特殊部隊
朝なのか夜なのかもう分からない。時計は午前2時を示すものの、まったく2時の雰囲気じゃない。ガヤつきはないが、幽霊が出歩いてるみたいな、冷たい賑やかさだった。意味が分からんな。
そんな私は曲がりくねった高速道路にて、バイクを乗り回している。
「なー、ホントに始めんのか?ファルノはお留守番やっとけって。」
ファルノ。新しくこいつに付けた名前だ。管理者権限どうなってるんだこいつ。ハッキング簡単に出来た。
「もちろん。お留守番は嫌いだからイヤ。」
「責任重大だぞ。足引っ張るなよ?」
「しないしない。転ばしはしないよ」
「ふざけんな、そっちの意味じゃない」
「ウソウソ。ちゃんと手伝うよ、ポンコツじゃあるまいし」
「じゃあさっきの失敗作宣言はなんだったんだ?」
「あれはねぇ...ああいって自虐しないとやらせてくれないじゃん」
「はぁ......まあいい、ぶっ壊れても知らないからな。電池とガムテープだけだぞ」
「はいはい。あ、気になったことある」
「んだよ、」「なんでツインテールにしたの?」
「...特に?不満かよ...」
「α型って男だよ?」
「やっぱりな...ツインテールのとこ、着脱可能だぞ。」カチッと音が鳴る
「ほんとだ。でもいいや、レイティスがつけてくれたんだもん、このパーカーも可愛いし」こいつと話すの、楽しいな...。
「おっと、談笑はここまでだな。」
ファルノも何か分かった顔をしていた。
「ここからスピードを上げる。しっかり捕まっていろよ!」「うん」だんだんサイレンが聞こえてきた。スピードをもっと上げたがその抵抗も虚しかった。あいつらも徐々にスピードを上げていく。
「はいそこ止まれ」メガホン越しに聞こえてくる。
「嫌です」止まれと言われて止まるヤツっているの?いないだろ?
今、バイクを2人乗りしている特殊部隊と横並びで走る。
「おいおい、マジ特定すんの大変だったんだぜ?いい加減捕まってくれよ?」
隊長と副隊長。私が街を歩かないからって、特定に何年何ヵ月かかってんだ。
「無理。まぁ、特定お疲れさま。だけど私は逃げるよ!」
「ざっけんな!!!!!これ以上隊長をイラつかせるなー!!!」
「うるせーっ!!これからも頑張って探してな!」
もう挑発するのはやめとけとファルノにストップされた。
挑発したせいで銃口を向けられた。ファルノは呆れたような顔をした。
ため息も出ていた。申し訳ないな
「おっと?撃つ?撃っちゃう?尋問できるチャンスなのに?」
「してる暇はないんだよ。さっさとここで死んでくれればいいのに。あーあ、隊長が可哀相。彼、サイバー攻撃の特定が得意なのに、時代遅れの泥棒に付き合わされてる」
「それで罪悪感与えようとしてんの?幼稚だ幼稚。」
「あーうざい、頼むし死んでくれ」
「捕まるのと死ぬ願望はないよ!」
スピードをまたあげていく。
「うっさいなぁもう、喧嘩は他のとこでしてもらえませんかねぇ!こんな政府に捨てられたAIが言っても無意味なんですけどね。」
ルール違反だか、この道には
急いでUターンし、手を降って逆走した。あっちは煽りと捉えたのだろう。めちゃくちゃキレてた。
あの特殊部隊は正直にいって、狂ってる奴らで構成されてる。付けられた第2の名前は「泣く子も黙る特殊部隊」。唯一マトモなのが隊長。副は隊長のストーカーでもある。こんな奴らに追われるなんてまっぴらごめんだ。
ここまでうるさいのに、野次馬が寄ってこない。見ててほしかったAIの頭の中は、野次馬という言葉がないのか?
「ちっ、野次馬いねーのかよ」
「いたとしてもカメラを右手に録られるだけ。そんな願望さっさと捨てなよ」
「昔っから私は目立ちたがりやだったからな。」
「へー、意外。カメラ嫌いそうな顔してるけど。」
「人を見た目で判断すんなよ...」
また話が始まった。楽しい。
こう、何時まで話せるのか、何時まで笑い合えるのか、不安になってきた。
私も、一人は大っっっ嫌い。ファルノは寿命がない。あるのは充電。敵は錆。
酸性雨が怖い。『電池とガムテープだけだぞ』とは言ったが、段々こいつに愛着が出ちまった。耐性のあるように作りたい。デコレーションしたい。と思ってしまう。口だけは悪いものの、ファルノは私の心の内も理解してくれてると思う。拾った主がこんなヤツで、悪かったな。
まぁでも、ファルノはそこまでは考えてないだろう。
バイクに入っているCDの曲を二人で歌いながら夜の高速道路を走り抜ける。
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