泉力の湯 (熊本県阿蘇郡西原村)

 今回は、閉店してしまったお店のお話です。

 阿蘇くまもと空港から俵山(外輪山)トンネルへ向かう途中、小高い丘の上に建っていた温泉施設、それが『泉力の湯』です。

 温泉というよりも銭湯に近い気もするのですが…。


 屋内もさる事ながら、この温泉に来たからには、ぜひ露天風呂を堪能したいものです。

 日替わりで男湯と女湯が切り替わるのですが、どちらの露天風呂からも見えるのは、俵山(外輪山)がもたらす四季折々の風情です。


 春になれば、早春の風が沈丁花や菜の花の甘い香りを運んでくれる。

 夏になれば、盛夏の熱風が暑さと供に、蝉時雨という賑やかな歌声を届けてくれる。

 秋になれば、涼しくなった風に誘われ歌を奏で始める秋の虫達。

 冬になれば、湯けむりに誘われて雪も降り始める。


 標高500m の段丘に存在する温泉は、下界の高温に苛まれることは少なく、外輪山という箱庭に広がる四季。

 眼前に広がる風景を堪能するのも一興。

 アツアツの温泉と涼し気な季節の風に身を委ね、物思いに耽るという贅沢を味わう事も、また一興。


 熊本震災の発生する数年前に閉店してしまったのが残念でなりません。

 熊本という土地は『火の国』と言われるだけに、温泉・銭湯の類は、そこら中に沢山ありましたが、震災は勿論、近年の流行病の影響で共同浴場の利用が|嫌厭(けんえん)された結果、多くの温泉が店仕舞いしたのです。


 流行り病は、あいも変わらず収束する気配はありませんが、温泉・銭湯の人気は少なからず戻ってきているように思います。

 ああ、のんびりと湯船で半身浴を楽しみながら、移ろいゆく季節を存分に楽しみたいものですね。

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