『物の怪おしごと相談所!』のなにより良い点は、特性と個性を物の怪に当てはめている点です。(もし、登場人物が全員人間で、内容が真面目でリアルよりだったら、しんどくなって最後まで読めなかったから、この設定はとても良かったです)
祓い屋シギノさんの「みんなに迷惑かけるからこの世からいなくなれ」という考え方は正しいだけに胸が痛みます。萌音ちゃん、君嶋くん止めてくれてありがとうございます。
特性を活かし、その物の怪にピッタリなお仕事を探してくれる萌音ちゃんと君嶋くんがこの物語にマッチしています。
相手の気持ちに寄り添って一緒にお仕事を考えてくれる萌音ちゃん。たとえ意見が自分と違っても簡単に突き放さないで、その優しさを持ち続けてください。救われる人は必ずいます。
そして君嶋くん! あなたは冷静で客観的な視野を持ち、しっかり指摘してくれます。否定ではなく指摘をしてくれるので信頼できます。不用意に肩入れしないので萌音ちゃんとのバランスが取れています。
また、物の怪もキャラクター性もよく練られていると思いました。
好きに一直線で周りが見えなくなる雪乃さん。
迷惑をかけてしまうから自分に自信のない彌影さん。
自分に向けられた感情にうとい桂良さん。
わかる……! とくに桂良さん! 自分の「好き」と相手の「好き」って別ものだから衝突したり不破が生じちゃうのです。
雪乃さんの「個性を受け入れられない私が悪い」というセリフが印象に残りました。
(これは現実でもありそうです。他の人はどう折り合いをつけるのでしょう?)
「個性的な子」を「嫌な子」として書いていないので、読んでいるこっちはストレスを感じませんでした。
『物の怪おしごと相談所!』は意地悪な子が一人も出てこないので、読みやすかったです。
個性と向き合い、自分らしさを見つめなおす優しい物語なので、素晴らしい個性を持つ「みんな」に会いにいってみてください。