峠の茶屋 だご汁や (熊本県熊本市西区河内町)

”「おい」と声を掛けたが返事がない。

軒下のきしたから奥を覗のぞくと煤すすけた障子しょうじが立て切ってある。向う側は見えない。五六足の草鞋わらじが淋さびしそうに庇ひさしから吊つるされて、屈托気くったくげにふらりふらりと揺れる。下に駄菓子だがしの箱が三つばかり並んで、そばに五厘銭と文久銭ぶんきゅうせんが散らばっている。

〈夏目漱石『草枕』、第2幕の冒頭文〉”


 この冒頭文の舞台になったとされるお茶屋が、今回ご紹介する『峠の茶屋 だご汁や』です。

 熊本市から西北西に向かうと『金峰山(標高655m)』という山が見えてきます。

 熊本市内から丘を登り、『金峰山』の登山口が見える付近に、くだんのお茶屋が見えてきます。

 お茶屋の駐車場には、馬場(馬を繋ぎ留めておく場所)も準備され、お茶屋も藁葺わらぶきの古民家然とし、丸木の椅子や囲炉裏の座卓など、こちらも古風な木製イスや一枚板テーブルなどがお客さんを迎えてくれます。


 さて、ここからはメシテロのお時間!

 このお茶屋のオススメメニューは、『だご汁焼き魚定食!』

 『だご』というのは、幅の広いうどんのようなもので、名古屋名物『きしめん』をもう少し柔らかくした太麺です。

 この麺に、鶏肉、白菜、人参、大根、カマボコと天カスを具材に、味噌と鶏の出汁で煮込んだものが『だご汁』です。

 定食ですので、ご飯にお新香、そして塩サバがついてきます…ああ、味噌汁の代わりに『だご汁』ですよ。


 因みに『だご汁』はでも美味しいのですが、『柚子こしょう』を茶サジ一杯入れると、ピリッとした辛味と鼻を抜ける柑橘の爽やかな風味が更に食欲をソソるのです。

 ご飯も、白飯は勿論、黄色い粒を散りばめた『あわご飯』、たけのこの入った『たけのこご飯』とお楽しみも膨らむというものです。


 店の並びを奥に進めば『峠の茶屋資料館』という、夏目漱石ゆかりの展示施設もあります。

 クルマでさらに10分ほど走らせれば、『金峰山』登山口も見えてきます。


 そろそろ、秋の行楽シーズンもやって来ます。

 お時間が有れば是非どうぞ!

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