.........どっちの紐を切ろうか...青と赤...。こんなドラマじみたこと、人生で一度もやったことないから分からないんだな。残り四分。赤?青?本当は片方だけなのだが、両方というのもあり得るか?自爆するか?火災になるか?青か?個人的には青が好きだ。青を切る?好きかで選んじゃいけないよな.........あー!腹立ってきた。こういうの大嫌い!!!もういい両方だ!

両方を切った。そこから全力で逃げてきた。廊下の中盤ぐらいだろう。

爆発はしたものの、人名的な被害はなかった。よかった。

階段が見えた。往復しないと分からなかったな、すげぇや。ファルノは教会の聖堂にいる。

階段を上ると監視室、事務室...4つの部屋がある。またかよ、選択肢。

近い監視室からだ。教会の正門より強めに蹴っておいた。人が下敷きになったかな、まぁ、仕方ない。運命だ運命。一弾お見舞いしてあげた。

そこには知らん奴(教会の人間ではない)と牧師、シスターがいた。二人は夫婦だろうか?死を覚悟したような顔だった。牧師には銃口が向けられていた。

「こいつらがどうなってもいいの」

話すより行動。頭からボタボタと血が滴っている。

「大切な人以外の人の話は聞かない主義なんだ。お二人さん、大丈夫でしたか?子供達は無事ですよ。聖堂に避難させてます。」

「本当ですか!?ありがとうございます!命の救世主です!」

感謝をいっぱいされた。嬉しかった。聖堂につながる隠し通路があったらしい。二人はそこから出ていった。

私はさっきの階段から降りる。廊下を少し進むと、誰かがいる...。こちらに来ているようだ。銃を構えた。

「おいおい、ガキ捕まえて牧師まで脅して...大変そうだな、仕事が。」

「予言の書はいらないの?」

「命と本は代えられない。んで、どちら様よ。」

「この辺のテロリスト。巷で有名な筈なんだが...」

「おおっとごめんごめん、私は知らないね。この辺の人間じゃないから」

「あっそう。」

相手はあっさりだった。

「...銃撃戦か?」

「よく分かったね」

ハンドガンを二発撃たれた。危ない。弾は廊下の壁に当たる。

私はライフルを撃つ。二発だけ命中した。が、とある弾の中に10個だけ、麻酔が入った筒特殊部隊あいつらに差し出す為にだ。

72時間タイプの速効性。なぜこんなのを持っているのかは分からない。

今からそれを撃つ。

「んだよそれ...」

「麻酔入りの弾さ。特殊部隊に差し出すためにさ。じゃ、ゆっくりおやすみ」

「やめろ!」

銃声が響く。あまりにも大きい。音とは裏腹に、彼は優しく眠っている。

17歳ってところか。なぜそんなに若き少年が、銃を乱射せねばならぬのだ。

「いつか、こんな顔で寝れたらいいのにな。昔は良かったのに。」

その後、彼にはメモを張り付けておいた

『こいつがテロリストのリーダーです。麻酔銃、撃っておきましたよ』と、私のサインを添えた。ニュースで取り上げられるかな。ワクワクしてる。


また長い長い高速道路を走る。

「ねぇレイティス、本はよかったの?」

「別に、予言とか神とか信じないし」

「そーなの?てっきり信じてるかと」

「そう見えるか?」

「見える。今度さ、またあそこの教会行こーよー。」

「なんでだよ、さっき言ったじゃねーか、神は信じねーって」

「いやいや、子供だよ。めちゃくちゃレイティスの事、気に入ってたよ~」

「それは...嬉しいな...でもさすがに憧れてほしくはないな」

車通りが増えてきた。もうそんな時間か。

また、あの地方にはきっと来るだろう。子供にも会いに行きたいな...



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る