第20話
10月31日。午前10時32分。
俺と真珠と桃愛は亜砂花さんに呼ばれて、事件現場に居た。
被害者は赤木勇。真珠が解説者として関わった大会の優勝者。昨日の事件と同様、意識がない。意識誘拐事件。魔王ボルボが関与していると思って間違いない。
「……また優勝者か」
「それも私が関わった大会の優勝者」
「……無作為で優勝者を狙っているのか?」
「……もしかして、いや、違うかな」
真珠は何かを気づいたようだ。何、気づいたんだ。
「言ってみろよ」
「確証が持てないから言えない」
「言えって」
言わないと意味がないだろう。確証がなくても、可能性は生まれてくるだろう。
「でも」
「言ってみて。真珠ちゃん」
亜砂花さんは真珠に言った。
「……はい。分かりました。私が思うに、遊喜と被害者の違いは行われた大会の場所と年齢対象だと想います」
「場所と年齢対象?」
「はい。遊喜はアンダー・シティーの大会で優勝。被害者達はノーマル・シティーの大会で優勝したんです。アンダー・シティー及びヘヴン・シティーの大会は例外を除き、18歳以上じゃないと参加できない。でも、ノーマル・シティーのゲームは誰でも参加できる。だから、ノーマル・シティーの優勝者にだけに招待状を送った」
「どう言う事?」
「ノワール・ネージュ・イリュジオンが全年齢対象の作品だからです。どの世代でも参加できる大会の優勝者じゃないといけなかった」
たしかに。アンダー・シティーは例外を除いて、18歳未満は入ることを許されない。
「……そう言う事ね。可能性はあるわね」
「はい」
「ありがとう。真珠ちゃん」
「いえ、そんな。可能性の話ですから」
真珠は謙遜する。なんで、こう言う時だけ素直にならないんだろう。自身がない分野なのか。
「素直に受け取れよ。真珠」
「……うん」
「あとは確証を得る為に大会で優勝するだけだな」
「簡単に言うね」
「簡単とは思ってねぇよ。でも、優勝しないと、本当に招待されるかも分からないしな」
「……まぁ、それはそうだね」
「だろ。あまり大会に出たくはないけど仕方ねぇな」
ゲームの大会は勝つ事が一番大事。楽しもうとすると、真面目にやれとかふざけるなとか色々と反感を喰らうから好きじゃない。でも、事件の為だ。やるしかない。
「出るの?」
「仕方ないだろう。事件解決の為だから」
「……そっか。その大会出たいな」
真珠はボソッと呟いた。俺にはたしかにそう聞こえた。
「どうした?」
「何でもない。でも、私は私なりに頑張ろうと思って」
「そっか」
私なりに頑張ろうと言うのはどう意味だ。何をしようとしているんだろう。まぁ、深く聞くと機嫌が悪くなるだろうから聞かないが。
「遊喜に負けたくないしね」
「いや、ずっと負けてるじゃねぇか」
「うるさい。絶対に次は勝つから」
「おう。楽しみにしてる」
「偉そうに」
「偉いからな」
俺と真珠は睨み合う。なんで、こんなにすぐに喧嘩になるんだろう。ただ、一つだけ分かる事がある。真珠に対しては怒りの沸点が低い。自分でもなぜだが分からないが。
「まぁまぁ、二人とも」
亜砂花さんが仲裁に入って来る。
「いいですな。いいですな。創作が捗りますなぁ」
桃愛は変態漫画家モードに入ってしまっている。
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