第57話 セラフ迎撃
「師匠ーーーっ!!」
マーティンがレジナルドの壮絶な最期を目にして叫ぶ。
「なんだよ、あの動きは!?」
セラフの非常識な動きは火惟にも見えていた。
「奴らの特殊能力です! あの赤い光を纏っている間、彼らは慣性を無視して動ける。効果は短いですが、あの状態の彼らに仕掛けるのは危険です!」
希枝がいつになく大きな声で捲し立てた。
彼女の言葉通り、レジナルドを倒したセラフからは、すでに赤い燐光は消えている。
マーティンは怒りの声をあげながら、そこに向かって斬り込んでいった。
「くそっ、こっちは頼む!」
仲間に向かって叫ぶと、火惟も加勢すべくそちらに向かう。
一方、後から現れた二体は、しばらくの間上空を旋回していた。まるでなにかを探しているかのように。
華実はそれを茫然と見上げていた。
神獣、そしてセラフ。
セレナイトが何らかのトラブルによって神隠しを始めたことは華実も知っていたが、その原因について把握したのは真夏と千里の話を聞いたからだ。
(こんなものが現れなければ、すべては……)
怒りと呼ぶにはやるせなさが先に立ったが、少なくとも恨めしくはあった。
すると、まるでその気持ちに反応したかのように、二体のセラフが華実に頭を向ける。
「え?」
唐突に自分めがけて急降下を始めたセラフを見て華実は慌てたが、様子を窺っていた咲梨はいち早く反応した。
「地球防衛ビーム!」
呪文というにはあんまりな台詞を叫びつつ、手にした杖から金色のエネルギー波を二体の敵に向けて放つ。
セラフは素早く反応して軌道を変えるが、咲梨の魔法はそれを逃がさなかった。セラフ以上の速さで複雑に軌道を変えると追いすがって爆音を轟かせる。
きりもみを起こして地面に激突する二体のセラフ。
だが、大きなダメージはないらしく、瞬時に身を起こすと、一体がそのまま低空を滑空して、やはり華実めがけて襲いかかってきた。
千里はその進路上に割り込むと、真っ正面から拳を叩きつける。
金属が砕けるかのような音を立ててセラフが吹き飛ばされた。
凄まじいばかりの一撃で頭部が完全に胴体にめり込んでいる。
それを見据えて金色の鎌を振り上げると、千里は一瞬で間合いを詰めてセラフの体を両断した。
残る一方は赤い燐光を発しながら華実を狙うが、そちらの行く手には真夏が立ちはだかる。
彼女は静かに敵を見据えながら抜刀しつつ踏み込むと、そのまま身も蓋もなくセラフを粉微塵に斬り裂いてしまった。
たとえ慣性を無視して動けたとしても、相手の動きに反応できなければ意味がない。それゆえの当然の帰結だった。
残されたセラフにはマーティンが猛攻を仕掛けているが、敵は手にした槍で彼の斬撃を巧みに受け止めている。
だが、その間に側面に回り込んだ火惟が
隙を突いて繰り出されたマーティンの斬撃がセラフの左腕を切り飛ばす。
セラフは逃れようと上昇するが、その翼を北斗が金色の銃で撃ち抜いた。
バランスを崩してセラフが頭から落ちてくる。それを見て瞬く間に間合いを詰めた希枝は回転するようにして
爆発にも似た衝撃音を響かせながら、吹っ飛んでいくセラフ。
その先にマーティンが待ち構えていた。
「成敗!」
聖剣ブライトスターが光の軌跡を描いてセラフの身体を斬り裂いた。
大地に落ちた骸が光の粒子になってかき消える。
戦いはこれで終わりだったが、ゲートは未だ開いたままで閉じる様子がない。
「やってみるか」
溢れ出る虹の光彩を見つめてつぶやくと、咲梨は手にした杖をクルクルと回してからゲートに向けてかざした。
「
気合いを込めて叫ぶと、魔法の力を振り絞ってゲートに干渉する。
効果はすぐに現れた。ゆっくりとが虹の光彩が薄れるにつれて、空間に空いた穴も小さくなっていく。
(あそこに跳び込めば、向こうに戻れるのかしら?)
華実はチラリと考えたが、実行には移さない。
準備もなしに乗り込むなど自殺行為だ。だからこそ、咲梨はひとまず、それを閉じようとしているのだ。
さすがというべきだろう。咲梨の魔力は絶大でゲートの光はそのまま小さな染みになって、最後には完全にかき消えた。
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