第6話 「……抱きしめて。……おねがい」

※ 場面転換 夕方になって、ひまりが帰宅

※ ひまりは泣き顔になっている


//SE ひまりが帰ってきた物音


「……ただいまぁ……う、ぐすっ。うぅー」//元気がなくて泣いているような感じ


//SE ひまりが近づいて来る力ない足音


(ひまりは出先で着替えて大人っぽい服装になっている)


//SE ポテッとひまりが主人公の胸に寄りかかる音


「おにいちゃん……だきしめて」//力なく言う感じ。胸元から至近距離で


「……どうしたって、……あのね」//元気がないように


「おにいちゃんって、大人っぽい服装の方が好みなのかなって思って……今日友達の彼氏さんにこの服選んでもらったの、それでね」


「おにいちゃんをびっくりさせたくて、ぅっ……更衣室で着替えて帰って来たんだけどね……」


「帰りの電車の中で……痴漢に、ぐずっ、遭っちゃって」//すすり泣きながら


「怖くて声も出なかったのに、後ろから、『男に触られたくてこんな服装してるんだろう』って」



「……違うのに。おにいちゃんに見せたくて買ったのに。ただおにいちゃんをびっくりさせたくて着てただけなのに。おにいちゃんにしか、触れられたくないのに」



「……電車降りてからも、体中に変な人に触られた感触が残ってて、気持ち悪い」


「だからおにいちゃん……抱きしめて。おにいちゃんの感触で、上書きして。……おねがい」//力なく懇願するように


「……そんな困った顔しないでよ。子供の頃は抱きしめてくれたじゃん。ひまり可愛いって、褒めてくれたじゃん」


「子供の頃は、大きくなったらおにいちゃんのお嫁さんになるんだって、楽しみにしてたのに」


「本当に大きくなっても……歳の差は埋まらなくて。ずっと子供っぽいって言われるの、……悲しいよ……」


//SE バサッと主人公がひまりを抱きしめる音


「っ!?」//急に抱きしめられて漏れ出た声


「……ずるい。急に抱きしめるとか、ずるい」//抱きしめられながらくぐもった声で


「……じぶんから、……おねがいしたのに……ドキドキしてきちゃった」


「……すき。……おにいちゃん、だいすき」


//SE 抱きしめていたのを解く音


「ま、まって、もうおしまい?」


「えーやだやだ、もっと。もっとおおおおおお」//甘えるように


//SE バサッとひまりが抱き着く音


「……してくれないなら、ひまりが抱き着くもん」


「ぎゅううううううううううう!!」


//SE ドキドキとしている心臓の音


「…………いいじゃん。こんな時くらい、抱き着かれててよ」


「……すっごくね、怖かったんだ。でも……こうしてたら安心してきた」


//SE ポンポンと頭を撫でる音


「……うう。だから……急に頭ポンポンは、……ずるい」


「……でも、せっかくだから……撫でて、欲しい、な」


//SE 主人公が頭を撫でる音


「へへー。ホントに撫でてくれた。……嬉しいな」


「もっと、もっと……撫でて?」


//SE 主人公が頭を撫でる音


「嬉しい。……キスも、……して欲しいな」//上目遣い


//SE パチ―ンと軽くおでこを弾く音


「いったぁああい。もう、せっかく幸せに浸ってたのに。おでこ弾かないでよぉ。珍しく抱きしめてくれたから、今ならキスもしてくれるかなって思ったのにー」


「でも、元気出た!! ね、見て? この服装!! 大人っぽいでしょ!? どうかな。おにいちゃんは、こういう感じの方が、好き?」//照れながら


「えー。いつものひまりらしい方が好きとか、模範解答過ぎる」


「でも、気付いてたんだからね? さっき、慰めてくれながらもしっかりひまりの胸元見てたでしょ」


「へへー。いいよ、おにいちゃんなら」


「なーんてっ。冷静になったらちょっと恥ずかしくなってきた。攻めすぎたかな、この服装。……やっぱり、着替えてくるね」//照れながら


「あ、着替えたらすぐハンバーグ作るから!! 待ってて!!」


//SE パタパタとひまりが部屋に向かって走って行く音


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